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第四十三話

 俺は景色を見ずに目を閉じて、両手を握り、集中して様々な対戦のイメージをしていた。

 志穂はライブ配信で見ずに、結果だけを授業の後で見ると言っていたので学校にいる。

 長い一日が始まると、俺は大会の会場で待っているチャンピオンのカルロの姿を想像しながらタクシーに揺られてそう思った。



 会場は関東の大学で行われるようで、お客はカードの裏の情報によれば、全員体育倉庫に集められているらしい。

 会場に着くと俺はスタッフの人にカードを渡して、そのまま案内されて体育館にある大会と野試合で使われる2台のゲーム筐体のある体育館を抜けて、大学の授業などで使われる大きな教室の選手控室に入った。

 俺が入ると各地の代表が俺を見た。

 そして俺も彼らを見て、そして視線を外し、トイレに入ってドアを閉めて、カルロのことを考えた。

 俺にはわかっている。

 敵はカルロのみだということを理解している。

 長い間トイレで待っていると、スマホが振動し、出てみるとスタッフに呼ばれていたらしく、ゆっくりとトイレから出た。

 いよいよ始まる。



 会場に着くと選手用の椅子と真ん中にある大画面と二台のゲーム筐体が並べられていた。

 どうやら試合はトーナメント制で優勝者がカルロに挑戦して、世界トップを決めるようだ。

 俺の一回戦の相手は星井岳(ほしいだけ)という北海道ナンバー1の実力を持つ上位ランカーであると知るが、恐れることはなかった。

 熊倉さんやあの時のカルロに比べれば弱い、だが慢心しない。

 カルロに出来るだけ、手の内を見せずにわざとダメージを貰いつつ戦う方法をタクシーに乗った時からずっと考えていた。

 手加減しつつ、カルロ戦でのみ全力を出す。

 そう決めていた。

 会場がざわめく、200人以上の観客とカメラマン達の熱気が伝わる。

「君が苺大将かい?」

 俺の名前を呼んで、無言で振り返ると真柴さんくらいの年の金髪の大学生っぽい男がいた。

「我輩は星井岳だ。君の一回戦の相手だ」

「ほう……そうか……」

「我輩はウルフォ3時代に過去に熊倉と対戦したことがきっかけで、ただただ強くなるために格闘ゲームを続けた」

 昔からの古豪というわけか。

 熊倉さんと戦った相手なら負けているはずだ。

 いつかの初めて熊倉さんの部屋で呼ばれて見た時の映像ではこいつは居なかった。

「熊倉は格闘ゲーム熱が覚めようだな」

「何?」

「疑問に思わなかったのか? なぜ熊倉が参加しなかたっと? それはな、自分はもう大会など目指さずに真剣ではなく娯楽として遊び、本気でやっていたことを卒業するみたいなことを最後のウルフォ3時代の大会でコメントしていたからだよ」

「そんなことが……熊倉さんにあったのか……だから参加しなかったのか」

 なら覚ませてあげよう。

 熊倉さんはきっとその時に熊倉さんなりの事情や理由などがあったんだろう。

 確かにこの金髪の星井岳の言うように熊倉さんはどこか格闘ゲームに対して真剣だけど、熱がない気がすることが特訓中によくあった。

 今日は熊倉さんは公務の日だから後でまとめ動画などで見るだろう

 例え熱が無くても辞める理由があるんだと思う。

 特訓中にこう言ってくれた。

『私はプロゲーマーとしての資質はあったが、楽しみたいという気持ちが強いからアマの方で活躍していたいと言う気持ちになった。これは決して諦めたわけじゃない。沖田君はプロゲーマーの才能が私以上にある。大会で私がした特訓の成果を思いっきり出してやれ』

 何かの理由や事情のあたりでその言葉を思い出した。

 この熊倉さんの答えを星井岳に言おうとした。

「カルロ戦を終えた後に娯楽に変えたとかで、プロゲーマーとしての資質は無いようだったな。熊倉はプロの世界から逃げた最低の格闘ゲーマーだ」

 最低だと?

「ふざけるな」

「ん?」

「熊倉さんは逃げたんじゃない! いつか必ず復活する! 俺の対戦で昔の頃に戻してやる! 星井岳、お前を倒してな!」

 そう怒鳴って俺は一回戦の始まる椅子に座った。

 星井岳は何か言いたげに俺を睨むが、反対側の椅子に座った。

「お待たせしました。それでは記念すべき2018年ウルトラストリートファイト4全国大会の一回戦を始めます! 両選手キャラクターを選んでください!」

 カルロは後ろの奥の席で大画面を見ていた。

 待っていろ、カルロ。

 今から俺がお前を倒す。

 俺はこの時真剣になる勝負のスイッチみたいなのが頭の中でオンになった。

 まるで別人のように俺は変わっていた。



 星井岳は俺と同じキャラを選択して対戦を始めた。

(スマホで見た情報だと俺と同じキャラを使うとか書いてあったな。同キャラ戦なら実力で勝負が決まる)

 1ラウンド目が始まる。


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