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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
恋の始まり

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183/230

冷徹令嬢発売記念SS「良い夢を」

書籍発売を記念してSSを投稿します!

時系列としては一章の終わりくらい、ですかね。

未読の方は一章、または書籍をお読みいただいてからの方が楽しめるかと思います(*´∀`*)


ミステリーかな?って出だしですが異世界恋愛です!!!!(叫)


また、11日(月)21時より、最終章の連載をスタートいたします。週一更新になりますが、どうぞお付き合いくださいませ。

(また前日くらいに4章のあらすじを更新します)



 聖エデルバラージ王国、王太子セオフィラスが暗殺された。


 死因は毒。にもかかわらず首をナイフで切られ、遺体は血に塗れていたという。


 使われたナイフは遺体の近くに転がっていた。学園を卒業して一年が経とうという頃で、彼はまだ十六歳という若さだった。


 レセリカがその報せを聞いたのは、通っていた聖ベルティエ学院の寮室だった。


 聞いた時は哀しみよりも恐怖よりも、まず驚きが勝った。自身の婚約者が殺害されたというのに薄情だとは思うのだが、事実をすぐには受け入れられなかったというのが正しいかもしれない。


 当時十五歳だったレセリカは、卒業後にすぐセオフィラスと結婚する予定だった。

 婚約者である彼とはほとんど会ったことがなかったが、手紙を送り合ってそれなりに交流はしてはいたし、記念日にはプレゼントを贈り合う程度には良好な関係を築けていた。


 そこに恋愛感情はない。ただの政略結婚だ。


 それをお互いよく理解していたし、不満もなかった。それは、セオフィラスとて同じだったことだろう。


 ただ、お互いのことはよく知らぬままだった。


 レセリカは王太子妃となるべく厳しい教育を受けてきた。元から表情の変化に乏しい彼女ではあったが、その教育により余計に感情を表に出さなくなっていく。


 いつしかレセリカは冷徹令嬢と呼ばれ、人から恐れられるような存在となってしまった。


 曰く、何を考えているのかわからない。

 曰く、美しすぎるからこそ、無機質な人形のようで恐ろしい。


 ────結婚が嫌で、王太子を殺害してもおかしくはない。


 そもそも、王太子セオフィラスは人格者として人々から好かれていた。

 能力も高く優秀で、誰もがセオフィラスを次期国王として認めていたのだ。


 もしかすると、国王の座を狙う派閥があったかもしれないが、それにしたって殺害方法が残酷極まりない。

 毒で亡くなっているというのに、さらにナイフで刺すなど……よほどの憎悪を感じる。


 ────冷徹令嬢レセリカ・ベッドフォードなら、やるかもしれない。


 そんなこと、欠片も思ったことがないというのに、レセリカは誰にも信じてもらえなかった。


 一体なぜ、セオフィラスは暗殺されてしまったのだろうか。


 一体誰が、彼を殺したのか。


 それらを冷静に考える暇もなく、レセリカは捕まり、無実の罪で処刑までされてしまった。


 恐ろしい断頭台で、鋭い刃がレセリカの首に迫って────




 ハッと目を開ける。全身に汗をかいているのがわかって、レセリカは大きなため息と共に上半身を起こした。


 外はまだ暗く、夜明けまでまだ時間があるようだ。


「また、あの夢……」


 七歳に戻ってやり直し人生を送ってから、もう一年ほど過ぎているというのに、相変わらずレセリカは悪夢を見ていた。


 父オージアスとは和解し、ロミオは頼りになる弟となりつつある。

 婚約者との交流も増えていたし、前の人生では出会わなかった人物が味方になってくれてもいた。


 今の自分は、確実に以前とは違う人生を歩み始めているのだ。


 あの時とは違う。

 ちゃんと良い方に向かっているはずだ。


 そういう実感があるというのに……。


「ううん、これでも夢を見る頻度は減っているもの。不安になっちゃダメ」


 それに、婚約者でもある王太子セオフィラスを暗殺から守るという目的のためにも、過去のことはしっかり覚えておかなくては。


 きっと、油断してはならないということを、夢が教えてくれているのだろう。


 レセリカはそう考えることにした。


「でも……どうせ夢に見るなら、セオフィラス様と楽しく過ごしている時の夢にしてほしいわ」


 あの夢にはセオフィラスの姿こそ出てこないが、凄惨で悲しい結末を迎えた事実をこれでもかと思い知らされる。


 レセリカは次第に、自身の首が落とされることよりも彼の死を告げられた時の方が恐ろしいと感じ始めていた。


 それほど、レセリカの中で彼の存在が大きくなり始めているということなのだが……本人は気付いていない。


 ただ。


「あ……私、夢でもセオフィラス様に会いたいって思っているのかしら……」


 少なからず彼に好意を抱いているという自覚はあるらしい。

 レセリカはじわじわと顔に熱が集まるのを感じた。


 それからしばらくして、何やら考え込んでいたレセリカはそっとベッドから下り、机の引き出しを開けると小さな額に入った絵を取り出した。


 額の中には、微笑むセオフィラスの絵姿が入れられている。

 かなり前に、現王太子がどんな方なのかを知るため貰ったものだ。


 そのため、絵の中のセオフィラスは今よりも幼い姿だった。


「……本物の方が、もっと素敵ね」


 レセリカはジッと絵を見つめた後、ギュッと胸に抱き締めてそのままベッドに向かう。


 それからそっと、枕の下に絵を入れた。


「今度は幸せな夢が見られますように」


 再び横になったレセリカは、ゆっくりと目を瞑ってセオフィラスとの楽しい時間を思い浮かべる。


 そのおかげかはわからないが、その後レセリカは魘されることなくぐっすり眠れているようだ。


 きっと良い夢を見ているのだろう、その寝顔には僅かに笑みが浮かんでいるのであった。


お読みいただきありがとうございます!


書籍情報につきましては下部のカバーイラスト下にある「詳細はこちら!」から(*´﹀`*)

3月7日、もうすぐ発売です!

よろしくお願いしますー!

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― 新着の感想 ―
[一言] おや? 作品名と作者名が同じですぞ? 呼ぶ時、名前が長くなって呼ぶの大変になっちゃう :( ;˙꒳˙;):アワワ
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