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王城のすぐそばの屋敷が、グロブナー卿のいう、家だった。正確には、グロブナー卿の持ち家の一軒、とのことらしい。

持ち家が複数にまたがる、という時点で、リーナたち姉弟の想像を超えている。普通は自分の家は一軒しかない。


「ここは社交の季節に使う、タウンハウスだ。私の息子たち夫婦が主に暮らしている。私は、もうほとんど領地にあるカントリーハウスに引っ込んでいたんだ」


すこし寂しそうに、グロブナー卿はいった。どう返事をしていいのかわからないでいると、卿に促されて、屋敷の中に入った。


「おかえりなさいませ、大旦那様」


屋敷の玄関前で、かっちりとしたお仕着せを着た初老の男性が、慇懃に腰を折った。

彼は、グロブナー卿の後ろに連れられたリーナたちを一瞬見て、それから何事もなかったように荷物を受け取って、玄関を開けた。


真っ直ぐ奥に広い玄関を進むと、その先に艶やかな黒髪の女性が立っていた。20代半ばほどだろうか。滑らかな黒髪を高く結い上げ、白い肌のデコルテを大きく晒した、椿のように赤い唇の若い女性だ。彼女は、驚くほどに華奢で美しかった。

着ている服も仕立てがよく、使用人ではないことは一目瞭然だった。


「あら、おかえりなさいませ、お義父さま。お客様ですか」


「ただいま。ああ、いや。客ではないんだ」


そう言ってから、グロブナー卿は、リーナの背中を押して、こう言った。


「妻と、その弟君だ」


端的な紹介に、女性の顔が、一瞬で驚きに変わる。


「妻……?あぁ、え?妻ですか?」


「そうだ、私の妻になる人だ」


女性はぽかんとした顔をした後、ぎゅっと顔を引き締めて、リーナを慌てて見た。


彼女の目は深い緑色で、グロブナー卿から渡された指輪に象嵌されたエメラルドによく似ていた。内部亀裂の入った、天然物のエメラルド、その輝きが、訝しげにリーナを貫いた。


「そう……そうですか。いままで、そんなお話は聞いたことがありませんでしたが、クロードは知っているんでしょうか」


「知らないな。なにせ、彼女を妻に迎えると決めたのはつい二週間前だ」


グロブナー卿の言葉に、再び女性はぽかんとした。美しい顔がすこし緩んで、近寄りやすい雰囲気に変わる。だが、それも一瞬だった。


「詳しいことは、後で皆に話す。夕餉の変更は?」


「可能ですが……」


「では、イブリンから料理長に、夕餉のメインは鴨に変更と伝えておいてくれ」


鴨は主に慶事があったときによく食べる食材だ。夕餉の席で、リーナたちのことを紹介するつもりなのだろう。


「承知いたしました」


イブリンと呼ばれた女性が、踵を返す。それを最後まで見送る前に、荷物を持った家令が、困ったようにグロブナー卿に聞いた。


「大旦那様、このお荷物はどちらにお運びしましょうか」


グロブナー卿とイブリンの話を聞いて、荷物を運ぶ先は客室ではないかもしれないと思い至ったのだろう。


「ひとまずは客室へ」


そう言われた家令は、表情一つ変えることなく従った。よく躾けられている。


「遅くなったが、リーナ嬢、マークくん、我が家へようこそ」


グロブナー卿は、器用にぱちりとウインクしてみせた。その表情は、久方ぶりに会ってからやっと見た、かつての親しみやすいおじさまの顔だった。



グロブナー卿の一家は、その日、久方ぶりに一堂に会した。全員が揃うのはいつぶりか。

おそらくは三男が亡くなったときが最後だろうとグロブナー卿は思い出していた。


最上座にグロブナー卿が座り、卿の右隣にリーナが座る。反対隣には、卿の一番上の息子が座っていた。

それぞれの席に親族が顔を揃え、不思議そうな顔でリーナと弟のマークを見つめていた。


全員にアペリティフが配られた頃合いで、グロブナー卿が口火を切った。


「我が一族も、こたびの大禍の折、随分不幸に見舞われた。こうしてまた全員と同じ席を囲むことができて嬉しいかぎりだ。そして今度は、新しく我が一族にわたしの妻として迎え入れることになるリーナ・スローン嬢を紹介したい」


グロブナー卿に促され、リーナはこくりと頷いた。


「はじめまして、リーナ・スローンです。どうぞ、弟と共によろしくお願いします。至らないところもあるかと思いますが、ご寛恕いただけたら幸いです」


一息に言い切って、リーナはほうと息を吐いた。

リーナの顔を、場にいる全員が穴が開くほど見つめていた。その中には、ここに来て初めて会った、イブリンの顔もあった。

彼女は、グロブナー卿の左隣の息子のさらに隣に座っていた。座る位置からして、息子の奥方なのだろう。


リーナが挨拶を終えたあと、速やかに食事が開始された。サーブされる料理はどれも上質で、おいしかった。


「父さん」


食事が魚料理にまで進んだ頃合いに、グロブナー卿の息子が話しはじめた。


「彼女を詳しく紹介してもらっても?」


この言葉に、グロブナー卿は鷹揚に頷いた。


「リーナ、こいつが私の息子のクロードだ。隣のが、さっきも会ったな、クロードの妻のイブリンだ」


紹介されて、リーナは軽く会釈をした。それを見て、イブリンが笑う。理由がわからず、リーナは曖昧な微笑みを浮かべた。なんとなく、居心地が悪い。


「私より年下のお義母さまなんて、変な感じね」


イブリンは冷たい感じの声でそう言った。迎え入れたくない、という気持ちがありありと浮かんでいる。

しかし、リーナにもその気持ちがわかる。突然、義理とはいえ父親が、自分より若い女を妻として連れてきたら、どんな顔をしたらいいのかわからない。自分よりも若いのにお義母さまだなんて、おかしいにもほどがある。


「本当にね、『お義母さま』?」


むしろ愉快そうに、クロードがリーナをそう呼んだ。皮肉げに歪んだ口元に、リーナは居た堪れなくなって俯いた。


俯くリーナの様子を、グロブナー卿は心配そうに見ていたが、何をいうこともなく食事に戻った。


針の筵のような食事を終え、リーナは一人、客間でほうと息を吐いた。

喜んで迎え入れてもらえるとは思っていなかったが、人の悪意に触れるのは消耗する。


叩扉の音に返事をすると、眉の下がったグロブナー卿が現れた。


「おじさま」


「疲れていると思うが、いいかな」


リーナは立ち上がって迎え入れようとしたが、卿に手で制された。


「本当は妻ではなく養子として迎え入れたかったんだが、時間がなくてね。ご覧の通り、妻には先立たれているし、結婚という形にしてしまった方が処理が早く済んだんだよ」


あと、三月というところで、名前も知らない男と結婚させられるのに比べれば、はるかにいい。


「重ね重ねですが、ほんとうにありがとうございました。弟と共に、御礼申し上げます、卿」


リーナな深々と頭を下げて感謝を示した。それを見て、グロブナー卿は軽く頷いた。


「それでこの後のことを、話しておこうと思ったんだ。こういうのは、早い方がいいだろう」


グロブナー卿からは、この屋敷を離れて、領地のカントリーハウスに行くことを提案された。


「リーナはここにいたいかい?」


「いえ……その、みなさまにあまり良く思われていないことはわかるので……」


リーナの言葉に、グロブナー卿は眉をひそめた。


「さっきはうまくフォローしてやれなくてすまないね。もう少し、クロードのやつも気にしないかとか思ったんだが」


不満そうにグロブナー卿はつぶやく。勧められて座った椅子の肘掛けを、神経質そうに指で軽く叩いた。


「あいつらは、ほとんど王都暮らしだから、カントリーハウスに行けば、顔を合わせることは少ないさ。向こうで落ち着いてから、また改めて今後のことを相談しよう」


グロブナー卿の方針に口を挟めるはずもない。それに、リーナには不満もなかった。


「カントリーハウスまでは、ここから四日ほどかかる。それまでに、細々したものを揃えよう」


グロブナー卿の領地に行くまでに、リーナたち姉弟は、身の回りのものを揃えることになった。

使用人たちに頼んで、細々したものを揃えてもらい、商人を呼んで、身につけるものを見繕う。向こうで着るための服は、王都で採寸して、出来上がったものを領地に送ってもらえるように手配した。


王都に来てからずっと、人に会う用事のために、リーナはくたくただった。綿のように眠り、翌朝はやっとなんの用事もないことに気づいて、肩から力が抜けた。


「大奥さま」


侍女に呼ばれて、リーナは布団から起き上がった。

服を着替えて、髪を整えてもらってから、食事を摂るために一階の食堂へと降りて行く。


リーナはここの屋敷に来てから、毎朝弟と共に食堂で食事を摂っていた。初日の夜に、グロブナー卿の一族と面した場所で、あまりいい思いはないが、朝早くは誰もいないし、広々していて気持ちがいい。天井が高く、大きな窓から朝日が差し込んでいて清々しいのもいい。

一族の面々は、貴族らしく宵っ張りで朝が遅い。なので、リーナたちが食堂にいても、家族の誰とも、うっかり顔を会わせることはなかった。


リーナとまだ幼いマークが二人で食堂に現れると、使用人が丁寧にもてなしてくれる。

綺麗なグラスに水と牛乳、それから籠いっぱいのパンが、テーブルの上に置かれている。何も言わなければ、朝食のメニューはいつも同じだ。姉弟は特に何も言わずに、粛々と運ばれてくるものを食べた。焼かれたベーコンと、たまご、野菜を煮込んだあたたかいスープ。パンと一緒に食べられるように、ジャムやチーズ、クリームも添えられている。

新鮮な乳製品が食べられて、とてもうれしい。リーナはここに来て一番、それがうれしかった。マークも同じ考えらしく、食事の合間に、小声でチーズとたまごおいしいね、と話してくれた。

普段は気配を消している使用人が、マークがそっと嬉しそうにいうたびに、かすかに微笑むのが見える。マークが使用人には邪険にされていないと分かって、リーナはすこしだけほっとした。


好きなだけ甘い白パンが食べられるので、マークはご機嫌だ。子供の手にはすこし大きいそれをちぎってやっていると、食堂にひとりの男が現れた。


「おや、義母上じゃないか」


その声に、リーナはぎくりと背を強張らせた。グロブナー卿の息子のクロードだ。

彼らからすれば相当な早朝だと思われる時間だが、身だしなみに乱れはなかった。淡い色の金髪はきちんと櫛が通っていて、着ているものも自宅の中だと言うのにとても洒落ている。

嫌味なくらい優雅な足取りで、彼はリーナたちの向かいの席に座った。それから、値踏みするように青紫色の瞳でこちらを見据えた。


「おはようございます」


見据えられて、居心地悪くリーナはかすかに身じろぎした。同時に、クロードとどこか別の場所で会ったことがあったような気がした。記憶の底を、軽く突かれる気配に意識を飛ばしかけたが、クロードの声に我に返った。


「ああ、おはよう。義叔父上にパンをやってるのか。仲がよろしいようで、何よりだ」


あざけるような口調で、クロードはマークを見やった。クロードに見つめられて、マークはかわいそうに、萎縮してしまっていた。


クロードと食事を共にするのはあまりよくないと判断して、リーナは急いで皿の上のものを口に入れた。幸い、食事はほとんど済んでいる。グラスの水を飲み込んで、リーナはマークの手を引いた。


「今日はなにか用事があるのか」


どういうつもりか、退出しようとするリーナに向かってクロードが聞いてくる。


「いえ、今日は特には」


リーナの言葉に、クロードは片眉をひょいと持ち上げた。


「なら、庭に行くといい。うちの庭はよく丹精されていて、陛下もご覧になるほどだ」


クロードの真意が分からず、リーナは困惑しながら、感謝を述べた。


「……ありがとうございます。後ほど、行ってみます」


それきり、クロードが食事を始めたので、リーナはマークと共に食堂を後にした。


リーナはここを出立するための支度が済んでいたが、マークはまだ買い揃えるものがある。

おさなごの集中力は途切れやすいので、ついてくれている侍女が、気を遣ってゆっくりと準備を進めているのだ。

リーナもそれに異論はない。それに、予定が押しているとは言っても一日二日の違いでしかない。

息抜きをする時間が必要だろうと、マークの準備の間は、リーナは屋敷の中で自由に過ごしていいと言われていた。


マークを侍女に預けて、リーナは屋敷の裏手にある庭に来ていた。

クロードの言う通りにするのはなんとなく癪ではあるが、時間はあるし、屋敷の中だけでは行けるところに限界がある。


外に出ても問題ない服装に着替えて、リーナは侍女と共に庭に出た。そろそろ気温が高くなってきていて、日差しが強い。侍女が日傘を差しかけてくれる。


リーナを迎えてくれたのは、むせかえるような薔薇の芳香だった。

初夏の庭を、色とりどりの薔薇が覆っていた。蔓薔薇がアーチを這い、地植えの薔薇が重そうに大きな蕾を枝垂らせている。


ため息の出るような庭は、徹底的に管理された人工的な造形美だ。定規ではかったように画一的で、左右対称。唯一左右対称ではないのが、庭の一区画を取って作られた生垣の迷路だけだ。


いきなり迷路に突入して迷子になるのは遠慮したいので、一通り庭を散策する。

綺麗に整備された庭は、歩きやすく見応えのあるものだった。庭を訪れた客が楽しめるように、意図的に緩急がつけられている。


ちょうど足が疲れた頃合いに、四阿があったので、侍女と共に腰を下ろした。溜め池を一望できるので、見ていて楽しい。水で冷やされた風が吹き抜けるので、薄くかいていた汗も引いて、ちょうどいい。


朝食から少し時間も経っているので、そろそろお茶にするのもどうでしょうか、と侍女に提案されて、リーナは頷いた。

お茶の準備をするために、侍女がそばを離れて行く。ぼんやりしながらそれを見ていると「まぁ、お義母さま」と後ろから声をかけられた。


まさか声をかけられると思っていなかったので、リーナはびくりとそちらを向いた。

立っていたのはグロブナー卿の末の娘だった。


「こんにちは」


彼女は屈託無く微笑んで、リーナに同席の許可を求めた。断る理由も特になく「どうぞ」と返すと、さっさと座ってしまう。


共通の話題もないので、ぼんやりと池を見ていると、末の娘のマリアが、気を使うように話しかけてくれた。


「お聴きしたいことがあるのですが、お義母さまは、その、お義母さまと呼ばれることに、違和感はないのでしょうか」


かなり直球の質問に、リーナはくちごもりながら答えた。


「実を言えば、かなり違和感があります。年上の男性に言われると、かなり、変というか」


「そうですよね」


マリアは当然のように頷いた。


「クロードお兄さまが呼んでいるところを見ると、とても変な感じに見えるんです」


「それは、そうでしょうね……」


自分よりも年下の人間を義母として扱わなくてはいけないのだから、それだけでストレスになってもおかしくない。リーナはやはり、グロブナー卿とともにカントリーハウスに行くことが良いのだという確信を深めた。


「ほんとうは、おじさまは私のことを養女として迎えたかったそうなのです。でも、時間が足りず、仕方なく妻に迎えていただきました」


「そうなのですか」


マリアはそれを聞いて、納得したようだった。それから、口を開いて、ためらい、何度かそれを繰り返してから決心したようにリーナに尋ねた。


「もしそれでしたら、リーナさまは、わたくしのお姉さまになられるはずだったのですね」


「ええ。それに、きっとその方が、ご家族にも受け入れていただきやすかったと思います」


「でしたら、その、リーナさまがお嫌でなければ、お姉さまとお呼びしてもかまいませんか」


マリアが頬を染めながら、リーナにそう聞いた。淡い金の髪と、菫色の瞳を持った美しい顔立ちの少女に言われて、リーナは思わずほうとため息をついてしまった。こんなに美しい少女にお姉さまと慕ってもらえるなんて、ここにきてよかったと思った。


「ええ、マリアさまがよろしければ」


「ありがとうございます、リーナお姉さま」


マリアはリーナよりも一つ年下で、歳の近い姉ができることを、純粋に喜んでくれていた。


「お兄さまたちは、お父さまが自分たちよりも年下の奥方を迎えたのが、すこし気になっているようです」


「普通は気になりますよね。自分よりも若い義母ですもの」


「それもあるのですが、イブリンお義姉さまが、リーナお姉さまを特に気にしていらして」


「イブリンさまが?」


「……イブリンお義姉さまは、こちらに嫁いでから、子供がおできにならないのを、ひどく気に病まれていらっしゃるのです」


「そうですか……」


子供を作るのは、良家の妻に真っ先に求められる仕事だが、こればかりは神からの授かりものだ。運も、両人の相性もある。


「イブリンお義姉さまは、リーナお姉さまが、自分の代わりなのではないかと考えてらっしゃるようなのです」


マリアの言葉に、リーナは飛び上がるほど驚いた。


「まさか!わたしは、ここにくるまでおじさまのご一家のことを何も知らずに来たんです。それに、妻に代わりなどいませんし、もしいたとしても、それは父親が用意するようなものでもないでしょう」


「ええ、それはもちろん。ですが、よほどイブリンお義姉さまは思い詰めてらっしゃるようで、クロードお兄さまに、リーナお姉さまに会わないようにとお話ししたらしいのです」


それを聞いて、リーナは天を仰いだ。今朝方、クロードに会ったばかりだ。これをイブリンに知られたとして、苦情が来るのかもしれないと思うと気が滅入る。


「イブリンお義姉さまは、思い詰めすぎなのですわ。夫婦仲が悪いようでもないのですから、ゆっくりと構えていればいいのにと、思わずにいられません。クロードお兄さまだって、家族なんですから、好きな時に、好きなようにお会いすればいいと思います」


「でも、いたずらにクロードさまご夫婦をかき回すのもよくありません。私は、おじさまと一緒にカントリーハウスに行くつもりなので、これ以上、イブリンさまがお気に病まれないことを願います」


「まぁ、そうなのですか」


マリアはリーナの言葉を聞いて残念そうな顔をした。


「歳の近いお姉さまができると思って、うれしかったのですが、リーナお姉さまはあまりこちらに長居なさらないのですね」


「はい、グロブナー卿のご家族にご心配をおかけするつもりはありません。馴染みのない人間に義母としていられると、みなさまの迷惑になってしまうでしょうから」


「そんなことはありませんが、リーナお姉さまのお心のままに過ごしていただければと思いますわ」


マリアはそう言ってから、残念そうに微笑んだ。


「お姉さまをお友達にご紹介できると思って、お手紙を出してしまったのです。短い間でも、マリアのお相手をしていただけませんか?」


美しい義娘のおねだりに、リーナの心はぐらぐらと揺れた。


「と……時々、なら……」


リーナの言葉に、マリアが嬉しそうに微笑む。

そのタイミングで、侍女たちがお茶の用意を持って四阿に現れたので、話は打ち切りになった。




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