132_既視感
(……なんて一撃だ。メイテツの剣で受けていなければ、間違いなく即死だった)
ダンテは歯を食いしばり、痛みに耐えながら立ち上がった。マナを纏わせることで衝撃を緩和し、致命傷だけは免れた。
だが、これまでの連戦で蓄積したダメージは消えない。身体は重く、呼吸のたびに肺が痛む。
いつものように全力は出せない。
残された体力を刻むように使い、最小の動きで最大の結果を出さなければならなかった。
倒れ伏すルーシェとテラの姿が脳裏をよぎる。
幸い、二人の体内にはまだマナの反応があった。意識を失っているだけ。だが、それも長くはもたない。
(急がなければ……)
ダンテは視線を上げ、禍々しいマゴを噴き上げる存在へと向ける。
黒影。
目が合った瞬間、怪物は腹の底から搾り出すような咆哮を放った。
(来る……!)
風を裂き、黒影が突進してくる。
地面を蹴った衝撃が遅れて爆ぜる。
ダンテは反射的に風の力を使い、身体を上空へと上昇した。
黒影は一瞬、標的を見失い、動きを止める。
その刹那を逃さない。
ダンテは風の力を使って、周囲の岩を引き剥がす。岩塊が黒影の身体に絡みつくように圧し掛かった。
(……狙い通り。この隙に、ルーシェたちのところへ)
《槍の力》
左腕のメイテツが変形し、鋭い槍へと姿を変える。ダンテは柄を強く握り締め、投擲の体勢に入った。
その瞬間。
ドォォォンッ!!
耳をつんざく轟音とともに、岩石が内側から爆ぜた。巻き上がる砂煙の中から、黒影の顔が異様に伸び上がり、凄まじい雄叫びを上げる。
砂塵が吹き飛び、視界が開ける。
無数の目玉が一斉に動き、上空のダンテを捉えた。
次の瞬間、黒影は跳んでいた。ありえない距離を、一息で詰める。
(もう……ここまで!?)
黒影は空中で体勢を整え、ダンテへと手のひらを向けた。
(……この構え)
嫌な既視感が、背筋を駆け上がる。
ダンテは、かつて受けた“あの攻撃”を思い出していた。
考えるより先に、身体が動く。風の力を使用し、視界の外へと退避する。
直後。
黒影の手のひらから、眼前のものあらゆるものを吹き飛ばすほどの勢いで衝撃波が解き放たれた。大気が歪み、轟音が炸裂する。
ダンテは遠くから、それを見届けて息を呑んだ。
(……やっぱりだ。この化け物、カカと同じ技を使える)
奥歯を強く噛みしめた、その瞬間。
黒影は、まるで感情を理解しているかのようにニヤリと笑ってみせた。そして、ダンテの方へ視線を向けるのだった。




