愛の形
ねえ。
私のちょっと変わった旦那様の話をしましょう。
今、思い出しても笑っちゃうわ。
あの人、全財産を開示して、教会で挙げる式でどれくらい使うかは任せるって言ったのよ?しかも、至極当然と言う様子で。
私も若かったわよね。戸惑ったわよ。
「あの…。私が内容を決めるようにおっしゃってますの??」
「そうだ。」
軽く目眩がするかと思った。
この方、私の事をどう思っているのかしら?なんて。
「男性のご意見をお伺いする方がいいと思うのですが…。リオン様とか。」
私の返答に、それもそうか、という様子で、一言、わかったと返答があった。
その後、リオン様に相談?した旦那様は、リオン様から、レイローズ様が適任だと言われてレイローズ様の所に行き、小一時間、説教を受けて、ほとほと参ったという顔で、翌日、私の所に現れた。
「妻となる人への贈り物を放棄するような言動をしてしまい、申し訳ない。」
そうして、結婚式の贈り物は、旦那様が選んで下さる事となった。
が。
やっぱり、変わっていた。
通常、一人掛けの装飾に凝った椅子を贈るのに、横になれるほど大きな椅子だったのだ。
本人曰く、疲れた時にすぐ横になれるように、との事。
私、病弱ではないのだけれど。
どう言う事かしら?って思ってたら、暫く寝込んだというお義父様の話から、どうも実はか弱い?と思われていたらしい。
しかも、通常、沢山の宝石で飾り立てられる式では、意外と軽くて。装飾は少ないなと、思っていたのだけれど。
贈られた宝石は希少品ばかりで。驚くばかりだった。物量でなく、価値で勝負という所か?と、思ったが、後日、ドレス用の布が山ほど届けられた。
「身に着けないような物は邪魔になるだろう?」
宝石に対してはそう言い放ち。(女性のお洒落を全く理解していない)
旦那様から貰った物を極力取り入れてドレスを選ぶようになり。すると、仲の良い夫婦と思われて、一段と脚光を浴び。
世間からはどんなにお熱い夫婦なのかと思われていた。
が、ここだけの話、旦那様は、家ではほとんど笑わない。皆が考えるような、にこやかな笑顔は、そこにはない。
幼少期に受けた幽閉の影響で、元々笑わないのだと、結婚してから初めて知った。公衆の面前で表情筋をどう動かせば笑顔に見えるのか、練習して身につけ、取り繕っていると。
じゃあ、無理して笑わないでいいわ、って言ってから、一切笑わなくなった。
嫌な時に、嫌な表情はするので、(たとえば、とっても口に合わないものを食べてしまった時は、子供みたいに眉を寄せているのを内心おかしく思っていて。)無表情は機嫌がいいのだと思っている。
静かな時間。
穏やかな時間。
そんな中、旦那様が時折、夢でうなされている事に気が付いた。そっと手を握ると、握り返されて。しばらくして、穏やかな寝息が聞こえる。
結婚して、二年後に、私たちは、双子の娘を授かった。
出産時に、双子で時間がかかり、出血量が多すぎて意識が朦朧となってしまった。何とか、産み落として、意識を手放したのだけれど。起きたら旦那様が、涙目で私の手を握っていた。
「すまない。すまない。」と、何度も謝る旦那様の頭を。私は手を伸ばして、そっと撫でたのだった。
家は賑やかになり。子育てをしていると、あっという間に時が過ぎた。
徐々に、家族になっていく。
旦那様の選んだ、結婚式の大きな椅子は正解だったと思う。
疲れたら、すぐに休憩出来るし。横に並んで座っていたら、いつの間にか旦那様に寄りかかって寝ていたこともあった。もちろん、逆もある。重たいんだけれど…。
「ルーク」
そう呼ぶと、無表情のまま、旦那様が振り返る。その態度は相変わらずで、私はフフッと笑って、背伸びをして旦那様の首に腕を回す。
「何か、いいことがあった?」
静かに、尋ねる旦那様に私は笑いかける。
「あったわ。今日は、貴方が一時間も早く帰ってきたもの。」
笑わない旦那様が、ほんのちょっと目を細めてから私を抱きしめ、優しく頭を撫でた。
長らく放置状態だった…。申し訳ありません。終わりは決まっていたのに、どこまで書くか、悩んでもいたんです。
本当は、もっと短く仕上げるつもりの話だったので。
ハッピーエンドと銘打ったものの。幸せの形は、さまざまなので。甘々を期待していた方、すみません。どうしても、キャラが許してくれませんでした。
公私共にバタバタしておりました。
正直、まだ忙しいのですが。
まあ、なんとか。
あと、一話で完結します。
総括して。この物語全体の後日談的なものです。