表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何でも屋のお客達  作者: ほくろマン
1/3

第一話 久しぶりの依頼


 ここは、とある地方の名もなき森の奥深く。小鳥のさえずりや草葉の擦れ合う音しか聞こえず、大陽の光が差し込んでいるので少し明るくなってはいるが、人の気配は一切ない。


 そんな森の奥深くで魔獣達がまるで話し合いをするかのように集まっていた。


 「これで全員か・・まぁいい。では、始めようか」


 彼らがここでしていたことを知る人はいない。



           〜〜〜〜〜〜〜〜


 「母さん、父さん・・・ なんで、こん・・な事・・に。

         うああぁぁああぁ!!!」


 「はっ!   はぁ・・はぁ・・」


 どうやら夢を見ていたらしい。しかも悪夢だ。あんな事もう2度思い出したくなかったのに。

 

 俺は汗に濡れた体をソファーから起こした。


 「ガイアスさんやっと起きましたね!早くその散らかってるものを片付けてください!昨日掃除したばっかなのに〜」


 そう言いながら近づいてきたのは ミレッタ・トレード。

  俺の助手だ。自慢じゃないが結構可愛い。なぜ俺の下で働いているのか分からないぐらいだ。


 「はいはい、分っかりま〜した。やればいいんでしょ」

 

 「はぁ」


 俺が机の上の酒瓶を手に取った時、彼女のため息が聞こえてきたが、別に気にしない。いつものことだ。もう慣れた。


「そういえばミィ、依頼は来てたか?」

 

 ひと通り片付け終わった後、俺は彼女に聞いた。

 ここ最近、依頼はめっぽう減ってしまい、稼ぎ口がなくなりつつあることに危機感を感じていた。今は先代が稼いだお金で生活できてはいるが、流石に厳しくなってきたな・・・


 「来てるわけないでしょ、こんなくたびれた何でも屋に。

みんな少し離れた町の方に行ってますよ。あそこ、うちよりもデカくて綺麗ですから」


 「こっちだってそれなりに綺麗だろ、それに昔は有名だったんだから」


 俺たちがやっている何でも屋 エニシングは昔、先代の影響でこの世界では知らぬものはいないぐらいの知名度をもっていた。けれど、先代が引退して俺が店主を引き継いでから数年、俺は先代のように上手くはいかず依頼をこなす事ができない時が多々あった。そのせいか人気は徐々に減り、今この状況である。


 「これのどこが綺麗なんですか!書類や段ボールは置きっぱなしだし、窓は汚れてるわ、看板は錆びているわ、一階の応接室なんか埃まみれですよ!こんな状態で誰がここに依頼しに来るってゆうんですか」

 

 「しかもガイアスさんがミスばっかりするし・・・」

 

 うっ!

 

 (心に来るなぁ、今の一言。でもしょうがないじゃんか。俺にこの仕事は向いてなかったんだ。魔法が使えるミレッタさんがやったら良かったのになぁ〜!)


 ミィの心無い発言にしょんぼりしていると、流石に申し訳なく思ったのか、彼女がとある案を出してきた。


 「どうせ待っても客はこないんだし、こうなったら困ってる人を探しに行ったらどうですか?この町だって1人や2人いるはずです」

 彼女の提案に俺は思わず感動してしまった。


 (こうゆう所が頼りになるんだよなぁ)

 

「なるほど、いい案だな。今日はすることもないし。よし!ミィ、頑張って行ってこい!」


 俺が勢いよく言うとミィが驚いた顔をこちらに向けてきた。

顔が引き攣っているが、それでも可愛く見えてしまう。

白い髪がポニーテールで纏められているせいだろうか。


 「何言ってるんですか!?私はこれから"ガイアスさん"が、

散らかした書類を片付けなきゃいけないんですから。あなたが行ってきてください!」


「えぇぇ〜〜!!」





 ドアを開けると朝日が俺に挨拶をしてきた。あまりに元気なものなので思わず手で目を覆ってしまった。当然だ、目覚めて少ししか経ってない俺の体が耐えられるわけがない。


 (う〜ん、眩しいなぁ。朝から輝いちゃってさぁ。こちとら人使いの荒い助手のせいでわざわざ客を探しに行かなきゃいけないってのに。)


 ・・・少し考えたがここでブツクサ文句言ってもしょうがない。俺ももう大人だ。ここは早く見つけて帰ろう。


 俺は重い足を動かしながら目的地に向かうのであった。




 俺たちが住んでいるこの町は、ローヌ地方のメイス領郊外にある"カザレ"と言う至って平和な町だ。人口は中心部の町よりは少ないが近くにダンジョンがあるということもあって、町は旅人が集まり活気に溢れている。

この町は真ん中にカザール広場というものがある。大きな噴水を囲む形で冒険者ギルドや武器屋、レストラン、酒場などその他冒険に欠かせないお店が立ち並んでおり、この町で人が一番集まる所だ。



 俺は今、広場に繋がる一本道を歩いている。


 (あそこなら人も多いし、お困りのやつぐらい居るだろう)


 そんな事を思いながらこの道を歩いていると、すれ違う人は

皆、顔に笑顔を浮かべている。俺とは正反対だ。洗濯物を干しているおばさんや追いかけっこをしている子供、この町に絶望に打ちひしがれた人はいないと神が俺に伝えているように感じる。


 (こりゃあ長くかかりそうだな。はぁ〜、めんどくさい。

 もう俺が依頼したいぐらいだよ。)

 

 ヨボヨボした足取りで10分ぐらい歩き続け、ようやく広場に辿り着いた。やはりここにきて正解だった。旅人や町の人がたくさん集まっている。辺りを見回すと、話しているもの、朝から酒を呑んでいるもの、これから旅に出発しようとしている者など様々だ。

 

 

 そんな中、俺はそういう性分なのか雑音の中にある一筋の光を聞き逃さなかった。

 

 

 バチン!!


 「最っ低!もう知らない!!」

 

 そういうと、女はどこかへ行ってしまった。


 「待ってくれ!アンナぁ〜!」

 

 どうやら夫婦喧嘩のようだ。男の方は必死にアンナという女性を引き留めようとしているが、彼女は相当怒っていた。男の声を無視し、角を曲がって消えていった。


 「うぅ〜、アンナぁ。どうして・・・」 

 

 男は膝から崩れ落ち静かに泣いていた。この賑やかな広場で彼はとても目立っている。喧嘩に気づいた何人かが彼を憐れみの目で見ている中、ガイアスという男だけは希望に満ちた眼差しで彼をガン見している。


 (ニヤケが止まらん。 いかんいかん、落ち着け、俺の顔!今は一刻も早く彼が自分の家に帰る前にエニシングに連れ込まないと!)



 「お兄ぃさぁん!ハイタッチするなら顔じゃなくて

  手にしないと。」


 声を掛けると彼はそっと顔を上げた。まるでこの世の終わりでも見たかのような表情だ。


 「な、なんですかあなたは。」

 「まあまあ、説明は後、いいから来て」

 「ちょ、ちょっと!」

 

 俺は彼の手を引っ張り、エニシングへと向かった。



  

〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 「あのぉ〜、ここどこですか?

  それに、あなた達だれ?」


 「俺はガイアス、こっちは助手のミレッタだ。

  早速だが話...ぐぇ!」


 俺の後ろにいたミィが急に襟を掴んで、部屋の隅に運び、

ひそひそ話をしてきた。


 [ちょっと!まだ片付け終わってないんですよ!この部屋だって埃残ってるし。あそこの何でも屋は汚いって悪評流されたらどうするんですか?」


 [えぇ〜。でも探してこいって言ったのミィだし。]


 [いくらなんでも早すぎますって!私、今日は見つからないと思ってたのに。]


 [ってことは、それだけ俺に才能があるってことかな]

 

 俺がドヤ顔でミィに問いかけると、


 [冗談言ってる場合じゃありませんよ!お客さん待たせてるし、本当にどうするんですか?]


 [大丈夫だって!パッパと依頼聞いて帰らせるからさぁ。]


 [もう、じゃあ頼みましたよ]


 内心呆れながらも許可を出してくれたミィに感謝しながら

俺は客の前へ座った。

 依頼を受ける時はどんなことがあろうとも笑顔と礼儀を

忘れない。これは先代から教わったことだ。


 「失礼、遅くなって申し訳ありません。」

 

 「いえ、大丈夫です...」

  

 「では、先程の続きから、お名前を聞いても?」


 「トーマスです。 トーマス・ノア」


 (ノア? どこかで聞いたような気が...)


 そんな事より彼の答え方がよそよそしかった。まだこちらを完全に信用してはいないようだ。



 (まあ、無理矢理連れてきたんだもんな。しょうがないか...)


 「あの、僕からも一ついいですか?」


 「えぇ、どうぞ。」


 「ここは一体どこなんですか?」


 「そうでした。その質問にまだ答えてませんでしたね。

  ここは何でも屋エニシングです。

  一応、店主をやっております。」


 「そうですか。

  それで、何でも屋さんが僕に何の用でしょう。」

 

 「広場であなたを見かけた時にとても困っている様に見えましたので。それでぜひ我々にその悩みごとを解決させてもらえないかと。もちろん、こちらからお声がけしたので依頼料は

お安くしときますが... どうです?」


 「お金は別に良いのですが....その...なんというか...」

 

 (どうしたんだ?何か言えない事情でもあるんだろか?

 それとも大したことない内容なので、言うのをためらっているとか?)

 

 俺が考えているとミィが元気な声でこう言った。


 「大丈夫ですよ!どんな依頼だろうと私達は必ず全力でやりますので!よかったら、詳しく聞かせてもらえませんか?」


 トーマスの顔が急に明るくなった。さっきまであんなに不安そうな顔をしていたのに。ミィの可愛さに心打たれ、こちらを信用してもいいと感じたのだろうか。


 (魔性の女め!無自覚だから余計腹立つわ!)


 俺が少しイラついていると、トーマスはすぐに話しだした。

 

 「実は...指輪をなくしてしまって...」


 「え!?」


 ミィと声がハモってしまった。どうやら彼女も同じことを

思ったらしい。そこで俺は思い出した。


 (だから喧嘩してたのか!)


 「大変じゃないですか!指輪を失くしてしまうなんて。

どこか失くした場所に心当たりはありませんか?」


 「失くしたというか、多分落としてしまったんです。

 カザレ森に...」


 「カザレ森に!? こりゃまたどうして?」


 カザレ森は、このカザレの町の北部に位置する大きな森のことだ。あそこは魔物がたくさんいて、とても一般人が入れる場所ではないはずだ。目的があるなら、普通はギルドで冒険者を雇い、護衛してもらいながら行くような所なのだ。


 「今度、妻との結婚記念日でして。それでどうせならカザレ森にあるとても綺麗な湖を2人で見に行きたいと思ったんです。でも、魔物が出るという噂は耳にしたことがあったので

念の為、一度下見に出掛けました。そしたら、森から帰る

途中に魔物に襲われてしまい、命からがら逃げてきました。

この町に着いた時、指輪を落としている事に気づいた、という訳です。」


 「そうなんですか... でも、何で護衛をつけなかったんですか? 魔物が出るから危険、ということは

分かってたんでしょう?」


 「お金が無かったんです。実は、この指輪は父に借金を

して買った物でして。彼女と結婚してからは稼いだお金を少しずつ父に返していたので、毎月結構厳しくて...」


 「そうですか... 分かりました。私達が必ず見つけますのでご安心ください。ところで、指輪の特徴を教えていただきませんか?探す時の参考にしたくて。」


「スピネリー社製の指輪でして、宝石はダイヤモンド、大きさは14号です。」


 「スピネリー社!!??」


 ミィが大きな声で叫んだ。彼女がここまで驚くとは...

そんなに有名なのか?


 「ミィ、そんなに凄いのか?そのスピなんたら社っていう

会社って。」


 「スピネリー社!! ガイアスさん知らないんですか?!

この世界の三大会社の一つですよ!指輪や宝石といったら

知らない人はいないぐらいの人気なんですから!

まさに女性の憧れですよ!いいなぁ〜」


 こんなに興奮しているミィを見たのは初めてだ。それほど

人気なのだろう。いつかミィにも買ってやりたいな。彼女には結構世話になってるし。


 「よし!ガイアスさん、絶対に指輪を見つけましょう!

スピネリー社の指輪、私もこの目で見てみたいですし。

トーマスさん、この依頼ぜひ受けさせてください!」


 「本当ですか!? ありがとうございます。お金は何とか

調達しますので。妻が許してくれるのなら、私なんでもする

覚悟です!」


 「トーマスさん、お金はいいですからエニシングの良い評判を周りにしっかり流しといてくださいね。」


 「はい!では、よろしくお願いします!」


        


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 翌日...


 「ガイアスさん準備できました〜?」


 「ちょ、ちょっと待って!後もう少し。」


 彼女はいつもよりウキウキしているように見えた。

よほど指輪が見たいんだろう。


 「お待たせ!」


 「もぉ〜、遅いですよ!」


 「ごめんごめん、それより凄い荷物だな。そんなに持って

行って大丈夫か?」


 「そんなことはいいんですよ!準備ができたなら早く行きましょう!」


 「はいはい、それじゃあ、カザレ森に向けて〜」


 「しゅっぱ〜〜つ!!」









 

初めて書いた作品です。

評価してくれたら幸いです!

皆読んでね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ガイアスとミレッタの会話がスムーズに読めていい [気になる点] もう少し進んで欲しかった。 [一言] 応援してます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ