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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
未来の始まり

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落ち着かない心


 最終学年として学園生活を送ること早数カ月。

 すでに、前の人生でセオフィラスが暗殺され、レセリカが処刑されたあの日はとっくに過ぎ去っていた。


 そのことにレセリカが気付いたのは、ここ最近のこと。

 貴族科での学園生活や、セオフィラスとの手紙のやり取り、新しく出来た友達との関わりなどでそれなりに忙しくしていたからか、すっかり忘れていたのだ。


(気を抜きすぎていたのかしら。でも……良いこと、よね)


 忘れていたということは、もう過去に捕らわれていないとも言えるかもしれない。レセリカはそう思うことにした。


 すでに、前の人生よりも長く生きている。ここから先は、レセリカも歩んだことのない人生だ。

 周囲には親しい者がたくさんいて、セオフィラスとも良い関係を築けている。当初の目標は達成出来たということだ。


(なんだか実感がないけれど)


 もちろん、良いことばかりではない。キャロルのことは今も引き摺っているし、傷付いた心が癒えることはない。

 レセリカのことを良く思わない者だっているだろうし、この先の王太子妃としての重責も感じている。


 けれど、命があればそれでいい。大変なことも、一つ一つ乗り越えていけばいいだけなのだから。


(……いい加減、セオに話さなきゃ)


 過去のことを打ち明けると決めたレセリカだったが、そもそもセオフィラスと二人で会う機会がないため、未だ話が出来ていないのが現状だ。

 手紙でのやり取りはしているが、さすがに手紙で話すような内容ではない。外部に漏れても困るし、直接会って話さなければならないのだ。


 しかし、次の長期休暇では久しぶりのデートを約束している。その時に、全てを話すつもりだった。


(私の、この気持ちも)


 やり直し人生のことだけではない。セオフィラスに告白をされてからずっと待ってくれている返事を、今度はレセリカから切り出さなければ。


 これまで、勇気を振り絞る機会は何度もあった。その度に、今回が一番緊張すると思ったものだが。


(どう考えても、今回が一番緊張するわ……!)


 その日のことを思うだけで、体温が上昇する。心臓が早鐘を打つ。

 すでに、レセリカは上手く伝えられるか心配で仕方なかった。


 ※


「ダリア、変ではない?」

「いつも以上にお美しいですよ。もう、レセリカ様ったら何度目ですか?」


 デートの当日、学園の寮室にて姿鏡の前に立つレセリカはずっとそわそわしていた。学園にいる間は休日でも楽な制服を着ていることが多いからか、こうして着飾るのは落ち着かない。

 とはいえ、町に出かけるのだからそこまで華美なドレスではなく、清楚なワンピースドレスなのだが、レセリカにとっては勝負服だ。


(今日は、全てを告白するのだもの……!)


 変に見えるところはないか、少しでも可愛いと思ってもらえないか、そう乙女心が騒ぐのである。

 朝から何度もこんなやり取りを繰り返しているため、ダリアもクスクス笑っている。自分でもわかっているのだが、落ち着かないのだから仕方がない。


「……大丈夫ですよ、レセリカ様。セオフィラス殿下はちゃんと受け止めてくださいます」

「そ、それはわかっているのだけれど」

「レセリカ様の思いもです。むしろ、嬉しすぎて抱きしめてくるかもしれませんね」

「も、もう! ダリアっ! からかわないで!」


 実際、告白を保留にしているだけの状態であるため、セオフィラスが喜んでくれるのはわかっていることだ。そもそも、婚約者なのだから今更という部分もあるのだが。


 やり直し人生を告げることへの不安、それを聞いた上で思いを告げた時、彼の中で心境が変わってしまうかもしれないという思いが、全くないわけではなかった。

 セオフィラスに限って、そんな不安は杞憂だとわかっていても、だ。


「隠していたことを明かす、ということ自体が緊張するのよ」

「ええ、ちゃんとわかっていますよ。私にも経験がありますから」


 やや口を尖らせながらレセリカが告げると、ダリアはふっと目を細めながらそう答える。

 確かにそうだ。ダリアだって、自分が元レッドグレーブだということを明かすとき、かなり勇気を振り絞ったはずだ。


「万が一にもそんなことは起きませんが、もし明かしたことで嫌な思いをすることになったとしても、きっと秘密がなくなるとスッキリすると思いますよ」


 そんなダリアの言葉には説得力がある。そうだ、秘密があるから心苦しいのだ。それがなくなれば結果がどうあれ、きっと心が軽くなる。


「まぁ、レセリカ様に嫌な思いをさせたら私もウィンジェイドも黙ってはいませんが」

「だ、大丈夫よ! きっと……!」


 冗談が本気にしか思えない発言に、レセリカは思わず慌ててしまう。けれど、そのおかげで少し緊張が解れた気がする。


「せっかくなのです、楽しんできてください」

「……ええ。ありがとう、ダリア」


 護衛としての仕事をレセリカから禁じられているダリアは、今回学園でお留守番だ。だからこそ、その言葉は深く重みをもっているように感じる。


 ダリアのいない外出などこれまでほとんどなかったレセリカにとって、自分で決めたこととはいえ少々寂しさを感じるのであった。


冷徹令嬢、年内の更新はこれでおしまいです!

そして完結まであと2話!最後までよろしくお願いします(*´﹀`*)


また、現在新作を毎日更新中です。

「鑑定士ロイの伝わりにくい溺愛」

こちらは年末年始もノンストップで更新してますのでどうぞよろしくお願いします!

道楽息子な公爵家の末っ子が平民の女性に恋するも、飄々としているせいか本気の求愛が伝わらない感じの異世界恋愛です♡


では皆さま、良いお年を!

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