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123/142

123_師との出会い

(ここが、コテナのいる場所か)


 足元に伝わる地面の湿り気、耳を満たす轟音。


 滝の音が次第に大きくなっていく。ダンテは呼吸を整えながら、早足で水音のする方へと進んだ。


(やはり滝だ。あそこで誰かが修行をしている……)


 滝下の水しぶきを受けながら、静かに座する男がいた。肩や背を打つ水流に耐え、目を閉じて己と向き合う姿は、遠目にもただ者ではない気配を放っている。ダンテの胸に迫るのは、言葉にならない圧倒的な存在感。


 (彼がコテナか……)


 ダンテは直感した。


 彼が視線を向けたと同時、男は瞼を開け、低くひと言放つ。


「何者だ。ここは、お前のような者が来る場所ではない。去れ」


 刃のように冷たい声が脳内を切り裂く。ダンテは思わず後ずさる。全身を締め付ける重圧に、足元がふわりと揺れた。


(なんて威圧だ……圧倒的すぎる)


 だが、引き下がるわけにはいかない。胸の奥で燻る決意が、彼を前へと押す。誰かを守れる剣士になる。その誓いが、体を震わせる。ダンテは深く息を吸い、強く視線を定めて言った。


「俺は、ダンテと言います。あなたはコテナさんですか?どうか、剣術を教えてください!」


 言葉が震える。視線を下に落とした途端、冷たい鉄の感触が喉元に触れた。刃先が、確かにそこにあった。


「お前のような者に剣を教えるつもりはない。さっさと帰れ」


 コテナの言葉に続き、刃がじりと押し付けられる。わずかな距離、だがそこにあるのは命の境界。ダンテの心臓が喉に飛び出すように跳ね上がった。


(さっきまで滝の下にいたはずなのに……一瞬で間合いを詰められた)


 背筋が凍りつく。手は震え、膝が今にも抜けそうだ。恐怖が牙を剥く。だが、恐怖に屈していた幼き日の自分を思い出すと、怒りが湧き上がる。


(このままでは駄目だ。変わらなければ……誰も守れないままだ)


 拳を握りしめ、ダンテの声が震えながらも強く響いた。


「帰りません!あなたに剣術を教わるまでは、ここを離れません!」


 その叫びを聞くと、コテナはゆっくりと、刀を鞘へと納めた。ダンテの胸に、驚きと安堵が一瞬交差する。


(まさか……殺さないのか)


 だが、コテナの表情は依然として険しく、目は冷徹だ。ダンテは一瞬、彼はコテナの拳が握られるのを目にする。次の瞬間、鋭い痛みが胸を貫き、世界が暗転した。


 そして、声音も、空気も、光も消え、重い静寂だけが残るのだった。

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