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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
未来の始まり

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進級間近と贈り物


 卒業式の日まで、あと数日となった。

 闘技大会の事件からしばらく、学園内も何かと騒がしい日々が続いていたが、現在は年度の終わりという慌ただしさへと変わってきている。


 とはいえ卒業生の就職活動も概ね終わり、在校生の学年末試験も終えた今は、長期休暇に思いを馳せる者が多かった。


 あれ以来、寮室に籠りきりだったレセリカも数日前には普段通りの学園生活を送れるようになっている。

 当然、警備はかなり厳重になってしまっているが、授業を受けられるだけでありがたい。


(一般科での授業が今年でおしまいになってしまうことだけは残念だけれど……仕方ないわね)


 学園内であれだけの事件が起きてしまった以上、いずれ王太子妃となるレセリカが危険にさらされやすい一般科の授業を受けるのは難しいと判断されてしまったのだ。


 レセリカとしても、学園側や護衛たちに迷惑をかけられないとわかっている。


 すでに一般科では様々なことを学ぶことが出来た。 これ以上ワガママは言えないと素直に聞き入れることとなった。


「最後の一年、レセリカ様と同じ貴族科で学べるなんてとても嬉しいです!」

「私もよ、キャロル。よろしくね」

「こちらこそです!!」


 というわけでレセリカは今後、貴族科に通うこととなっている。

 秘書科でもよかったのだが、いずれにせよレセリカが学ぶようなことはほとんどない。

 ならば、友人が多くいる貴族科に通うことを決めたというわけだ。

 優秀なレセリカだからこそ、自由に選べたのである。


「それにしても、早いものですよね。私たちも最終学年になるだなんて」

「あ! その前に殿下の卒業式ですよね、レセリカ様!」


 感慨深げに告げるキャロルに対し、思い出したようにポーラが告げる。


 セオフィラスがついに卒業するという話は学園のみならず、国にとってもめでたい話だ。

 次の年は聖エデルバラージ王国の王太子が成人を迎えるために、あらゆる準備が進められる一年となるだろう。


 レセリカも最終学年になり、何かと慌ただしくなりそうだ。二人が会う時間はグッと少なくなってしまう。


 その寂しさはもちろんあるが、それ以上にレセリカは不安と緊張でいっぱいだ。


 理由は当然、セオフィラス暗殺事件という運命の時が近付いているからに他ならない。


(前の人生とはずいぶん未来が変わったわ。もう暗殺されるようなことはないと信じたいけれど)


 恐らく、その日を迎えるまで本当の意味で安心など出来ないのだろう。

 いや、セオフィラスは一国の王太子となるのだ。身の危険は常に付きまとう。


(かといって、常に不安がっていたらキリがないわ。今はとにかく、あの日を乗り越えることを目標にしましょう)


 約一年後。

 ちょうどレセリカが卒業する直前にあの事件が起きる。

 そして、その半年後くらいにレセリカは処刑されて命を落とすのだ。


 今回はその先も生きていきたい。

 その隣には、セオフィラスにいてほしい。


 それはレセリカの切なる願いであった。


「あ、そういえばレセリカ様。殿下にプレゼントはお渡ししたのですか?」

「実はまだなの。卒業の記念にと思っていたからまだ手元にあって」


 レセリカの答えを聞いて、キャロルは意外だというように目を丸くした。


「えっ、そうなのですね。私はてっきり、すぐに渡してしまったのかと思っていました」

「キャロルが素敵に仕上げてくれたでしょう? 少し眺めていたくて」


 実のところ、いつ渡せばいいのか迷い続けていた部分もある。


 だが本当にそろそろ渡さなければ卒業してしまう。

 そうなれば会う機会も減ってますます渡せなくなるだろう。


 ただ、レセリカが照れたように告げた言葉にキャロルはどこか嬉しそうにしていた。


「そういってもらえると頑張った甲斐があるというものです! ですが、せっかくプレゼントにしたのですから早くお渡しした方が良いですよ?」

「ええ、そうね。次にお会いする時に必ず」

「ふふっ、殿下はお喜びになるでしょうね! ぜひ、その時の反応を教えてくださいね!」


 キャロルが人差し指を立てて告げた言葉に、レサリカは頬を赤く染めて答える。

 その様子を見てキラキラした目になったポーラは、相変わらず恋愛がらみの話が好きなようである。


「私にも聞かせてくださいね。楽しみにしていますので!」


 キャロルにも同じような反応を返されたレセリカは、一瞬だけきょとんとしてしまう。

 キャロルはこういった話題に興味はなかったはずだからだ。


 シャルロットの話を聞いてからというもの、天才肌のキャロルは興味の有無が極端だと理解しているから余計に。


 いや、キャロルが興味があるのは香水の容器の方かもしれない。

 張り切って準備してくれていたのだ、貰い手がどんな反応を示すのかが気になるのだろう。

 加えて友人でもあるレセリカを気にかけてくれているというのなら、これ以上なくありがたいことだ。


「わかったわ。喜んでくださるといいのだけれど……」

「喜ぶに決まっていますよ! レセリカ様からの贈り物ですもの。殿下はなんでも嬉しいはずです!」


 やや興奮気味のポーラに苦笑を浮かべつつ、それでも気に入ってもらえたらもっと嬉しいと思わずにはいられない。


 前の人生では知ることの出来なかった贈り物への反応を、今度こそは目の前で見たい。


 要はリベンジである。それもあってレセリカは余計に緊張してしまうのだ。


「楽しみですね」


 ポーラだけでなくキャロルも楽しみにしてくれている。


 それがとても嬉しく、レセリカは早速セオフィラスに予定を開けてもらうよう話をしにいくことを決めるのであった。


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