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小椋夏己の創作ノート  作者: 小椋夏己
2024年  7月

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「黒のシャンタル第一部」について・その3

 こんな風に何がなんだか分からないうちに「豪華なお客様ライフ」をエンジョイすることになったトーヤですが、そこで驚くようなことがもう一つありました。


 トーヤが目を覚ました時に初めて目にしたあのオレンジの少女、その少女の名前を聞いてトーヤは愕然とします。


「お世話をさせていただきます、ミーヤと申します」


 少女が名乗ったその名前、「ミーヤ」とは、トーヤの母の妹分で、トーヤの親代わりだった女性の名前だったのです。


 トーヤが故郷を飛び出してシャンタリオにやってきた理由の一部はその名前から離れたかったから、ミーヤの死がつらくて仕方がなかったからでした。それなのに、こんな世界の果てのような場所に来て、まさかその名に出会うとは。思わずトーヤは黙り込んでしまいます。


 そんなこんなで宮のお客様としてそりゃもう天国のようなおもてなしを受けていたトーヤですが、あることから突然焦りを感じることになります。


「こんなところで呑気にお客様してる場合じゃない!」


 そしてある結論に至りました。どうしてこんなことになっているかというと、寝てる間に黙って連れてこられたから、意識のないうちに「助け手」というものにされてしまったから。それって一体何なんだ? 


 考えても分からないことばかり。だったら事情を知ってそうなあの女、目覚めた初日にちらっとだけ会った紫色のマユリアという、おそらくこの国で2番目に偉いだろう女に事情を聞くしかない。

 そう思って世話役のミーヤにマユリアかそのさらに上のシャンタルに会わせろと言うが、会わせられないと断られます。


 怒りのあまりミーヤにもうちょっとで手荒なことをしそうになりますが、結局はそうもできず、がっくりと力を落としてしまいます。ですがこのことで2人の距離は少しずつ縮まり、次第に親しい関係にとなっていくのです。


 この先、時々マユリアが、


「時が満ちた」


 という言葉を口にするのですが、この時もそうなるまで待ってやっとマユリアからお呼びがかかり、ようやく何か教えてもらえるのかと会いに行くと、そこには初めて近くで見るシャンタル、この国で一番偉い生き神様が!


 ですがこのシャンタル、なーんか様子がおかしいんですよ。とにかく人形みたいで何も反応しない。歩いたりはするので生きてるらしいと分かるのですが、全く自分の意思というものが感じられない。


「なんだこいつ、こんなのが俺になんだか妙なことを言ったからこんなことになってるのか!」


 怒りのあまりトーヤが睨みつけてもうんともすんともない。しばらくの間、そうしてシャンタルを睨んでいたトーヤですが、マユリアがまたこんなことを言い出します。


「体調がいいのならこの国を見てきたらいかがですか」


 何言ってんだこの女。なんの説明もなく観光を進められたトーヤはびっくりしてまじまじとマユリアを見て、そしてこんなことに気がつくことになります。


「マユリアってめちゃめちゃ美人じゃん! 天女かよ!」


 そう、マユリアは二千年の歴史の中で、


「一番美しい」


 と言われる存在だったのです。


 そんな美人にこの時になって初めて気がついたトーヤ。


「仕方ねえだろ、あの時はそんな余裕なかったんだから!」


 と言い訳をしていますが、このことは後々まで色んな人に、


「女を見る目がない、女のことを評価する資格がない」


 と、ぼろかすに言われることになります。

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