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一話 夕立と友達5

 ハッとして、俺は顔を上げた。

 雨宮先輩が分厚い本をスクールバッグに詰め込んでいた。


(この人、毎日これ持って登下校してんだよなぁ)


 寝起きということもありぼんやり呆れていると、それは軽々と先輩の手で持ち上げられた。


「まだ寝ているようなら、これで叩き起こすつもりだった」

「恐ろしいこと言わんでください」


 ギョッとして、俺は慌てて立ち上がる。

 空は暗くなっていたが、雨は止んでいた。

 さすがにそろそろ帰らなければ、と俺も鞄を手に取る。


「龍神君」

「竜助です」

「明日は、暇か?」


 俺はドキッとした。

 別に休日の誘いだからそうなったわけではなく、これは彼女のスイッチが入ったということだ。


「暇ならば、明日駅前の『喫茶ひまわり』に八時」

「八時⁉ 早過ぎません?」


 俺が声を上げると、雨宮先輩は白い指先でクイッと黒縁眼鏡を上げた。


「登校時間と差ほど変わらないだろう。嫌なら別に来なくてもいい」

「いっ、行きますよ。どうせ暇ですし」


 いつものように俺が答えると、彼女は満足そうに口角を上げる。


「部室の鍵を頼む。じゃ、また明日」


 さらりと長い黒髪が揺れた。


「ちょっ……待ってくれたって……!」


 俺の言葉は誰も引き留めることもなく、部室の引き戸を閉める音に掻き消されていったのだった。

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