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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
陰謀の始まり

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ルールと待機時間


 個人面談の日がやってきた。今週の三年生は午前中で授業が終わり、午後から順番に担任と面談をすることとなっている。待機中は教室で自習だ。時間が来たら面接室に向かい、進路について相談する。だが、人によってかかる時間はマチマチだ。


 そうは言っても、担任があらかじめ時間のかかりそうな生徒、すぐ終わりそうな生徒と分けてスケジュールを組んでいるため、そこまで大幅なズレは起きにくいのだが。


 ちなみに、レセリカの時間は二日目の最後の時間となっている。事前調査のアンケートで一般科希望と記述したため、時間がかかると最後に回されたのだろう。


(進路以外の話をされないといいのだけれど)


 レセリカは進路についての話だけをするつもりだ。だが、担任は水の一族の曲者シィである。何か探りを入れてくる可能性はゼロではなかった。

 むしろ、目的は主にそれだろうとダリアやヒューイは最大限の警戒をしている。今日に限ってはヒューイも調査に向かわず、常にレセリカの近くに控えているつもりだという。


 そもそも、調査対象はシィなのでどちらにしろ近くにいるのだが。


「危険だと判断したら迷わず邪魔に入るからな? な、それでいいだろ? 絶対に姿は現さないからさ!」


 加えて、いざという時には助けに入る気も満々である。レセリカとしては、出来るだけそうならないようにしたいところだ。

 ヒューイの存在を人に知られるようなことは極力避けたいし、ダリアの正体がバレるのも困る。元、とはいえ元素の一族というのはその能力こそが脅威とされているのだから。


「姿を見せなくても、何かアクションを起こせばアクエルの者ならすぐに風の介入を察知しますよ。レセリカ様との繋がりも瞬時にバレます。まぁ、それは私も同じことですが貴方よりは誤魔化しが効きます」

「ぐっ、で、でも。目の前で主がピンチだってのに手を差し伸べないなんてあり得ねーじゃん!」

「そうですね。あり得ません」

「……お前、どっちだよ」


 本人たちもその点については承知の上のようだ。危険性をわかっているのならあまり言う必要はないだろうが、念のための対策は必要かもしれない。


「大丈夫よ。ちゃんと乗り切ってみせるもの。でも、二人が心配してくれているのもわかるわ。だから」


 レセリカは二人を交互に見つめた。


「ルールを決めましょう。万が一、シィ先生が私に触れようとした場合。その時は、助けてもらえる?」

「なるほど。最初から決めてあればミスも減りますね。それでいきましょう」


 ダリアが同意を示し、ヒューイも納得したように頷いた。


「わかった。けどもう一つだけ加えてくれ」


 しかし、ヒューイは指を一本立てて真剣な眼差しを向けてくる。レセリカはその視線を正面から受け止めて続きを待った。


「レセリカの身に危険が迫っているとオレが判断した場合だ。っつーか、その時はダメと言われても勝手に体が動いちまうと思う」


 主を守らなければという本能が働くため、衝動的に動いてしまうのだという。その点についてはダリアも気持ちはわかるというので、そういうものなのかもしれない。


「……ええ。わかったわ。じゃあその時はお願いね、ヒューイ、ダリア」


 こうして、事前の打ち合わせをしっかりした上で面談の日を迎えているというわけだ。


 順番に教室から生徒が出ていき、戻ってくる。そして、レセリカの二人前の生徒が戻ってきた所でレセリカも席を立った。確か、今頃はラティーシャが面談中だったはずだ。


 面談用の部屋の廊下に椅子が置いてあり、レセリカはそこに腰掛けて順番を待つ。ラティーシャの場合、進む進路は貴族科で決まっていることもあるし、そこまで長引くことはないだろう。

 だが、予定の時間になってもラティーシャが出てくることはなく、思いの外時間がかかっているようだった。


(何か相談でもあったのかしら)


 しかし、彼女からそのような話を聞いた覚えはない。それなりに親しくなったとはいえ、心の内に秘めた悩みごとまでは明かしていないだけなのかもしれないが……そんな素振りも見られなかったように思う。


(私が察せなかっただけかもしれないけれど)


 数分程度の誤差なら気にもならないところだが、十分ほどオーバーするとなると少々気になってくる。何せ、担任はシィなのだから疑ってしまうのも無理はないだろう。


(きっとヒューイが見張っているだろうし……何かあったのなら後で教えてくれるわよね)


 実際は何でもないことで時間がかかったという可能性だってあるのだ。あまり気にしすぎて自分の面談に集中出来なくなっては本末転倒になる。レセリカは静かに目を伏せて自分の番を待った。


 それからさらに五分ほどが経過した頃、ようやくラティーシャが退室してきた。ふと顔を上げて彼女を見ると、複雑そうな表情を浮かべていた。困っているとか、悲しそうだとかそういう雰囲気はないのだが、どことなく不機嫌にも見える。


「どうかしたの?」

「ああ、レセリカ様。別に大したことではありませんわ。ただ、少し……進路とは別の質問をされたもので」


 進路とは別の質問? とレセリカが首を傾げた時、室内からシィの呼ぶ声が聞こえてきた。ここでラティーシャと話す時間はないようだ。


「また後で、聞かせてもらえるかしら」

「……それはいくらレセリカ様と言えどお話し出来ませんわ。プライバシーというものがありますもの」


 時間があったところで、ラティーシャに話す意思もなさそうだ。

 気にはなるが個人的な話題に首を突っ込むのもよくない。レセリカは立ち去るラティーシャの背に向かって非礼を詫びてから、扉の方に向き直った。


 さぁ、シィとの面談の時間だ。


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