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何でも屋のお客達  作者: ほくろマン
3/3

第三話 ジェイクと謎の窃盗団

投稿頻度が遅いと思う人もいると思うけど許して

  

 太陽が沈み、辺りが暗くなってきた頃。皆が自分の家に帰る時間。寝る者もいれば夜の営みを始める者までいるこの街で唯一、騒がしい場所があった。冒険者たちが酒を飲み、話し、殴り合いの喧嘩をし、そして皆 

ゲラゲラと笑っている。どこの誰が見てもにぎやかで楽しそうなこのカザレの広場。冒険者の唯一の癒やしであるこの場所に絶望に打ちひしがれている二人。


 「は?」


 思わず声が出た。ミィが指輪をなくしたと言うのだ。

 彼女はあまり冗談を言うタイプではない。そのことが、この状況をまだ信じれていない俺に段々と真実を伝えているようだった。


 言葉も出ずに呆然と立ち尽くしていた俺は、ある事に気づいて男が去っていった方向に走り出す。


 「ガイアスさん、どうしたんですか!?」

 「あの男だ!さっきミィとぶつかったあの男が指輪を盗んだんだ。」


 (なんでもっと早く気が付かなかったんだ!)


 悔しさと自分の不甲斐なさに唇を噛み締め、がむしゃらに走った。男はまだ遠くには行っていない。

そんなちっぽけな希望が今の俺を動かす動力源だった。


 どれくらい走り回っただろうか。いつのまにか街のはずれにある小さな酒場まで来ていた。男の姿はどこにも見当たらない。


 「どこにもいませんね...」

 「もう街を出たのかもしれないなあ。」


 俺の言葉を聞いたミィは座り込んで顔を深く沈めた。どうやら反省しているらしい。俺が慰めの言葉をかけても一向に顔を上げず、うつむいたままだった。


(さて、これからどうしたもんか)


 考えることは嫌いだが今はそうする他ない。なにせ久しぶりの依頼だし俺たちの朗報を待ち臨んでいる客がいるんだ。ここで、見つかりませんでしたと諦めるわけにはいかない。

 

 バンッと酒場のドアが開いた。俺はびっくりして体を後ろに反らす。開いたドアから男がポーンと投げ出され、そのあとに続いて酒場の女将らしき人が顔を覗かせる。

 

 「あんた!金も払わずに酒が飲めると思うなよ!!とっとと消え失せな!」

 「そんな事言わずにさあ〜、たn」


 女将は男の言い分も聞かずにドアを勢いよく閉めてしまった。


 (厄介な現場に出くわしたな...今は指輪を取り戻す事を考えなくちゃいけないのに。ここはこっそり退散しよう。)


 男に背を向けなるべく静かにその場をあとにしようとした時、


 「なあ、あんた!今の見てたよな!」

 「ナニモミテマセンケド...」

 「い〜や見てたな。ハッキリと!」


 男は俺を見るなり足にすがりついてみっともなくわめき出した。


 「家族に捨てられ、可愛い娘にも会えなくなった可哀想な俺を助けてくれよ〜。」

 「そんな事言われてもなあ。」

 

 男は半泣き状態で鼻水をすすりながら俺の足にしがみついている。

 うっとおしくて俺がどれだけ足を振っても、決して離れることはなかった。


 (こいつ、どんだけ力あんだよ!いくら振ってもびくともしねえ)


 「あんたら何でも屋の人だよなあ。何か困りごとでもあるんだろう。俺はここら辺の事にはけっこう詳しいんだ。きっとあんたらの力になる。だから助けてくれえ。」


 男はとても必死な様だった。奥さんに捨てられ、娘にも会えなくなったこの男は今、初対面の俺に対しみっともなくすがりついている。


 この出会いは運命。こいつを助ければきっといい方向に進む。そう頭に浮かんできた。まるで神様が

俺に助言したかのように。いや、そう考えることにした、の方が正しいのかもしれない。


 「わかった、わかったから。とりあえずエニシングに行くぞ。」

 「ありがてぇ!あんたの事は兄貴と呼ばせてもらうぜ。」

 「おい、ミィ!いつまでくよくよしてんだ。ほら立って、行くぞ!」


 俺はミィを無理矢理立たせ、この怪しい男と共にエニシングへと向かった。




          



             〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 


 「ふむふむなるほど、謎の男に依頼主の指輪を盗られたと。それにしてもここめっちゃ汚いっすね。」


 「それはいいから、何か知ってることがあれば教えてくれ。」


 「う〜ん・・・あ!」


 「何か知ってるのか!」


 「そういえば、自己紹介忘れてましたね。俺、ジェイクって言います。」


 俺は呆れて肩を落とした。どうもこいつはマイペースでおちゃらけた性格らしい。いわゆる”バカ”と言うやつだ。さっきも店に入ってすぐに、酒はないのかと訪ねてきた。


 「まあ、それは大事か。俺はガイアス。この店の店長をやっている。こっちは、」

 「ミレッタです。ガイアスさんの助手をやっています。」


 ミィが小さな声で答えた。彼女は未だに落ち込んでいるようだった。早くいつものペースに戻ってもらわないと正直とてもやりづらい。


 「さっきの続きなんすけど、”謎の男”だけだと情報が少なすぎてどこの誰なのかがまったく分かんないんすよ。兄貴、その男の特徴とか覚えてませんか?例えば、顔に傷があるとか。」


 「フードを被っていたからなあ、あんまり見えなかったんだ。・・・・!!。そうだ!手だ!男とぶつかった時に手になんか書いてあったんだ。確か、2匹の蛇が絡み合っている絵だった気がする。」


 その時、ジェイクの顔が間抜けな顔から何かを確信したような顔へと変わっていった。


 「もしそれが本当だとしたら、兄貴達は厄介な連中と関わっちまいましたね。

その手の絵は、最近ここら辺で盗みを働く盗賊集団、”白蛇”のメンバーであるという証みたいなもんなんですよ。つまり、今指輪は白蛇のアジトにあるという事ですね。」


 「その白蛇とかいう盗賊集団のアジトはどこにあるんですか。」


 突然ミィがジェイクに質問を投げかけた。彼女はうつむいたままだったが、落ち込んでいる様子はなく、むしろいつもより冷静な口調だった。


 「え〜と、確かこのカザレからそう遠くない山の頂上付近の洞窟だった気がするなあ。」


 その言葉を聞いた途端、ミィは勢いよく立ち上がり荷物を持ってドアへと歩いていった。


 「ちょっと待て、どこに行こうとしてんだ!もしかして一人でアジトに乗り込もうとか考えてねぇよな。」

 「やだなあ、そんなわけないじゃないですか。」


 彼女はゆっくりとこちらを振り返る。少し間の抜けた声で答えた彼女だったが、目は少しも笑っておらず口はむりやり上にあげている様だった。俺は久しぶりにゾッとした。


 ミィは俺に、早く行かせろ、と圧をかけてきた。だが、俺もここで食い下がるわけにはいかない。盗賊集団のアジトに女一人で行かせるわけにはいかないのだ。もし捕まったりでもしたら、そいつらに何をされるかなど容易に想像できる。


 「わかった、俺たちも一緒に行く。ジェイク、道案内を頼むぞ。」

 「へ、へい。わか、りやしたあ」


 ジェイクもミィの気迫にびびったのか素直に返事をし、荷物をまとめ始めた。




  


 夜の山はとても寒く薄暗くて、何度も転びそうになった。岩肌はゴツゴツして歩きにくく、辺りには草や木も生えておらず生き物の気配はいっさいない。


 こんな過酷な場所に本当に人間のアジトがあるのだろうか。いや、このような場所だからこそ奴らは人に見つからずに過ごせているのだろう。歩いてる間、いつもなら文句をたれているミィは一言も喋らず、黙々と歩き続けていた。


 「兄貴、あの嬢ちゃんはいつもあんな感じなんですかい?」


 「いや〜いつもはもっと口うるさいんだけどね。たぶん怒ってるのかな?」


 早く立ち直れと彼女にさっき言ったが、やっぱり落ち込んだままの方が良かったのかもしれない。


 ミィの歩くスピードが速すぎたせいで予定よりだいぶ早くアジトに到着した俺たちは、休憩もとらず洞窟の中へと入っていった。


 洞窟の中は、特別何か変というわけもなく、一本道の壁には松明が掛けられ天井から滴り落ちる水の音だけがこの空間に響き渡っていた。何か罠が仕掛けられているかもと心配したが、そんなこともなく俺たちは順調に奥へと進んでいった。


 しばらく歩いていると、段々、酒と煙草の匂いが強くなっていき、男どもの野蛮な声が止めどなく聞こえてくる。


 

 ミィが突然立ち止まった。どうしたのかと思い前を見ると、そこには大きな扉があった。見た目は、少し汚れてはいるがとても頑丈そうで、ぶち破るにはミィの魔法で派手に吹き飛ばすしかない。そう考えていたが、どうも奴らの頭の中に”警戒”の文字はないらしい。扉には少しの隙間が空いており、そこから中の様子を覗くことが出来た。


 洞窟の中にあるとは思えないほど広い空間に、奴らは大量の酒樽を中央に積み上げ、それらを取り囲むように座り酒を飲んでいた。


 しばらく見ていると、しびれを切らしたミィが、


 「ガイアスさん、もうあいつら殺しますね」


 と、俺の返事も聞かずに、杖を扉の隙間から出し、構えた。


 「へえ〜、嬢ちゃん魔法が使えるのか!どこの出身かい?」

 「・・・・・、トレード家です。」

 「トレードか!あそこは攻撃魔法に優れた家系だからなぁ。って事は嬢ちゃんもすんごい魔法をバンバン使うんだろう。」

 「そんな事はどうでもいいです。今は指輪を取り戻すことに集中してください。」

 「おお、悪いな。それじゃ頼むぜ」


 ジェイクはそう言うが、一体ミィはどうやってあの大人数をいっぺんに殺すのだろう。もし、倒しきれず相手に気付かれでもしたら、この人数差では勝ち目がない。


 俺は、ミィが魔法を打つのを止めようとしたが、ギリギリ間に合わず、彼女は杖の先端から赤いオーラを出し、叫んだ。


 「強大な火炎球(フレイムインパクト)!!」


 杖からどデカい火炎球が放たれ、積み上げられた酒樽に衝突した瞬間、


 


 ドガアアアァァァアアン!!!!!



 巨大な爆発が起き、熱風が扉をぶっ飛ばし、黒煙が上がった。奴らの声は消え、辺りは静まり返った。

煙が薄れていくにつれ、ミィに粉微塵にされた連中の、見る影もないアジトの姿が俺の目の前に広がった。


 ミィが吹き飛ばした場所を俺は慎重に歩いた。男達の黒焦げになった死体が無数に転がっている。ここにあった物は全て、跡形もなく消え去ったに違いない。


 「ミィ!流石にやり過ぎだって!ここに指輪があったらどうすんの!?」

 

 彼女は落ち着いて答える。


 「さっきここを覗いた時に奥にでかい扉がありましたから、おそらくそこに今までこいつらが盗んだ物が保管されているはずです。」


 「そうか。それなら良いんだが。・・なんというか、その、いや何でもない。」

 「いや〜、にしても随分派手にやっちゃったすね。俺、ビビってちょっと漏らしちゃいましたよ。」

 「ほら、ふたりとも行きますよ。」

 「「は〜い」」


 扉の前に着いた俺たちは、ゆっくりと扉に手を掛け、慎重に引いた。鈍い音をたてながら開いた扉の隙間から顔を覗かせた瞬間、


 「うおっ!」


 どこからか斧が飛んできて、扉に突き刺さった。俺は咄嗟に顔を反らして回避した。


 (あっぶねぇ〜!少し遅れてたら間違いなく死んでたな・・)


 ミィが勢いよく扉を開け、中に入っていった。俺たちも急いで後を追う。


 隅には、今まで多くの人達から盗んだであろう指輪や宝石、金などが散乱しており、光り輝いていた。そんな中、奥に置かれた金ピカの豪華な椅子に、王冠を被り首には高そうなネックレス、こっちを見て笑うその歯には、金歯がたくさん生えていた。体はとても大きく明らかにここのボスであることは明白だった。男が口を開く。


 「おいおい、俺の仲間をよくも殺ってくれたなぁ。しかもアジトまで吹き飛ばしやがって。お前ら生きて帰れると思うなよ。」


 「そんなのどうでもいいわ!それより指輪はどこ?」

 「指輪ってもしかしてこれのことかい?」


 男が手を上げた。そこにはトーマスさんの指輪がついていた。


 「これは俺のお気に入りなんだよ。お前らにやるわけにはいかねぇな。」

 「別に良いわ。力ずくで取り返すまでよ。」

 「この俺から取り返すだとぉ。おもしれぇ、できるもんならやってみろよぉ!」


 奴は全速力でこちらに走ってきた。ミィが杖を構え奴に攻撃しようとしたが、ジェイクがそれを止める。


 「そんなことしたら指輪まで吹き飛んじまいますよ。俺にいい考えがあります。」


 ジェイクは剣を抜き、男のほうと走った。

 ぶつかり合う剣と斧が火花をちらす。男がジェイクを壁に蹴り飛ばし、そのまま短剣を投げつけた。

すんでの所でジェイクが躱す。


 ジェイクが男のほうへと走り、壮絶な切り合いが始まった。


 ジェイクが男の足に蹴りをお見舞いし、奴は体制を崩した。その瞬間、ジェイクは男の腕を切り落とし、掴んで俺に向かってぶん投げた。


 「嬢ちゃん、今だ!!」


 「強大な火炎球(フレイムインパクト)!!」


 ミィが奴に向かって火炎球を放った。


 ジェイクは横に飛んで回避し、その後ろにいた男に直撃した。


 「ギャアアァァアアァ!!!」


 男は炎に焼かれながら、断末魔と共に焼け死んだ。


 「ふぅ、嬢ちゃんならそうしてくれると思ってたぜ。」

 

 ジェイクが冷や汗を拭きながらニヤリと笑った。てっきり馬鹿だと俺は思っていたが、意外と頭が切れるらしい。


 俺の手には男の腕があった。さっきジェイクが切り落とし俺にぶん投げた腕だ。おそらく指輪を守るためにやったんだろうが、俺は気持ち悪くて今にも吐きそうだった。


 「ジェイクさん、さっきはありがとうございました。腕を切ってくれたおかげで私も安心してあいつに攻撃できましたし。」


 「良いってことよ。それより早く依頼主の所に持っていかなくていいのか?兄貴達を待ってるんだろ?」


 そうだ、忘れていた。半ば強引な出会いだったけど、俺たちを信じ待ってくれている人がいる。多少のトラブルはあったがなんとか指輪を取り戻せたんだ。トーマスさんの行いに報いなければ。


 「ああ、早く帰らないとな。ここにあるお宝は街に帰ってからギルドに報告しよう。きっと俺たちと同じ目にあって悲しんでいる人たちはたくさんいるだろうし。」


 俺たちは指輪をもって足早に山を降りた。


 

 




 ーーーーーーーーー





 


 「本当にありがとうございました!これで妻も許してくれるはずです。」

 「いえいえ、これが俺たちの仕事ですから。トーマスさんの喜ぶ顔が見れてよかったです。」

 

 俺たちはカザレに着くと、ギルドに白蛇のアジトの事を報告し、エニシングに帰った。一日にいろいろな事があったせいで俺とミィは着いてすぐに眠りについた。不思議だったのはそこにジェイクのいた事だ。

まあいいか。明日になったらここを出るだろう。


 次の日に、トーマスさんに指輪が見つかったと報告すると、すぐにやって来た。


 「それで報酬についてですが、前にも話した通りこのエニシングの良い評判を周りに流してくれればそれで良いです。」


 「本当に良いんですか?僕のために探してくれたのに・・・」

 「トーマスさんは借金していると聞きましたし、そんな方にお金を払わせるわけにはいきませんよ。」

 「ガイアスさん・・・、分かりました。しっかり流しておきますね。」

 「よろしくお願いします。」

 「では僕はこれで」


 トーマスさんはミィから指輪を受け取ると笑顔で帰っていった。


 「トーマスさん、奥さんと仲良くしてくださいね!」


 ミィの言葉にトーマスさんは「はい!」と元気に答えた。きっと彼はこれから先、奥さんと幸せに暮らしていくだろう。今回の依頼は、トラブルはあったもののこうやってお客さんを笑顔に出来て本当に良かった。

 

 何でも屋エニシングの指輪探しの依頼は、これで完了だ。


自分で小説を書いてみると、改めてその大変さが身にしみて分かりました。これからも頑張っていきたいですね。

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