129_復活
「届けぇええええええ!!!!」
叫びと同時に、ダンテは必死にメイテツへと手を伸ばした。拒むように、腕を駆け上がる空気が逆流し、顔面へ叩きつけられる。
それでもダンテは怯まない。奥歯がきしむほど食いしばり、腕を伸ばし続ける。視界が揺れ、身体が軋むように痛んでも、ただひたすらに。
そしてついに、指先が冷たい金属に触れた。
「メイテツ……!来たぞ……!目を覚ませ、メイテツ!!」
落下の風に声を奪われそうになりながら、ダンテは彼女の名を叫び続けた。
「……」
反応はない。
メイテツは、まるで命の抜けた鉄塊のように微動だにしなかった。
「メイテツ……嘘だろ……。やっと……やっと君のところに来たんだ。これ以上……君まで失ったら……」
落下する勢いに身体を揺らされながら、ダンテはメイテツを胸へ抱き寄せた。
胸の奥から抑えきれないものがこみ上げる。
彼女はただ力を与えてくれる存在ではない。
妻を失い、娘を失い、心が空白になった時、最も同じ時間を歩み、沈黙の隣にいてくれた存在。
彼女は、ダンテの“支え”そのものだった。
気づけば、視界が滲んでいた。ダンテの頬を涙が伝う。人前で弱さを見せることを極端に避けてきた彼が、堰を切ったように涙を流していた。
ぽたり――。
孤独と恐怖の色を帯びた涙が、メイテツの無機質な胴体に落ち、細い光の筋を作る。
その瞬間だった。
メイテツの身体が、かすかに震えた。
「ダンテ……泣かないで。私は……生きてる。助けてくれて……ありがとう……」
やわらかい声が耳に触れた刹那、ダンテは弾かれたように顔をさっと上げた。
「メイテツ!!!」
メイテツは静かに微笑んでいた。そのいつもと変わらぬ優しい笑みに、ダンテは胸の底から歓喜の叫びを漏らした。
「やっぱり……私がいないとダメね、ダンテは」
「会いたかった……!無事でよかった。もう二度と……会えないかと思った……!」
「あなたは成し遂げたのよ。自分の力で。離れていても、あなたの頑張りはちゃんと届いていたわ……。ただ、ゆっくり話している暇はなさそうね」
ふたりは同時に視線を落とす。
地面が、猛スピードで迫っていた。
「すまない……力を貸してくれ!メイテツ!」
「もちろんよ!」
声が響いた瞬間、ダンテの左腕に彼女は宿る。
《変形の力》
落下直前、メイテツはクッション状へと形を変えた。
ダンテはその上に弾むように着地し、衝撃をやわらげながら軽やかに地面へ降り立つ。
「どうやら、彼女は無事だったようですね」
すでに着地していたワイトが、横から静かに声をかける。
ダンテは息を整え、振り返る。そして、穏やかな笑みを浮かべた。
「ああ」




