「Jean Was Lonely(黒のシャンタル外伝)」を書き終えて
数話になるだろうと言っていた「Jean Was Lonely(黒のシャンタル外伝)」ですが、結果全10話と思った通り予定よりやや長くなりました。まあ、そうなるかなとは思っていましたが、10話というキリのいい数字で終われたのはなんとなくうれしいです。
この物語は前回書いた通り、TMの歌を聞いていた時にふと浮かんだ女性を主人公にした物語ですが、実は「黒のシャンタル」の主人公トーヤのことを書いている物語でもあります。育て親を亡くしたトーヤが運命の地に行く前の数年間、どんな感じで生きていたかを第三者の目から見て書きたいなという思いもありました。
それと、実はこれ、もしかしたらトーヤがこう生きてきた可能性もあったかもという、進まなかったもう一つの人生の物語のつもりでもあります。どういうことかと言いますと、もしもあの時トーヤがあの船に乗らない道を選んでいたら人生を共にしていたかも知れない、そんな可能性を持った女性なんですこのジーンって。
だから、
「IF」
の物語でもあるということです。
第三部まで読んでくださった方はなんとなく意味が分かるかも知れませんが、それまでに長い長いお話がありますので、なかなかそこまで読んでとは言いにくい。なのでちょっとだけ、本当にちらっとだけ触れますが、もしかしたらトーヤはあの船に乗らず、海を渡らなかった可能性もあるんです。その時にはこの物語のラストのような人生をジーンと共に歩いていたかもね、そういうお話になります。
ジーンとトーヤの関係は娼婦とその客、しかも常連ということで結構気にいってるんですよトーヤも。本編でベルにその生まれ育ちから女性に対して恋とかそんな気持ち持ったことないだろうと突っ込まれてますが、その通り、特別な気持ちなんてこの時にはまだ誰にも持ったことがない。ジーンのことはなんとなく一緒にいて心地良い相手、そのぐらいにしか思っていません。ですが、年を取っていくと、そういう人がそばにいて欲しい人だとなっていく、関係が熟成されていくということも人間関係にはあったりします。その時にこいつだったらいいかなと考える可能性がかなり高い相手、そんな感じに思ってくれたらいいかなと思います。
ジーンはトーヤのことを好きだと思っているんですが、そんなわけでトーヤは別れる時にもさほど何も思ってません。忘れてしまうということもないでしょうが、結構シビアなもんです。ジーンだって自分のことを何人もいる客の一人だと思ってるだろう、戻ってあの店にいたらまた顔出すかぐらいの気持ちです。
もしもトーヤがその道を選んでいたら、今の「黒のシャンタル」もなかったはずで、もしかしたら「もう一人の助け手」が彼の地で活躍してたかも知れません。
トーヤにとってはどちらの道を選んだほうが幸せだったか今の段階ではまだ分かりませんが、そういうことで本編の方も最後まで見守ってくださるとうれしいと思います。
こういう場合、よくベルやトーヤがここにしゃしゃり出て漫才をやってたりするんですが、これはトーヤの知らない世界のお話なのでわざわざ知らせて呼ぶようなことはしません。かわいそうですし、誰も幸せにはならないと思うので。と、珍しくちょっと真面目に終わってみますか。