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小椋夏己の創作ノート  作者: 小椋夏己
2024年 10月
124/132

浪の下にも都の候ぞ

 SNSを見て、


「ふふっ」


 と笑ってしまうものがありました。


 ある場所の公共トイレの注意書きに、


「1階にもトイレがございます。」


 と書いてあるんですが、その場所が、


「壇ノ浦」


 だということで、


「平時子が言っているように見える」


 との一文が付いていて、思わず笑ってしまったんです。


 それをSちゃんに見せたところ、やっぱりうけてくれて、


「レスが面白くてふふってなってる(笑)」


 とのことで、


「そうそう!」


 と、思いました。


 ご存知ない方のために一応説明を。


 これは「平家物語」の有名な一文で、源氏に追い詰められた平家がとうとう最期の時を迎え、清盛の妻であった平時子、「二位尼」が、孫である安徳天皇を抱えて入水する時に、不安がる幼い孫に言った言葉、


「浪の下にも都の候ぞ」


 つまり、


「波の下にも都がございますよ」


 という言葉です。


 これから入水、つまり死んでしまうわけですから、実際に竜宮城のような都へ行くわけじゃないです、徳子もそれは分かってる。その上で、おばあちゃんがそう言って8歳の孫を安心させているんです。なんともつらい言葉です。


 他の場所にあったなら単なる案内文ですが、あった場所が場所だけにと、そう思いついたその感性がすばらしいのと同時に、下にずっと連なるツリーになったレスに、もちろん平家物語を知っている人が次々にコメントを載せているのがまた素晴らしいと思いました。


「教養と文化」


 これがないとできない言葉遊びです。教養も文化も共用することで、こういうことができるんですね。


 創作する上で、やはり文化的背景って重要だと思います。知らないと書いても「なんのこっちゃ?」ですよね。さっきのトイレの案内文だって、平家物語を知らない人が見たら「何がおかしいの」ときょとんとするということになります。


 だから元からある何かを下敷きにした作品を書くのは、その共用部分、文化部分の説明を省けるのでやり易いでしょう。ただ、どこからどの程度までを知ってもらえていることを分からないと、書いても意味不明となりますから、少なくとも「中学校の歴史で習った」ぐらいのことまでを覚えている人が多数、なことが前提に成り立つかも。


「人間五十年」


 これを聞いたら、


「あ、信長」


 と、思ってくれる人が大多数だと思いますが、これは社会の授業で習ったり、歴史が好きでそういう本を読んでる人以外にも、今はゲームやら創作やらで信長をよく取り上げられているから、どんな形でも「人間五十年=信長」と思ってくれる人がいるから使いやすいのだと思います。


 しかし、最近では歴史もちょっと変わってきて、


「いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府」


 が、


「いいはこ(1185)作ろう鎌倉幕府」


 になったりしてるらしいので、元からの共用や知識というものも変わることがあると、こちらの常識も日々アップデートしていかないといけませんね。


 同時に、オリジナルの神話や歴史を作って作品を書いている人は、その説明を理解してもらうの大事かも知れません。私もそうなんですが、「黒のシャンタル」の背景とかはかなりかなり特殊です。それを受け入れてくれた人だけが続けて読んで楽しんでもらえるでしょう。

 それを考えて、主人公トーヤが仲間に自分が経験したという形で会話して説明していくという形を取ったんですが、そのことを「分かりやすい」と言ってくださる方と、「過去の話と現在の話が混在して分かりにくい」と言う方がいらっしゃいました。


 今でもこの形が正解だったかどうかは分かりません。私としては人気キャラのベルが最初から登場してくれて、結構気にいってる形ではあるんですが、トーヤの過去の話として、その部分だけを切り取って書いていくという形にした時、どういう形でかなり特殊な神話や歴史、舞台となった国の背景なんかを書けばよかったのなと考えたりもします。

 私達が文化と教養のように、一緒に理解してもらえる形にまで持っていくのはやっぱり結構大変ですね。

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