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106_ 第2階層へ

 ルーシェたちは光の柱の中を抜け、まばゆい光に包まれながらも、一歩、また一歩と足を進めていった。


 そして——足元に固い感触が戻ると同時に、世界が変わった。


「ここが……第2階層……」


 ルーシェは思わず息を呑み、目の前に広がる光景を見つめた。視界いっぱいに広がるのは、無機質な石畳が続く薄暗い空間。第1階層の穏やかな草原とはまるで別世界だった。冷たい空気が肌を撫で、石壁に灯る薄明かりが影を揺らしている。


「雰囲気が……まるで違う」


 彼女の隣に立つワイトも、険しい表情で前方を睨みつけていた。


「第1階層とは異なる……何かが、潜んでいます。それに……前方から、異様な力を感じる」


 まっすぐ続く石畳の先は、闇に包まれて何も見えない。しかしその先から、じわり、じわりと滲み出るような、禍々しい気配が空気を震わせていた。


「この気配……間違いない。お姉ちゃんの命を奪った、あの魔族の……!」


 肌を刺すような邪悪な気配に、ルーシェの胸の奥が焼けるように痛んだ。王都ペンタゴンでの惨劇。あの魔族から、自分を庇って命を落とした姉・タナの姿が、脳裏に鮮明によみがえる。


 ルーシェは、唇を噛みしめ、拳を強く握った。


 (タナ、必ずあなたの仇を討ってみせます)


 ルーシェの隣に立つワイトもまた、瞳に静かな闘志が宿していた。


 だが、その時だった。


 突如として、前方から漂うよどんだ空気の中に紛れ、迫りくる何者かの気配がワイトの感覚に引っかかった。


「……この気配、強い気配の陰に……誰か、いや、“何か”が潜んでいる」


 ワイトはすぐさま振り返り、叫んだ。


「皆さん、気を引き締めてください! すぐ近くに、敵がいます!」


 その警告とほぼ同時に。


「うわぁぁぁぁぁっ!!!足に何か絡みついたっ!! やべぇ、引きずられる!!!」


「くそっ、持ち上げられる!? 誰か、助け……!」


 悲鳴のような叫び声が次々に上がる。ルーシェたちの背後で、仲間の騎士たちが宙吊りにされ、もがいていた。足元から伸びた何かが、彼らの身体を絡め取っていたのだ。


「こ、これは……植物!?」


 ルーシェが呆然と呟く。その視線の先で、蠢く影がはっきりと形を取った。


 それは、まるでいばらのような蔓に包まれた巨大な花。その中央が、ゆっくりとぱかっと開き始めた。


 そして——中から現れたのは、人の顔を模したような、歪んだ“何か”。


「肉に……肉肉肉に……肉肉肉肉肉肉肉肉にいいい!!!!人間という肉塊!!!我が栄養!!!美味にして至高!!!我が身体の一部となりたまええええええ!!!」


 狂ったような笑いと絶叫が石畳の空間に響き渡る。空気が凍り、鳥肌が立つ。


 ルーシェは思わず後ずさり、顔をひきつらせた。


「な、何……こいつ……気持ち悪い……」


 その隣で、すでに刀を抜き戦闘態勢に入っていたワイトが、冷静に状況を見極めながら呟く。


「話が通じる相手では、なさそうですね」


 その刹那、花の怪物が呻き声とともに再び蔓をルーシェたちに勢いよく伸ばした。

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