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01_剣と魔法

 ーー魔法。


 世の中に普及したその摩訶不思議な力は、戦時中、マナ王国から突如、誕生した。


 マナ王国は、かつて敵対関係にあったソド王国をその大いなる力を用い、圧倒した。


「なんだ、この力は……」


「人智を超えている。勝てるわけがない……」


 初めて、魔法の力を目にしたソド王国の剣士たちは、膝を地面につき両手で頭を抱えると絶望した。剣士たちの眼には、魔法によって、自分たちが生まれ育った村が凄まじい爆発とともに、一瞬に消し飛んで行く光景だった。


 曇天に黒煙が伸びるとともに、数十キロメートル離れた剣士のもとにも、激しい爆風が吹きつけた。剣士たちは、腕で顔を覆い、風の衝撃に耐える。


 マナ王国の魔法という圧倒的な力に、ソド王国の剣士たちの多くは、なすすべもなく戦意を喪失する。そんな中、一人唯一、闘志を燃やし続ける剣士がいた。その名はダンテ。彼は、絶望する剣士たちの前に立ち、剣をギュッと握りしめると叫んだ。


「このまま、やられぱなしで終わるのか!大切な村もそこに住んでいた人々の命も、何もかも奪われて。俺は、納得できない!絶対に、このままなにもできないまま終わらせてたまるかよ!」


 そんな彼の叫びに鼓舞され、すっかり戦意を失っていた剣士たちの目に再び輝きが灯り始める。


「そうだ、このまま、奪われたままでいいはずがない」


「ああ、村をめちゃくちゃにしたやつを許さない。例え、どれだけ強大な力を持っていたとしても」


 膝をつき絶望した剣士たちが、戦意を取り戻し一斉に立ち上がる。剣を天に掲げると、「うぉー!!!」と今の暗い現状と感情を振り払うかのように力強い叫び声を上げた。


 ザクッ。


 皆、前向きに闘志を燃やし状況が好転するかと思えたところで、残酷な音が響き、真っ赤な血がダンテの視界をピュッと横切った。


 何かが引き裂かれるされたような奇妙な音。それに、この血は一体、なんだ……。


 ダンテは、さっと横側を振り向き、状況を確認する。


「ダンテ……」


 横側に立っていた剣士は、地面から生える植物の巨大な根っこの先端に身体を貫かれていた。剣士は、まだかすかに意識があった。口から血を流しながら、虚ろな目でダンテの方を助けを求めるように見つめ手を伸ばす。


 ダンテは、その奇妙な光景に大きく目を見開き、口を開ける。


 これは敵国の【魔法】という力。


 地面から植物を生み出す摩訶不思議な力を目の当たりにし、ダンテは仲間の剣士が魔法の攻撃を受けたことを察した。


 ダンテは、せめて剣士の伸ばした手を掴もうとするが、その前に、剣士の体がぐねぐねと動き始め、不気味な花がいくつも咲き乱れる。


「きれいな花が咲きましたね。決めました。ここをお花畑にしましょう。あなたたち剣士の血を使って」


 上空から、調子の良い声が聞こえた。ダンテが曇天の空を仰ぐと、黒い装束を身にまとった魔法使いクロノが宙に浮かびながらダンテたちを見下ろしていた。


「やったのは、お前か?」


 ダンテは、ギロリと眼光を輝かせて宙に浮かぶクロノの方を睨みつけた。


 


 


 

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