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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
未来の始まり

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贈り物と朗報


 気晴らしの街歩きをしたおかげか、レセリカに元気が戻ってきた。

 結局、心配していた襲撃などもなく、楽しい時間を過ごすことが出来たのが大きいだろう。


 やはり気分転換は大事だ。気を抜くことは出来ないが、今後も適度に息抜きをすべきだとレセリカ自身も反省していた。


 あの日に注文した香水は、半月ほどが経過した後キャロルが嬉しそうに持ってきてくれた。

 殿下に贈るものなら中身も確認するだろう、とまだ包装はされていない。

 その辺りの配慮はさすがであった。


「金の模様がとても綺麗ね」


 ガラス瓶を覆うように金色の細やかな模様が描かれており、見た目がとても華やかだ。

 それでいて品の良さが漂うデザインとなっているので、贈り物にはピッタリに思える。


「はい。少しだけ殿下の髪のお色みたいでしょう? 銀もあったのですが、こちらの方が良いかなと思って独断と偏見で選んでしまいました。あっ、もちろん銀が良ければすぐにご用意出来ますよ!」

「いいえ、これがいいわ。とても素敵。キャロル、ありがとう」


 さすがは商家の娘、こういった部分でのセンスはさすがである。


 さらにキャロルはラッピング用に専用の箱と袋、リボンまで用意してくれていた。これは妹のシャルロットが選んでくれたという。


「今、私がお包みしましょうか?」

「いいえ、後で私がやってみるわ」

「わかりました! 上手く出来ないなどありましたらいつでもお声がけくださいね!」


 何から何まで至れり尽くせりで、ネッター家には恩が出来た。


「はぁ、実は少し緊張していたのですよ。レセリカ様に喜んでもらえてよかったです!」

「本当にありがとう、キャロル。とても助かったわ」

「えへへ……」


 今後もネッター商会を利用しようと考えつつ、キャロルやシャルロットには改めて何かお礼が出来たらな、と考えるレセリカであった。




 その晩、レセリカの自室ではダリアとヒューイの二人がじっくり香水を検品していた。

 匂いを嗅ぐのはもちろん、香水を腕に垂らしてみたり、あらゆる角度から細部に至るまでよく観察したりと、大げさではないかと思えるほどじっくりと。


 その様子を、レセリカはなんとも言えない気持ちで眺めていた。


(セオに渡す物だから当然と言えば当然だけれど、キャロルやネッター商会を信用していないみたいで少しだけ心が痛むわね……)


 どちらかというと、二人はレセリカに害がない物かどうかを基準にして調べているのだが、結果として安全がわかるなら問題はない。


「ん、特に問題なし。容器にも香水にも、何ならラッピング用に準備した物まで全部安全だぜ」

「私もそう思います。安心して殿下に贈って良いかと」


 たっぷり時間をかけて、ようやくヒューイが結論を出した。ダリアもまた同意見のようでホッと肩の力を抜いている。


「ありがとう。ご卒業の時に渡したいから、しばらくは保管しておくつもりなの」

「そうでしたか。あと少しですしね。殿下のお喜びになる顔が目に浮かびます」


 レセリカがそう告げると、ダリアは笑顔で答えてくれた。が、やはりどこか違和感が残る。

 お店で見せたあの時の妙な態度といい、きっとダリアの中ではまだ何か気になったままなのだろう。


 今聞いた方がいいのだろうか。

 そう考えたレセリカが口を開きかけた時、そうだ! というヒューイの明るい声によって言おうと思っていた言葉が引っ込む。


「一つ朗報があるぜ、レセリカ!」

「朗報?」

「そ。これでもオレ、常に情報のアンテナ張ってるんだぜ。気になってただろ? アディントン家の元息子のこと」

「! リファレットがどうかしたの?」


 思わぬところで飛び出した名前に、ダリアへの質問も吹き飛んでしまう。

 少しだけ後回しにすることを決め、ヒューイに詳しい話を求めた。


「十日後くらいにさ、武術大会があるじゃん。今年はあの女関連のゴタゴタのせいで延期になってたから、卒業式ギリギリになったっていう」

「そうね。毎年もっと早い時期にやる学園の催しだわ。確か、セオやジェイルとフィンレイも毎年出ていた……え、まさか」

「そう。その大会に、あの元息子が出させてもらえるんだってさ」


 それはここ最近で一番の朗報である。

 ずっと学園での籍は保留となっていた彼が、ようやく戻って来られることを意味するのだから。


「それで、大会で良い成績を取れたら学園の卒業資格をもらえるんだとさ。つまり、うまくいけば今度の卒業式で元息子も無事に卒業できるってこと。年齢的には一年遅れになるけどな」


 朗報はそれだけではなかったらしい。

 レセリカは嬉しさに両手を組んで喜んだ。


「じゃあ、リファレットも騎士になれるのね! ああ、良かった……」


 結局リファレットの養子縁組はまだ決まっておらず、いつまでこの状態が続くのかとレセリカはずっと心配していたのだ。


 学園を卒業出来るというのなら、少なくともリファレットは騎士として働くことが出来る。

 自分の力でお金を稼ぐことが出来るし、騎士としての身分証も発行してもらえるのだ。


 大会で良い成績を残せたら、という条件はあるが、その点については心配していない。

 なぜなら、リファレットは常に大会では優勝か準優勝を取り続けていたのだから。


 特に今回は最大のライバルであったジェイルはすでに卒業している。

 学園を休んでいる間ずっと訓練に打ち込んでいたリファレットなら、優勝候補だったセオフィラスを倒す可能性は高い。


 ただ、セオフィラスが負けるかもしれないというのはかなり複雑な心境ではあるのだが。


「平民としての扱いなのは変わらないけれど、彼なら騎士として活躍出来るもの。すぐに養子縁組が決まりそうだわ。実力で爵位を得る可能性だってあるわね」


 そうなれば、ラティーシャとの縁談ももしかすると……。


 期待してしまうが、問題はフロックハート家の当主、つまりラティーシャの父や母が認めてくれるかという話になってくる。

 加えて素直になれないラティーシャは、もし両親が反対した時にそれを押し切ってまでリファレットを選ぶだろうか。


(ラティーシャが本当はリファレットを想っていることなんて、私にもわかるのに。素直になってくれればいいのだけれど)


 ともあれ、ずっと気になっていた問題が解決しそうとあって、レセリカの心はいつも以上に晴れやかだった。


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