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125_常に前へ

「足がすくむか、命が惜しいか。それもよかろう。だが、真に己を突破するには、目の前の恐怖に尻込みしてはならぬ」


 コテナの低く、重みのある声が響く。目の前で蠢く化け物を見据えながらも、その口調には揺るぎない心の強さが滲む。


(コテナは、この極限の場で何を教えようとしているんだ……)


 ダンテの胸の奥で、幼い頃の絶望と誓いが思い起こされる。両親を守れなかったあの日の惨めな自分を、もう二度と見たくない。その思いが、全身を駆け巡った。


 真剣な眼差しを浮かべ、深く息を吸う。震えを押し殺すと、ダンテは剣を構えた。顔が変わった。恐れではなく、決意が宿っている。


「俺も戦う!もう現実から逃げない!」


 力強い叫びが轟く。彼の叫びを聞いたコテナの頬に、わずかな笑みが浮かぶ。


「ならば共に行こう。奴は変幻自在だ。核を狙え」


「核……それはどこにあるんだ!?」


「……油断するな。気を抜けば死ぬぞ」


 言葉は短く鋭い。コテナと二人、咄嗟にしゃがみ込むと、真上をナイフのように尖った黒い手がスッと通り過ぎた。空気が引き裂かれる音が耳を撃つ。


「危ない、少しでも遅ければ、頭を貫かれていた……」


 汗が背中を伝う。ダンテの心臓が早鐘のように鳴っていた。


「すぐに冷静さを失うな。私がいなければ、お前は死んでいたぞ。己の身は己で守れ」


 コテナの言葉が背中を押す。ダンテは顔を上げ、気持ちをすぐに切り替える。


「わかりました」


「奴の核は常に動く。最も邪悪な力を感じる場所を打つんだ」


「だけど、どうやって感じれば……?」


「不安と恐怖を捨てろ。常に前へ進め。感覚を研ぎ澄ませ。そうすれば、自ずと在り処が分かる」


「……何言ってるのか全然わかりません!」


 困惑するダンテにコテナが軽く舌を鳴らす。


「口で聞くよりも実践だ。長々と言っている暇はない。掴め本質を、この戦いの中で!」


 二人は息を合わせ、伸びた黒い手をかわしつつ、その先端を斬り落とす。切り裂かれ、力を失った化け物の手はドサッと地面に落ちる。


「集中力が保てている。行くぞ、このまま奴の元まで駆ける!」


 コテナの声に、ダンテは一言答える。


「はい!」


 地を蹴り、化け物の方へ接近する。化け物は胴体から無数の手足を生やし、二人を絡め取ろうと暴れ狂う。


(少しでも躊躇すれば終わりだ。常に前へ!)


 ダンテは、迷いを捨て、敵の攻撃に臆せず進んでいく。それと同時に身体の感覚を研ぎ澄ます。今まで感じたこともない感覚へと至る。生命の流れ、マナの蒼い脈動を敵の化け物から感じられた。


(ここだ……! 感じる、力の流れを!)


 ダンテは化け物の頭部と思われる部分に目をやる。


「やつの後頭部付近に、今は核がある!」

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