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人生初の兄への反抗

作者: 崔

初めての作品ですが。


よろしくお願いします。

 

 僕の名前は、鈴木 三郎。21歳で、高校を卒業して直ぐに上京し都内にある会社にシステムエンジニアとして勤めています。

 容姿は、普通です。何処にでも居るような凡人です。

 そんな僕には、二人の兄がいます。


 長男は、一樹。25歳で、大学卒業後は、地元にある車関係の会社で営業をしている。

 身長は180㎝位で容姿端麗、バスケが得意。高校生までは、成績優秀でした。女性にモテるのですよ……羨ましい……

 僕は169㎝で、後1㎝は欲しかったよ。


 次男は、勇二。23歳で、専門学校卒業後に、一樹兄と会社は違うが地元で車関係のエンジニアをしています。

 勇二兄は、僕より身長は低く、160㎝ですが容姿端麗です。

 一樹兄が爽やかイケメンなら、勇二兄はヤンチャなイケメンと言えば良いのですかね。直ぐ手がでるのが欠点ですかね。

 幼少期から、よく弄られましたよ……可愛がってくれるのは嬉しいのですが……トホホ……


 僕は、幼少期に同級生から苛められていました。

 当時は、怯えて泣いたりしていましたが……

 助けてくれたのは、一樹兄、勇二兄とオマケの3人です。

 だから、僕にとって2人の兄は、ヒーローの様な憧れなのです! その為に、勉強も頑張りましたし体力もつけました。少しでも尊敬する2人の兄みたいになりたくて。


 只! これだけは言いたいのです。

 何故、僕だけ容姿が普通なんですか! せめて名前だけでも、格好いいのにしてくれて良いじゃないですか!

 これだけは、親に抗議しましたよ。ですが名付けは、祖母なので仕方ないです。怒ったら怖いですからね! 牛小屋、コワイ……



 まぁ、それは捨て置き。



 本日は、一樹兄の結婚式前日で地元に帰って来てます。


 今は、準備のため近所の家に午前中からお邪魔しています。

 色々準備もあるので、もっと早く帰ってきたかったのですが……仕事が忙しく、前日にしか帰れませんでした……

 あの、上司め~~! いつか痛い目に会わせてあげますからね!


「サブロー、集中」


 おっと、いけませんね。今は明日の為に、やることがあるのですから。


「すいません。ちょっと気が抜けていました」


「どうせ、嫌味な上司の事考えてたってとこ?」


 何故それを!!


「顔に書いてる!」


 ぐぬぬ……ドヤ顔がムカつきますが……仕方ありません。この人とは、付き合いは長いのでバレてしまうのでしょう。


 先程から、僕と話をしているのは、今お邪魔しているお家の娘さんです。

 名前は、高坂 麻衣さん。一樹兄と同い年で幼馴染みですね。

 容姿は、黒髪ロングをポニーテールにして綺麗な顔をしているのです。趣味はロックバンドで、演奏する側ですよ。しかも! ギター&ボーカルって格好いいですよね?


 職業は、専門学校卒業後に地元で、美容師をしていました。

 ですが、僕の上京で何故か、麻衣さんも着いてきました。

 麻衣さんは、仕事の腕は確かで、上京しても直ぐ同職に就くことが出来ました。

 勿論、上京してもバンドはしていますよ。僕もよくライブハウスに行きます。強制ですからね……

 この人、仕事と趣味の時はとても良い笑顔をするのに、普段は無表情なんですよ! そんな顔で「ライブするから来い」と言われたら断れませんよ。怖いんですから……

 プライベートでも笑顔でいれば? と聞いたのですよ……そしたら「面倒」だって。


 こんな麻衣さんですが、僕が苛めにあっていた頃、兄達と共に助けてくれたオマケです。

 感謝はしていますよ。本当です。ですが、勇二兄以上に相手を追い込んでいたので……思い出したら、背中に嫌な汗が……


「サブロー」


「な、なんです? 麻衣さん」


 いきなり声を掛けないで下さい。焦って噛んでしまったではないですか。

 麻衣さんは、身長が僕より4㎝高い。今は立った状態で、明日の準備をしているのです。

 ですから、見下ろす感じで此方を見つめるの止めてください。

 何て思ってると……


「明日、カズ達喜んでくれると良いね」


 そう言い微笑みます。ドキッとしたのは内緒ですよ!


「今、ドキッとした?」


 今度は、嫌味な笑顔で聞いてきます。


「す、するわけないじゃないですか!」


 本当! こういうのがなければ良いのですがね。

 僕のトキメキを返してください!



 僕は、準備を終え。麻衣さんの家から実家へと帰ります。

 時刻は18時を越えていたので、足早に行きましょう。


 19時になり実家にて。食事をしながら、直接会うのは初めてですが新婦さんと、その御両親や弟さんを紹介されました。

 僕が遠方に、住んでいますから中々会う機会がありませんからね。電話でのやり取りは、したことはあります。


 新婦さんは、綺麗でとても優しく気さくな人です。電話でのやり取りもあるので、僕とも直ぐに仲良くなってくれて、嬉しくなりつい「義姉さん」と呼んでしまいました。うっかりです。


 でも「なに? サブちゃん」と満面の笑顔で返してくれました。

 一樹兄には一瞬、睨まれましたが。そんなことは知りません。義姉なのですから親睦を深めてもよいではないですか。只でさえ仕事が忙しく、中々地元に帰られないのですからね。


 義姉さんの弟さんは、とても容姿も良く。義姉さんに似ていて「じゃあ! 俺もサブ君って呼んで良い?」と聞いてくれて速攻で「OKです!」と言ってしまいました。

 弟さんは、武さんと言う名前だそうです。勇二兄と同い年らしくとても仲が良い感じでした。

 何故か? それは勇二兄と、武さんで僕をいじるからです。僕は、オモチャではありません。


「まったく~。止めて欲しいですね! 特に、勇二兄はいつまで僕の事を子供扱いするのですか?」


「良いじゃねぇか。それぐらい! 俺にとっては、サブは大人になっても可愛い弟なんだよ!」


「フン! そんなこと言っても嬉しくもなんともありません」


 と背を向けます。決して嬉しいからとかではありません。断じて恥ずかしいとかでもありません。


「あら? サブちゃん照れてるの? 耳が真っ赤よ」


「姉さん、本当だね!」


 うっ! 義姉さんと、武さんに指摘されました……


「サブは、昔から変わらないな。嬉しくなると耳が赤くなるの」


 勇二兄さん! 余計なこと言わないで下さい。

 この思いよ届け! と必死に勇二兄さんを睨みます。

 

「そんな可愛い顔して、睨むなよ! プッ」


「フフフ、サブちゃんは可愛いわね」


「アハハ! サブ君、腹が痛いからこれ以上は……アハハハ!」


 と、こんな感じで三人はいじってきました。

 両親や義両親? もちろん笑ってますよ。一人だけ除いては……


「猿は不細工だろ」


 一樹兄は、昔から僕の事を「猿」と呼びます。

 まあ耳が、他人より大きいのでしかたありませんが。


「一樹さん……」


 僕としては慣れた事です。ですから義姉さん達もそんな悲しい顔をしないで下さい。祝いの前日ですから空気も壊したくありません。

 例え、一樹兄が悪意があってもです。

 だから今にも怒りそうな、勇二兄を押さえるためにも僕は、耐えてこの場を納めましょう。明日の為に。


「一樹兄の言うとおり。不細工ですが、勇二兄より背は高いので! チビな勇二兄よりはね」


 満面の笑顔で言ってやりました。嫌みではありませんよ? 昔から良くこうやっていじり返すのです。


 一瞬、場は静まり勇二兄も怒りを忘れ口を開け、間抜け面していましたが、僕の意図を理解したのか……


「おい~~! 兄貴に対してチビとは何だよ! 弟のくせに~~」


 笑いながら僕の頭をくしゃくしゃとなで回します。

 そこまで求めてませんよ? また、耳が暑くなってきました。

 ってか! 止めてください。勇二兄は、力が強いですから。痛いんですよ! もしかして……チビって言ったの根に持ってます? 宜しい! 我慢しましょう。

 それを観て皆が笑ってくれました。一樹兄は除いてですが……

 そこで、パンパンと音が聞こえました。


「ハイ! 今日はそこまで。明日は一樹と幸さんの結婚式ですからね」


 母の言葉で、その場は御開きになりました。

 さすが母です。こういう時はしっかり場を納めてくれます。酒飲んで頼りにならない父より頼りになる確りした母親です。





 結婚式は、何事もなく進みましたよ。


 まあ、お互いの親戚紹介の場で、父が緊張しすぎて僕の事を「え、えっと、お前誰だっけ?」と言ったとき、母が上手くフォローしてくれて助かりました。でも笑われましたけどね!

 父よ、どこまで頼りにならないんだ。


 余興で、僕と勇二兄、麻衣さん。そして僕たちの従兄弟の姉、合計4人で演奏をしました。

 そう。準備とは、バンドを組むための練習です。

 苦労したんですよ……僕と麻衣さんは、地元にいませんから4人揃っての練習は前日のみですからね。

 それ以外はビデオ通話でやるしかないんです。

 たった2、3回で音を合わせるとか、すごいなぁと思いましたね。


 因みに、従兄弟の姉はキーボード。僕はドラムです。

 勿論、ギター&ボーカルは、麻衣さんです。だって上手いんですよ? 任せるしかないじゃないですか。

 勇二兄は、ベースを任せました。

 本番前に1回音合わせに練習したのですが……勇二兄やってくれましたよ……緊張して、ベースを落とすし、アンプケーブルは壊すしで焦りましたよ。

 幸いベースは壊れておらず、ケーブルも予備がありましたので大丈夫でしたよ。

 無事に演奏もできて、新郎新婦、会場の皆さん満足していたので良かったです。


 余談ですが、演奏後の控え室で、麻衣さんに必死で土下座をした勇二兄の姿があったらしいのですが……知りませんよ。


 式は、笑いあり涙ありのものになり、一樹兄夫婦も幸せそうでした。




 二次会で事件が起こるまでは……



 二次会は、貸し切りの居酒屋です。


 案内されたのは、座敷でした。4人テーブルが6個ありそれが川の字になるように、2つずつ等間隔に並んでます。

 一樹兄夫婦は一番奥に座りそのテーブルには、一樹兄さん夫婦の友人達が座っていて話し声が聞こえる位置、真横のテーブルに勇二兄さん、僕、武さんと父の弟である叔父さんの4人で座り、楽しくお酒を飲んでいました。


 途中、叔父が別の席へと行き。入れ替わるように、麻衣さんが僕の横に座ってきました。


「勇二、やらかしたね」


「ま、麻衣ちゃん~、ごめんよ! だから無表情で睨まないでくれよ!」


「アハハ、勇二。あれは駄目でしょ? 思い出したら……また、プフ」


「武~! あとで覚えてろよ~」


「武さん。覚えてなくて良いですよ。悪いのは、ぜ・ん・ぶ! 勇二兄なのです!」


「そうだぞ~! サブローもっといえ~~」


 と言いながら、麻衣さんは僕の腕にもたれ掛かってきます。困るんですよ……


「ちょっと! 麻衣さん! 近いですよ……む、む、む」


 大きな胸が腕に当たってるんです! とは言えません。恥ずかしいではないですか……それにドキドキするので止めてください。


「お~や~? サブローもしかして、い―――「ダン!!」――― っ!?」


 いきなり大きな音がしたので、発信源を観ると、一樹兄さんがテーブルに手を叩きつけていたのです。

 何事かと皆の視線が一樹兄さんの方へと集中します。

 すると怒り心頭の一樹兄さんが義姉さんに怒鳴っていたのです。

 義姉さんは俯いていましたが泣いているのは分かりました。

 側で女性の方が、義姉さんの背中をさすっていました。

 その方は、義姉さんの頬にハンカチを当てていたのですから。

 

 僕は何事か解りませんでした。頭が真っ白です。

 何故、結婚式当日にこんなことが起きているのか。

 何故?


「おい! 一樹! 結婚指輪をテーブルに叩きつけるとはどういうことだ?」


 頭が真っ白の中で、叔父さんの声が響きました。

 今叔父は、なんと言いました? 結婚指輪を叩きつけた?


「クソ兄貴!! 皆が祝福しくれてるのに何してるんだ!」


「勇二、落ち着いて」


 今にも殴りそうな勇二兄さんを、武さんが押さえていますがその目は怒りに満ちていました。


「勇二は黙れ。これは夫婦の問題だ! 外野は黙っていろ!」


「外野だと? クソ兄貴の為に皆集まってるんだろうが!」


「訳がわからないけど、カズが幸さんを泣かせてるのはわかった! 勇二! 手を貸す!」


「麻衣さんも落ち着いてください!」


「でも……」


「麻衣さんの気持ちもわかります! 僕も義姉さんのあんな姿みたくありません!」


「だったら……」


「だからです! 兄さん達や叔父さんは、いつ殴り合いになってもおかしくありません! そこに麻衣さんまで、加わったら余計に事態がややこしくなります。ここは冷静にいきましょう?」


「う~ん……じゃあ。私は何すれば良い?」


「取り敢えず、熱い御絞りを店員さんから貰ってきてください! 早めにです! その間に僕は訳を聞いてみます!」


「OK! 直ぐ戻ってくる」


 先程までの怒気は、どこへやら……

 麻衣さんは、悪いことを考えているような笑顔で、この場を離れます。本当! この人は……頼りになりますね!



 それにしても、いけませんね!


 この兄2人は、水と油みたいに仲が良くありません。

 昔は、良かったのです。でもあの日を境に……


 それ以降。一樹兄はプライドが高くなり、勇二兄や僕を見下し始めました。

 そして、勇二兄はすぐ怒りやすく、2人は度々喧嘩をして、一樹兄が、救急車に厄介になったことがあります。


 故に、血の結婚式にしない為に僕が何とかしなくては!

 今の僕は、苛めに怯え、泣いていた頃とは違うのです。

 2人の様に頼れる男になるために頑張ってきたんだ。

 2人と肩を並べるように……麻衣さんを守れる男になるように!!


 まず何故、こうなったかを知る為に、近くにいた親戚に聴きます。因みに親たちは三次会の為、実家で準備をしているのでこの場に居るのは年若い親戚と仲が良い叔父さん、一樹兄夫婦の友人のみ。


 頼りの叔父さんは、勇二兄さんと一緒になって一樹兄さんに怒鳴っていますがね。

 叔父さんは、2人をいさめてくださいよ! 本当に、ここぞという時に頼りになりません。

 友人の方達は、いさめるどころか静まっています。頼りになりませんね。


 こうなった訳は、酔いもあるのでしょうがどうやら二次会に来る途中、義姉さんが男の友人と仲良く話していたのが癇に障ったとの事。

 溜め息しか出ません。

 まったくこの長男は。こんな小さい事で、大事な日を駄目にしようとしているのか。


 こんな事で!? 優しく、誰よりも一樹兄の事を思っている義姉さんを泣かしているのか。


「大体、昨日から気にくわなかったんだ! お前は、俺の嫁だぞ! それなのに、猿が可愛いだと? あんな不細工のどこが良いのかこの俺には、わからないね!!」


 はぁ?

 こいつは何を言っているんですか?


「てめぇーー!! サブは関係ねぇだろうが!」


 勇二兄さんが顔真っ赤でですよ!


「サブローがどんだけ、カズの事を思っているか知りもしないでーー!!」


 麻衣さんもお帰りなさい。でも落ち着いて! 例の物は? ありがとうございます。


「一樹いい加減にしないか!」


 叔父さんも良い年なんですから、落ち着いて下さいよ。血圧上がりますよ。


「知るかよ!! 知りたくもないわ! どいつもこいつも、猿、猿って、煩いんだよ! そんなに猿が良いならお前とは、り――――「ドンッ!!」―――― ッつ!!」


 それ以上は、言わせません。

 左手でテーブルを叩き、右手で先程、麻衣さんから頂いた熱々の御絞りを一樹兄さんの顔に投げます。コントロールは大丈夫です。

 見事に当たりましたから。顔に!


「ッ! 何しやがる何処のどいつだ!!」


「僕ですよ。一樹兄」


 僕の我慢も限界です。この際ですので言いたいことは言いましょう。ハッキリとね!


 僕の言葉で、場は静まり視線を集めます。

 僕は立ち上がり一樹兄さんの目を観つめながら対峙します。


「猿の分際で、長男に歯向かうって言うのか?」


 怒鳴りながら言いますが……上司の怒鳴りに比べればこんなもの怖くないですよ。僕は、昔の僕ではありません。今の貴方に怯える程弱くはないのですよ。


「はぁ~。こんな情けない男だとは……昔、貴方に憧れていた自分を殴りたいですよ……」


「情けないだと? 貴様~」


「えぇ!!! 情けありませんよ! 恥ずかしい!!」


 おっと!大音声でいったものですから皆さん驚いています。


「な、何だと……」


 おや? 一樹兄さんもちょっと引いてますね。


「大体、この様な素晴らしい日に、結婚指輪を叩きつけるとは……バカかあんたは!!!」


「お、お、おい、サブ。お、落ち着け……麻衣ちゃんも止めてくれよ」


「やだ! サブロー、云いたいことは云っちゃえ!」


 勇二兄さんが慌ててそう言いますが止まりませんよ。

 麻衣さんも分かってますね!


「そもそも、義理の弟に可愛いと言ったくらいで嫉妬するのがおかしい! 器が小さすぎんだろうが! 長男ならもっとでっかい器を持てよ!! プライドばかり大きくしやがって!!」


 僕は、喋りながら一樹兄に近づきます。

 皆さん道を開けてくれるので感謝です。


「僕が気にくわないなら面と向かって云えよ!! でも、今じゃないだろうが!? 今日じゃないだろが!? 時と場所を考えろよ!!」


 喋っていたらあっという間に一樹兄さんの前に立ちます。間にはテーブルがありますが。


 取り敢えず呆けているこのバカ兄貴の胸ぐらを掴み目線が会うぐらい持ち上げます。


「今日は、なんの日だ?」


「お、俺の結婚式……」


「バカか!! アンタと義姉さんの結婚式だろが!! 皆2人を祝うために集まってるんだろうが!! それを台無しにすんじゃねぇよ!」


「……」


「いつまでも自分中心に考えるのやめろよ! あの日、事故にあってからずっと、義姉さんはアンタを支えてきたんだろうが! 大好きだったバスケができなくなったのは、悔しいだろう――「お前に! 何が……」―― わかんないよ。その気持ちは! でも、一樹兄が辛いときにずっと側に義姉さんが居たんだろ?


 そんな義姉さんっていう素敵な人がお嫁に来てくれたんだ。アンタも義姉さんの事をもっと大事にしろよ!?」


「……」


「黙ってねぇで、なにか言えよ!」


「……したい……」


「はぁ? 聞こえねぇ、もっとはっきり答えろや!! それでも男か? ……僕の尊敬している男はこんなじゃない!!!」


「大事にしたいに決まってるだろ!」


「だったら自分の惚れた女ぐらい守れようようにしろよ! 分かったか!?」


「あぁ……」


「声が小さい!」


「分かった!」


「分かれば宜しい! ……ごめんね」


「三郎……お前……」


 と言うと、僕は兄さんを離し義姉さんに向き直り頭を下げながら……


「こんな兄でごめんなさい……でも……それでも……義姉さんのことを……誰よりも大事に思っているのは本当だと思います」


 僕は土下座をし、誠心誠意謝ります。


「僕が……言えたことでないです……でも……それでも……がずぎにいさんは……」


 そこで、左側から頭を撫でられます。誰ですか? 邪魔しないで下さい! 今僕は、一生懸命。一樹兄の良いとこを伝えたい所なのに。


「ったく! 立派になったと思ったら、肝心なとこで……泣き虫は変わらねぇな」


「サブローは頑張った! 怒りに任せて、殴ろうとしたバカ勇二よりも」


 今度は、麻衣さんが右側に座って、僕の頭を撫でます。だから僕は、もう子供ではありませよ!


「麻衣ちゃんも手を貸すって……ったく! 幸さん、すまん!  こんな大事な日にバカなことするようなクソ兄貴だが、根は良い奴なんだ!」


 ゴンッ!!


 左をチラ見すると、勇二兄が土下座していますよ。

 音がするぐらいです。痛そうだなぁ~

 勇二兄、頭大丈夫? バカがもっとバカになりますよ?

 そんな事を考えていると……


「サブちゃん、勇二くん。頭をあげて」


 僕は、恐る恐る顔を上げ義姉さんの顔を観ます。その顔は、涙で眼があかくなっていますが、慈愛の籠った笑顔です。


「サブちゃん、勇二君ありがとう。特に、サブちゃんが怒ってくれたおかげでちょっとスッキリしたのよ! それにサブちゃんや勇二君が謝る事でもないしね! ……麻衣さん、サブちゃんをお願い」


「OK! 任せられた!」


 優しい笑顔で答えてくれその直後、テーブルにある指輪を取り兄へと向かい合います。

 僕は、何故か麻衣さんに抱き締められています。


「一樹さん!!」


 これまた大音声で、僕はビックリです! 何せ一樹兄さんが肩をビクッとさせるくらいですから。

 

「一樹さん、正座!!」


「ハイ!」


 義姉さんの言葉には、力がこもっており誰もが従いそうです。

 正座した直後、指輪を持っていない右手を思いきり振り……


 バチーン!!


 大きな音と共に一樹兄さんの顔が横に揺れます。左頬を真っ赤にして……


「これでスッキリ!! で? 一樹さん、私に言うことは?」


 義姉さんの顔は笑顔ですが眼が笑っていません。怖いです。


「す、すいませんでした!!」


 一樹兄さんは、勢い良く土下座をしています。必死です。

 僕も内心土下座したいぐらいです。チビったのは内緒です!!


「なら良し! サブちゃんや勇二君に免じて今回は許しますけど……次はないから!」


 と言いながら一樹兄さんの左手に指輪をはめ直します。

 義姉さんは、器がデカいです!

 もう、そのまま一樹兄は、義姉さんの尻に敷かれてください。

 その方が二人は、幸せになると思います。



 その後、三次会の場である実家へと全員移動。勇二兄さんと叔父さん、武さんの尽力で、笑いのある飲み会になりましたよ。

 勿論、僕も頑張ろうとしましたが。麻衣さんが離してくれません!

 皆さんも、何でそんな生暖かい目で観るのです?

 僕は腫れ物扱いですか?

 えっ? 祖母が動くなって? それでは仕方ありませんね。

 祖母に怒られるのは怖いので、大人しくします。



 でも麻衣さん? もう少し離れてください! 決して嫌ではありませんよ? むしろ……

 ただですね? 胸が……背中に当たってます……


「当ててます……」


 照れるなら、言わないで下さい!!



叔父「勇二……三郎はキレると、婆さんそっくりだぞ」


勇二「それは、思った。マジでキレると怖いって」


サブ「どうかしました?」


二人「「いえ! なんでもありません!」」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普段は穏やかな三郎の感情の変化の表現が良く分かります。 また短い中に過去のそれぞれの事情がちゃんと描かれていて、しっかりと腑に落ちますね。 [一言] 初投稿お疲れ様でした! プライドの…
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