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第十六話

 ゼルダのキャラクターが1歩下がったのでジャンプして蹴りを浴びせる。

 しかしブロッキングされ、相手の入力した必殺技の1つで、また俺のキャラクターが顔を殴られてダウンした。

 地上戦が上手いな。

 だけどそれだけだ。

 まだ負けた訳じゃない。

 そう思うが体力はもう2割しかない。

 負け惜しみにも思えてしまうが、諦めたらそこで負けてしまう。

 諦めること。

 それは対戦格闘ゲームでやっちゃいけない無様な行為だと、俺の対戦格闘ゲームをやる上での決まり事として守っていて一度も破ったことはない。

 たとえ相手がオンライン対戦時のサブキャラを使って全国10位になっているゼルダだとしてもだ。

 だから俺は諦めない。

 俺のキャラクターが起き上がり、テンポよくコマンド入力して弾撃ちを連発する。

 1発目は喰らったようだが、2発目からブロッキングされた。

 そして3発目からゼルダは俺と同じで弾撃ちをして、俺の出した弾をゼルダの出した弾でかき消した。

 その時だった。

 現在ゼルダと俺は同じキャラで対戦をしている時に、ある一つの違和感があったことに気づいた。

(このラウンドで始まってから、俺のさっきの3発目からの弾打ちを除けば、弾撃ちをゼルダは一度もしていないっ!)

 何故前のラウンドでしていた弾撃ちをしないのか?

 もしかして無駄な弾撃ちをしていないんでは?

 対戦している中で、俺はそれがわからなかった。

 弾撃ちをし始めたゼルダを見て、俺は弾撃ちよりもわずかだがゲージを稼げるブロッキングで増やしているのではないか? 

 そう思った。

 このラウンドでそんなに弾撃ちをしないのは、俺を舐めているとかではなく、本気を出していて超必殺技(アルティメット)狙いか、もしくはゲージ消費の必殺技を連発するのが目的ではないのだろうか?

 コマンド入力の中でそういうのが来るかもしれないという不安が出てきた。

「おいっ! おいっ! どうなる? どうなる? あの女の人はとうとう一回目の負けとなるのか? それともあの坊主の負けか?」

 ギャラリーがそんなことを言いながら、ざわざわ騒いでいる。

 こっちが弾撃ちで攻撃しているのに今のところ同じように弾撃ちでかき消して、お互いこの段階ではダメージは貰っていないが、まるで相手に攻撃されている気分になる。

 なんて威圧感のあるプレイヤーなんだ。

 まるで要塞だっ!

 ダメだっ!

 相手の雰囲気とかペースとかに飲まれたらいけない。

 なんとか突破口を見つけなければいけない。

 このまま弾撃ちだけでは限界がある。

 ここは冒険してみるか……次の弾撃ち入力をする途中でキャンセル技を使い、ゼルダのキャラクターにジャンプで接近して空中蹴りから繋げるコンボで……これからノーダメで戦うしかない!

 そう思って弾撃ちを入力途中でキャンセルして空中に飛ぶ。

 しかしゼルダのキャラはゲージを消費したアッパー必殺技のゲージ消費強化攻撃で、俺の空中蹴りで発生する当たり判定が出る前に命中させた。

 偶然でも魔法でもない。

 分析すればこれはダメージ判定の時間を理解した上での行動だ。

 だが、俺は冷静に分析しつつも驚きを隠せなかった。

「嘘だろ!?」

 俺は思わず叫んで椅子から立ち上がった。

「あっ、惜しいな今の」

「あとちょっとだったな」

 ギャラリーの声に反応したが、振り向かなかった。

 俺は何故か上を見ていた。

 薄暗い天井に設置してある電球が申し訳程度に光っているだけだった。

 そして一度目を離したゲームの画面を再び見る。

 俺のキャラクターの体力は、さっきのゲージ消費必殺技で0になっていた。

(ああ……終わった……ゼルダが途中まで一度も弾撃ちをしてなかったのは、ゲージ消費の必殺技を読ませないようにしたことだ)

 しばらく筐体の前の椅子に座り込んで排出されたカードを取り出して、また考えた。

(無駄のない弾撃ちをして、弾撃ち合戦にしようとさせた。そしてこちらがどんどん撃ってダメージを与えさせようとして、ブロッキングでさりげなくゲージを増やしてたんだ。もし気づいていれば、接近戦でゼルダがゲージをためる前にこっちが近接攻撃で攻めていれば勝機はあった)

 それでもわずかな勝機かもしれないが、とにかくただただ強い相手だった。

 これでゼルダにキャラクター変更の時と合わせて2連敗だ。

 無気力になって戦う意思も消えた。

 ゼルダは格闘ゲームが上手いし、読み合いが強い。

 まさかこれだけの腕を持っているとは思わなかった。

 年季の違いってやつなのかもしれない。


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