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最終話

「熊倉さん、なんでここが分かったんですか? 志穂に聞いたんですか?」

「いや、子供の頃から知っていたよ。君の親に感謝されてね」

「えっ?」

「迷子の頃に比べたら私よりすっかり強くなったな少年」

 俺はその時にいつかみた過去の夢を思い出す。

「そうか……あの時のお姉さんは……熊倉さんだったのか」

 なんとなくだが、親しみがあった気がした。

 そうか、この人が俺をこの世界に連れて行ってくれたんだ。

「君はカルロを倒せた。プロゲーマーになれず諦めて公務員になった私にできないことをした。カルロに勝てた時点で君はもう私を超えているよ」

 それを言いに朝まで待っててくれたのか。

「これから仕事なんだ。それじゃあね沖田君」

「熊倉さん」

「なんだい?」

「俺強くなります。これからも」

 俺がそう言うと、熊倉さんは今まで見せたことのない素敵な笑顔をくれた。

 そして何言わずに立ち去った。

「ありがとう熊倉さん」

 俺はいなくなった熊倉さんの歩いていた方角に頭を下げた。



 その後で日曜日になり、俺はスマホで志穂を公園に呼び出して、貸しボートに一緒に乗った。

 志穂は何を言うのか分かっているのか、顔を赤らめていた。

 俺は静かにそして強く穏やかに話した。

「ありがとう。あの時の俺の告白をフッてくれたから、おかげで熱中できた。本気になれた」

「うん、今の沖田君は私の想像してた時よりずっとカッコよくなったよ」

「改めて志穂、今度は本気になれる。君のことが知りたい」

 俺は告白した。

「君が好きだ」

 そうして志穂は俺を見た。

 良い顔だった。

「私も沖田くんのような熱中できるものを見つけるよ。君のことが今は凄く好き」

「俺も今の俺と俺のために頑張ってくれた志穂が好きだよ。今度は一緒に志穂の本気を探そう」

「うん、そうだね。ありがとう、今度は私から頑張ってみる」

 そうしてボートに降りて、手をつないで引っ張った時に俺は志穂にキスをした。



 それから一ヶ月が経った。

 あれからアドアーズは人が多くなって、毎日俺が来るといろんな人から対戦を頼まれるようになった。

 店長らしい店員だった人はやっぱり母さんの同級生で店長だった松田さんという名前の人だった。

「君のおかげで大繁盛だよ。さあ、今日も挑戦者がたくさん来たよ」

 俺は慣れない中で多くの観客に囲まれ、次はオレだオレだと大騒ぎしている人達と対戦している。

 そんな中、観客たちを押しのけて現れたのは熊倉さんだった。

「自分も沖田君の姿を見て、すっかり格ゲー熱が目覚めてしまった。あれから君なんて目じゃないくらい修行したんだ、世界トップ、勝負しよう!」

 ゼルダが、熊倉さんが俺に対戦を申し込んだ。

「いいですよ。やりましょう!」

「イチゴタイショウ」

 聞き覚えのある声の方向を見ると志穂とカルロがいた。

「コンド ハ ワタシ ガ チャレンジャー ダ。 クマクラ ノ アト デ ショウブ シロ」

「沖田君、私も本気を見つけるために熊倉さんと同じ公務員目指してみるよ。対戦終わったら一緒に勉強会しよう!」

「わかったぜ、二人共。まずは俺と熊倉さんの対戦を見てろよ!」

 格闘ゲームはルールがあるようでない。

 対戦するのもしないのも自由だ。

 今回は大会という物差しで強者を決めただけのことだ。

 格闘ゲームを誰のためでもない自分のために遊んで真剣になってきた。

 俺は格闘ゲームを対戦を心から愛している。

「勝負だっ! 沖田君っ!」

「いきますよっ! 熊倉さん!」

 一ラウンド目が始まる。

 そう、今ここにあるすべてが好きだ。

 何かに本気になれなかった。

 だけど俺は今ゲームに本気になれる。

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