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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
学園の始まり

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王太子の反省


 セオフィラスはレセリカが友達を作りたがっていることを知っている。一度その相談を受けたことがあるからだ。

 ただ、自分にもその方法がわからず、その時は大したアドバイスも出来なかったと記憶していた。


(なんてことだ。私がレセリカの友達作りを邪魔してしまっていたとは)


 助けになれなかったことが歯がゆく、せめて応援しようと思っていたのに、むしろ足を引っ張っていたようだとセオフィラスは大いに反省した。

 自分のワガママに付き合わせて、レセリカのことを考えられていなかったのだから。


「ごめんね、レセリカ。私は君の友達作りの邪魔をしていたようだ」

「そ、そんなこと……!」

「あるよ。だって、断り難かったでしょう? 今日はとても勇気を出して教えてくれたんだよね?」


 セオフィラスの言葉に、レセリカは困ったように眉尻を下げた。肯定も否定もしないということは、彼女の性格上その通りだったのだとすぐにわかる。


(本当にレセリカは優しすぎるな。とても聡明な子だけど、優しさに付け込まれて人に利用されてしまわないか心配になる)


 レセリカはとても九歳とは思えないほど賢く、大人な対応が身に付いている。だが、その優しさから人を疑うことをあまりしない気がするとセオフィラスは感じていた。

 いや、実際は疑うこともあるのだろうが、同情の余地が少しでもあれば簡単に許してしまうような甘さがあるのだろう、と。


 彼女の優しさは長所であり、セオフィラスとしても好ましいと感じている部分ではあるが、放っておいたら悪知恵の働く貴族連中の餌食になるだろう。

 そして、それらから守るのは自分の使命だと考えていた。


(だからといって、束縛のし過ぎはよくなかったな。本当はもっと一緒にいる時間を増やしたいくらいだけど)


 本音を飲み込み、自分の願いより彼女の頼みを優先してあげたいと思うくらいには、セオフィラスにとってレセリカは大切な存在になりつつあった。


「本当に申し訳なかったよ。けど、嬉しくもあるかな」

「嬉しい、ですか?」

「うん。レセリカがちゃんと、自分の望みを教えてくれたから」


 そう、セオフィラスはレセリカを大切にしたいと思っているのだ。

 一緒にいて楽しいと思える相手が婚約者であることが本当に幸せだと感じており、それがとても貴重であることもわかっていた。


 ただ、彼女から自分の主張を聞くことは少ない。まったくないわけではないが、どうも我慢してしまうことが多いように思うのだ。

 だからこそ、乗馬訓練の話を聞いた時はとても嬉しかったし、もっと側にいてもっと彼女を知りたいと思った。


 セオフィラスは少々、自分が調子に乗っていたのだと自覚し、反省したのである。


「私は君と一緒にいたいあまり、ワガママになってしまうことがあるから。だから、今回みたいにちゃんと教えてもらえるとありがたいし、嬉しいよ」


 セオフィラスはそっとレセリカの手を取り、優しく両手で包み込みながら彼女の紫の瞳を見つめた。

 彼はレセリカの、ほんのりと赤く染まっていく頬を見るのが好きなのだ。


「今後も我慢しないで教えて? レセリカの話ならなんだって聞きたい。私は絶対に怒ったりしないし、嫌な気持ちになったりもしないから」


 そして、もっと頼ってもらいたい。王太子として、常日頃から護衛二人にあれこれ頼んでばかりのセオフィラスでさえ自分一人で飲み込むことが多く、辛いと感じることがあるのだ。

 彼女にもちゃんと頼れる相手を作ってもらいたかった。出来ればそれが自分であればいい、と。


「……わかりました。今後は、きちんとお伝えします」


 セオフィラスは、それが言葉だけではないことを切に願った。そうは言ってもレセリカは肝心なことを一人で抱えてしまいそうなのだから。

 もちろん、それはセオフィラスが勝手に心配しているだけで、ただの思い過ごしであればそれに越したことはないのだが。


「あの、ありがとうございます。私も、セオフィラス様がそうやって受け止めてくださって……とても嬉しいです」

「……っ!」


 しかし、レセリカはちゃんとセオフィラスの思いを見抜いていたようだった。その上でわかったと了承していたのだ。

 つまり、今後は本当にちゃんと伝えてくれるのだろう。


 わずかに口角を上げた微笑みと共に告げられたことや、自分の心配を言い当てられたことの恥ずかしさもあって、セオフィラスは言葉に詰まる。


「セオフィラス様……? 少しお顔が赤いようです。熱がおありなのでしょうか」


 そしてトドメと言わんばかりに心配顔を向けられてはたまらない。人の気持ちを察せる鋭さを持っているはずなのに、時折こういったことに鈍い反応をするのはなんなのだろうか。本気で不思議である。


 可愛らしさも加わったおかげで、セオフィラスの顔は余計に赤くなってしまった。


「ぶはっ……!」

「……ジェイル、フィンレイ」


 耐え切れなかったのだろう、ジェイルが吹き出して笑い、フィンレイが肩を揺らしている。そんな二人を半眼で睨むセオフィラスだったが、顔が赤いままでは迫力も半減だ。


「ご、ごめんごめん、セオフィラス。ああ、レセリカ様、心配しなくても大丈夫ですよ」

「そうですね、ジェイルの言う通りです。最近はよくあることなので。ふふっ」


 全く反省していないどころかここぞとばかりにからかう護衛二人に対し、セオフィラスは諦めたようにそっぽを向く。後でおぼえていろよ、と。


 一方で、よくあることなら余計に心配なのでは、と首を傾げるレセリカは、やはり無防備で目が離せないと改めて思うのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] おやおやぁ? いつものキレがありませんなぁ?王太子殿 (・∀・)ニヤニヤ
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