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一話 夕立と友達4

 そう、その子は人間ではない。




 俺が一年ごとに歳を取り、背が伸び、普通という世界を知っていっても、その子が変わることはなかった。

 でも、そんなことはどうでもよかった。



 俺には大切な友達だったのだから……



 夏の夕立の時には雨に濡れ、泥んこになり、大声ではしゃいだ。

 自分からこんなに大きな笑い声がでることをはじめて知った。

 意外とはやく走れることも、負けず嫌いなところがあることも。



 その子が俺に教えてくれた。



 俺が楽しいことはいつまでも続かないと気付き始めた頃。



 突然、その日がやってきてしまった。



 親父の仕事の都合で引っ越すことになってしまったのだ。

 俺は、小学五年生になっていた。

 それでも、夏の夕立は待ち侘びていた。



 だから、親父から引っ越しを聞かされた時は、大泣きをして嫌がった。


「お父さんだけ引っ越せばいいよ! 俺はここに残る!」


 親父は困ったような顔をしながらも、俺を叱ることはなかった。

 それがまた俺には癪に障った。


「なんでお父さんはいつも勝手に決めちゃうんだよ⁉ 俺のこと、いつもは気にしないくせに!」




 俺のことなんて――




 それを口にする前に、背後で雷鳴が轟いた。

 雨が降った。

 大雨だ。


 その子が、いつも通りに。



『竜助、遊ぼうぞ!』



 俺は振り返った。

 視界が揺れていた。


 これは、雨が降っているからか。



『竜助――?』



 俺が……泣いていたからか。




 夕立が、泣いていたからか――

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