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第二十四話

「平日負けなし野郎? 俺のことか?」

「ああ、そうだ。一回戦で不幸だったな。この全国で上位ランカーの強キャラしか使わないと言われている真柴様が、お前のような大会に出ないで無敗を気取っているにわかゲーマーに負けるわけがない。この激戦区と言われる関東代表として、まず全国の前の地域大会でそれを証明してやるよ」

 ギャラリー達が俺とその上位ランカーの強キャラしか使わない真柴とかいうプレイヤーを見ている。

「あいつが全国50位の上位ランカーの真柴。関東最強説が流れてるとかいないとかで有名な真柴かー」

 ギャラリーの中からそんな声が聞こえた。

 威張るにしても全国50位で威張るのはなんかランキング的にも中途半端で変だな。

 普通全国1位とかで威張らないか?

 ちなみに全国ランキング1位の人のことをゲーマーの間では昔から全一とか言われるらしい。

 ってか俺の一回戦の相手はこの自慢してた全国50位の人か。

 なんだかあふれ出るかませの小物臭がするなぁ。

 まぁ、でもランキング的には俺より全然上だよな。

 なにせ俺はというと……家庭用だとウルフォ4始めたばかりだし……。

 ランキング低いのは家庭用で買ったばかりだから仕方ないし、ゲームセンターでちょっと有名になっている程度だしな。

 そりゃ全国上位ランカーとは月とすっぽんくらいの差があるだろうな。

 アーケード用のカードも自分が全国で何位か興味ないから忘れているし、俺って上位ランカーなのかなぁ?

 あくまでランキングでの知名度の話であって、それが必ずしも今日の格闘ゲームの実力差になることはないと俺は思うけどな。

 真柴の声が大きかったのか、それを聞いた参加者やいつもより多いギャラリーが騒ぎ始めていた。

「気の毒に……あの坊主ぼろ負けになるな……へこんで来なくなるかもなぁ」

 ギャラリーがそう言いだす。

 俺はあの熊倉さんに舐められていた(?)対戦とはいえ、良い勝負が出来ている。

 だから全国50位のやつに負けるわけにはいかない。

 この優勝候補とか騒がれている真柴を倒さないようでは全国大会に行けるなんて夢のまた夢だろうな。

 対戦は今か今かと思って体が熱くなる。

 足から心臓に向けて血液がさかのぼるような感覚になる。

 こんなことは初めてだ。

 中学の頃に志穂に告白する時の緊張とは似ているようで違う気がした。

 登録をした時の店長らしき人ではない別の店員の人がマイクを持って大会開始の挨拶をした。

「お待たせしました。全国に出場できるのは誰か? アドアーズ地域大会をこれより始めます。関東代表の座をかけて今優勝者を決める戦いが始まります。まず記念すべき一回戦は苺大将選手と真柴選手です」

 パチパチパチとうるさくもなく静かでもない微妙な拍手が聞こえた。

 俺は黙って筐体に座り、カードを差し込み、クレジットが30くらいある台にスタートボタンを押した。

 熊倉さんと戦った時のいつもの俺が使う主役キャラを選んで、相手のキャラ選択を待った。

「この真柴様がお前に本当のウルフォ4の対戦を教えてやるよ」

 わざわざ奥の筐体からそんな大声で、これから対戦する俺に言わなくてもいいつーの!

 弱い奴ほどよく吠えるんだよなぁ。

 真柴の使用するキャラは、ピンクのミニスカートを履いた学生服のアホ毛がある妹系のギャルゲーとかに出てきそうな外見の少女キャラクターを選んでいた。

 このキャラクターは昔のネットの書き込みで知っていた知識だが、ウルフォ1の初めての大きな大会でチャンピオンが使っていたという強キャラだ。

 キャラ差は10回戦えば俺の主役キャラクターが4回勝つくらいの差だからぎりぎり勝てるかもしれない。

 で、確か真柴の選んだこの強キャラの性能なんだが、主な特徴は空中での守りが固いってことが有名だったな。

 速くて空中での攻撃判定が強いから、このキャラクターを使う奴は基本的にバッタと呼ばれる格闘ゲーム用語の一つで、それはようするにジャンプしまくることが多いということだ。

 それとそのキャラが空中で攻撃してきて、こちらが地上で防御してもその防御中の硬直状態を狙って投げ技を出すくらいだ。

 しかしその投げ技の範囲が他のキャラに比べて狭いうえに威力もそこまでない。

 昔のウルフォではこの投げ技の範囲が他のキャラクター達とほぼ同じだったため強かったが、今作のウルフォ4で狭くされて投げ技や必殺技などの威力が若干弱くなっている。

 だがそれでも十分強い部類に入る威力を持っている。

 そして上級者が使えば投げ技への間合いも理解しているので、弱点を克服していることになる。

 説明をおおざっぱにすると、そんなキャラで反則のようにも見えるが弱点もある。

 攻めでも守りでも空中だと有利だが、着地で一瞬だけ隙が出来ることも有名だ。

 だがその隙が2フレームほどなので、上級者にもなると着地寸前にコマンド入力すればその隙を狙って攻撃を当てることが出来る。

 逆に相手は2フレームの間に投げ技を急いで入力するわけだが、その2フレーム中にこちらが攻撃すればダメージを喰らって、真柴の選んだ強キャラが無防備になることが多いだろう。

 相手が投げを入力しようにも、どうしても2フレーム隙が出来るのでコンボや必殺技を入れることが可能になる。

 あとブロッキングのタイミングが少し遅めだから、嫌でも飛んで守りながら攻めなくてはならないことが戦略として多い。

 ただでさえ連続して出し続けるのがすればするほど段々困難になるブロッキングが、素早く連続で出来ないということは、必殺技や超必殺技(アルティメット)をブロッキングを放棄してガードに変えることが必然だろう。

 ガードはダメージをダウンこそしないが、それでもダメージをわずかに貰うことになる。

 そう言う意味でもこの強キャラを選んだ上で、たまにあまり飛ばずに地上戦で挑むという戦略をするプレイヤーも珍しくはなかった。

 地上戦でもそれなりに強いと言えば強めだが、空中での判定などに比べれば低い方だ。


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