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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
学園の始まり

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ヒューイの報告


 翌朝のことだった。身支度を終え、鏡台の前でダリアに髪を整えてもらっている時にフワリと室内に風が吹き、ヒューイが姿を現した。


「レセリカ、調査報告をしたいんだけどー……ってうわ、待て! 攻撃しようとすんな!!」

「女性が身支度をしている時に現れるとは……! お前にはマナーってものを身体に叩き込んで差し上げますっ!!」

「物理だろ、それっ!?」


 朝から賑やかである。ダリアは身支度中と言ったが、実際は全て終えているのであとは登校の時間までのんびりするだけだ。

 ヒューイなりに気を遣っていたのではないかとレセリカは思う。


「許してあげて、ダリア。私は気にしていないわ」

「わ、わかりました。……ちっ、命拾いしましたね」

「怖ぁ」


 ダリアとヒューイは割と本気なのだが、レセリカは相変わらず仲がいいな、としか思っていない。これが俗にいう軽口の叩き合いというものなのだと認識しているからだ。理解出来る日は遠い。


 それよりも今は報告だった。登校の時間もあることだしあまりのんびりはしていられない。レセリカはヒューイに向き直った。


「もう何かわかったの?」

「もっちろん。オレを誰だとお思いで?」


 もっと時間がかかると思っていたレセリカは素直に驚いた。ヒューイは自信満々で胸に手を当て、気取ったようにポーズを決めている。

 一方でダリアが何かを察したように待機部屋へと向かおうとしていることにレセリカは気付いた。そんな彼女を慌てて呼び止めると、ダリアは戸惑ったように立ち止まる。


「ダリアも聞いて大丈夫だから」

「い、いいのですか?」

「ええ。考えてみれば、隠すようなことでもないと思ったのと……二人のことは信頼しているから」

「レセリカ様……!」


 両手を組んで目を潤ませるダリアに、やはり気を遣わせてしまったのだと知って申し訳ない気持ちになるレセリカ。

 昨日二人で話したことで、改めてダリアをもっと頼るべきかもしれないと感じたのだ。


 ダリアは前の人生で、最後の最後まで味方でいてくれたのだから誰よりも信頼出来る人物ではある。だが、どこかで彼女を巻き込みたくないと思っていたことにレセリカは気付いた。


 ダリアを失いたくはないし、幸せにしたいというレセリカの気持ちは本物だ。だが共に学園にきており、ずっと側にいてくれるのなら中途半端に守ろうとするよりも、出来る範囲で一緒に考えてもらった方がいいと考えた。


 今度こそ、自分一人で何もかもやろうとせずに人に頼ると決めたのだから。


「本当はさ、オリエンテーション中にある程度の情報は掴んでたんだよ。少し裏を取りたかったからちょっと時間かかった」

「裏を?」

「あっ、学園内でしか調査してねーぞ? 外に出る許可はもらってねーからな」


 ヒューイの答えを聞いてレセリカはホッと胸を撫で下ろす。もしもどこかでアディントン伯爵に会っていたらと思うと気が気ではないからだ。

 アディントン家に行かない約束はしていても、他の場所で遭遇しないとも限らない。心配しすぎかもしれないが、慎重になりすぎるくらいがちょうどいいとレセリカは考えていた。


「それにしても貴族の女って口軽いのな? これは内緒の話なんだけど、でじわじわと噂が広がってくんだぜ。それに、周りに誰もいないと思って喋り出すし、情報集めるのすげぇ簡単だった。レセリカも気を付けろよ?」


 レセリカがそんな心配をしているとは露知らず、ヒューイは愉快そうに頭の後ろで手を組んで笑っている。今回は噂が勝手に耳に入ってきたから調べるのに苦労しなかったという。

 それでも、噂を掴んでくること自体がすごいと思うのだが、風の一族基準としてはそうなのだろうとレセリカは勝手に理解した。


「あら、ウィンジェイドの。盗み聞きですか?」

「……そりゃそうだろ。堂々と会話に入っていけってのか? 盗み聞かないでどうやって情報集めんだよ」

「物は言いようですねぇ。ええ、悪いなんて一言も言っていませんが?」

「いちいち癇に障る言い方すんなぁ、お前っ」


 また始まった仲の良い会話をこのまま聞いても良かったのだが、登校の時間を考えるとゆっくり聞いている時間まではない。レセリカは間に入って報告を促した。

 二人はバツの悪そうな表情で互いに目を逸らし、口を噤んだ。


「こほん。まず結論から言う。ラティーシャ・フロックハートとリファレット・アディントンは婚約してる」

「えっ」


 そして聞かされた予想だにしなかった報告に驚きの声を上げた。少なくともそんな話をレセリカは聞いた覚えがない。


 もしかしたらこちらに報告がないだけで家には話が来ていたのだろうか。屋敷と連絡を密に取っているダリアに目を向けるも、彼女は困惑したように首を横に振っている。


「そのような報せはベッドフォード家にも来ていませんね……」


 そうなると、まだ婚約は決まったばかりということだろうか。しかしこういった報告は、後で他家からの申し込みがきて揉めることのないよう、すぐに貴族家に知れ渡るものなのだが。

 ダリアと二人で難しい顔をしていると、ヒューイが声を潜めて口元に手を当てた。


「婚約はしてる。けど学園を卒業するまでは秘密にするみたいだ」

「秘密……?」


 婚約を公表しない理由がわからず首を傾げたレセリカに、ヒューイは自分が得た情報を簡潔に説明し始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] オレ、シゴトシタ。ダリアヨリモヤクニタツ( ´-ω- )フフン
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