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小椋夏己の創作ノート  作者: 小椋夏己
2024年  7月

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ダルの家族のこと・サディ

 今回もダルの家族、順番で父親のサディにまいりましょうか。


 トーヤが運命の地であるシャンタリオにやって来た時、それはもうとんでもない到着の仕方をしています。何しろ嵐の海に放り出されて、船の瓦礫や亡くなった仲間の遺体と共に海岸に打ち上げられ、自分も同じようになる寸前でしたから。

 

「シャンタルの託宣でどうもどえらいお方がこの村にいらっしゃるらしい」


 みんなウキウキドキドキして待ってたら、これまでのカースの歴史の上でもなかったぐらいの大惨事です。

 

 そんな状態、もちろん誰に命令されなくてもとっとと片付けてしまわないと漁に出られないどころか、えげつない状態になってしまう。


「とても生きてる人間のいる気配はありません」


 そうお伝えしても女神様も頑固ですね、


「助け手はいます」


 あくまでもそう言うもので、げんなりしながら探してたら、なんと、驚いたことに瀕死の状態で生きてる人間が1人だけいた! それが主人公のトーヤなわけですが、そりゃもう見つけるまで村の皆さんはつらかったと思いますよ。


 その現場の実質責任者がサディです。村長は父親ですが、現場を引退して名誉職のようなお仕事を続けていてみんなを指示する立場、先頭に立ってまず動くのがこの人なわけです。


 実質トップですが立場的には中間管理職。大変なポジションです。ですが、他の村人からの信頼も厚く、口で言うだけじゃなく自分が率先して行動するのでみんなも付いてきてくれてます。


 豪快できっぷがよく、力も強くて村のみんなの兄貴みたいな人。お酒が好きで時に飲みすぎて「かーちゃんに叱られるー」ような時もあり、内緒でこっそり海を渡って遊びに行ったりすることもありますが、基本的には「かーちゃん大好き」で尻に敷かれてるのが幸せです。


 3人の息子には好きなことをすればいいと漁師になることを強制したりしてませんが、サディが父親と同じ漁師になったように、息子たちも「とーちゃん大好き」で同じ道を選んでいます。


 サディの弟はもっと大きい町の大きな船に乗る漁師になっていますが、それは父親の跡取りとして申し分がないサディがいたから、じゃあ自分は兄貴とは違う道で成功してやろうか、そう思った部分もあったりします。


 カースは漁師の村で大部分の男はみんな漁師になって村に残りますが、そうして時々違う道を選んで出ていく者もあります。もしもそうすると言っても誰も特に止めませんし、出ていったからと言って村八分にしたりもしません。だから村を出て行ったある人の家も、いわくつきであるにも関わらず、ずっと村人で管理してやってたりするわけですね。村人同士の結びつきが強いのは、自然を相手にみんなで力を合わせて生きてきたからかも知れません。


 父親が誰か分からず、父親とはどんなものかを知らないトーヤは、こういうサディのようなタイプの「おっちゃん」にちょっと弱かったりもします。それは第二部から登場するあるキャラと関係するんですが、その人に対しては少々反感もあり、素直になれなかったけど、そういう感情がなかったからか、サディには素直に懐いたようですね。


「まあ親父さんはいいおっさんだからな、男として認めてんだよ」


 トーヤもそう言って、3兄弟と一緒に混ぜてもらって自分も兄弟みたいな顔してますが、それを見てもがははと笑って受け入れてくれる、そういう気のいい「親父さん」です。

※2024年7月1日初回掲載

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