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103/136

103_交わる力

 黒炎を纏い、背から両翼を広げた異形のソフィの姿に、二人は凍りついた。


 ダンテとソラは、言葉を失い、息を呑む。


 なんて威圧感だ……。今まで対峙したどんな敵からもこんなに強い気迫を感じたことはない……。


 ソフィから放たれる禍々しい力に、ダンテの全身が総毛立つ。わずかな油断が即死につながる。理屈ではなく、本能が警鐘を鳴らしていた。


 その時だった。ソフィが、ゆっくりと腕を上げる。


「えっ」


 思わず声が漏れる。


 ダンテはソフィの挙動に反射的に体をのけぞらせ、攻撃を避けようとした。だが、それでも遅かった。


 ズシャッ。


 左腕に走る異様な違和感。ダンテの目が見開かれる。


「メ……メイテツ!?」


 信じられない光景がそこにあった。左腕が、ない。斬られている。痛覚より先に、視覚が現実を突きつけてきた。


「ダンテ! 私は無事よ! 攻撃の直前にあなたの体から離れて、スライム状態に戻ってたの!」


 メイテツの声が響くと同時に、液状の彼女がダンテの肩に戻り、たちまち左腕の形を成していく。


「よかった、メイテツ! 俺が攻撃を読み切れなかったせいで……すまない」


「いいのよ。あんな速さ、誰でも対応できないわ。むしろ生きてるのが奇跡よ」


「ああ」


 ダンテは息を整えつつ、再びソフィを見やる。


 ソフィの右腕は、いつの間にか異様な姿へと変貌していた。まるでムカデ。その脚の一本一本が鋭い刃のように尖り、今まさに鋸のように振り下ろされた直後だったのだ。


「私の攻撃を躱すとは……フフ、いいぞ。その方が“この姿”になった甲斐がある。楽しませてくれよ、人間ども」


 ソフィの口元が、嗜虐的に歪む。

 その笑みは、次の瞬間には命を奪うと告げていた。


「ダンテ、あれはヤバいよ……! 二人で力を合わせないと倒せそうにない!」


 テラがダンテに近づき、声をひそめる。


「……何をのんきに話している、人間ども」


 背筋を貫く寒気。いつの間にか、ソフィが至近距離まで迫っていた。ダンテもテラも、無意識に後退る。


 いつの間に……!?


 ソフィのムカデの腕が、再び唸りを上げて振り下ろされる。


「テラっ!」

「うん、分かってる!」


 互いに名を呼び合い、すかさず意思疎通を図る。


「風の力——!」


 ダンテが風の魔力を解放すると、周囲の岩石がマナを帯びて宙に浮かぶ。そして、そのうちの一つが、なぜかテラの方へ勢いよく飛んでいく。


「——反射の構え!」


 テラは岩石を斬撃で受け止める。反射の構えにより、岩石は凄まじい勢いで軌道を変え、倍加した威力を乗せてソフィへと弾き返された。


「ぐっ……!」


 音を立てて岩がソフィの顔面を撃ち抜く。ソフィの巨体が僅かに仰け反ったその隙を逃さず、ダンテとテラは一気に距離を取る。


「ダンテ……やるしかない、あの技を!」


 テラが、険しい表情で言う。


「ああ。もう、出し惜しみしてる暇はないね……!」


 ダンテは深く息を吸い込み、メイテツを剣の形へと変化させた。その刃を、テラの光の剣と重ねる。

 目を閉じ、互いのマナを交差させると——


 眩い閃光が、あたり一帯を照らし出した。



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