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第十五話

 そして笑みが生まれる。

 こんな状況なのに嬉しさと、勝てるかもしれないという根拠のない自信が俺の感情に現れていた。

 ゼルダ……あのオンライン対戦からわかっていたが……改めて思ったよ。

 そう、確かにお前は強いよ。

 だがな俺だって負けてないんだぜ!

 勝負は起き上がりの時に必殺技を入力する瞬間だ。

 相手に起き攻めされるというケースはある。

 多少は心配でもあるが、この距離なら無敵時間も含めたモーションフレーム的にも繰り出せる必殺技は限られている。

 セルダもその限られた必殺技を使えば、その次の戦略の幅は狭まるから次の行動が読みやすくなる。

 つまり対応できる。

 ゼルダのキャラクターがダッシュして、ダウンから起き上がる俺のキャラクターに近づいた。

(残念だが、そのパターンも想定していたんだよっ!)

 俺は起き上がって、そう意識した後ですぐ行動して入力した必殺技を出す。

 やっぱり近づいてきたか!

 当たれ!

 当たってくれ!

 いや、安心しろ。

 これは確実に当たると言っていい状況だ。

 しかし俺の思いとは裏腹に、入力された必殺技は丁寧にガードされた。

(あっ! この距離の起き上がりからの必殺技は大抵のケースにもよるが……成功する確率は高いはずなのに……タイミングよくガードされた!)

 そして虚を突いたようにゼルダのキャラクターは、すぐに投げ技の掴み動作に入っていた。

 しまった!

 そう思ったよりも先に相手は俺のキャラクターにそのまま投げ技を使われ、俺のキャラクターの体力は0になった。

 あっけなかった。

 当たれという先ほどの気持ちが、一瞬で陳腐に思えるくらいあっさりとリアルな負け方をした。

(くそっ!)

 惜しかった。

 あとちょっとだ。

 だがそのちょっとが近づけない。

 そのちょっとはまるで遠くにいるようにおもえる距離にも見えた。

 1ラウンドはゼルダの勝ちとなった。

 同じメインキャラを使っているとは言え、オンラインでやっていた時よりも強くなっている気がした。

 だが俺もあの時より少しは強くなっている。

 なぜなら寝る時にシュミレーションして相手の対応などを理解したからだ。

(でもイメージトレーニングって……実際はあんまり意味ないんだよなぁ……)

 なんて言っている時間も無いか。

 次のラウンドに入る。

 この戦いは読み合いが大事だ。

 前のラウンドで戦っている中でそう気づかされた。

 今から始まるこのラウンドでゼルダのキャラクターが、いきなり開始直前に超必殺技(アルティメット)を使ってきた。

(マジかよ!)

 弾撃ちのコマンドを入力していた俺のキャラクターは、相手が俺のコマンドより早く入力した超必殺技(アルティメット)に無効化され、そのまま超必殺技を喰らって体力の4割を奪われる。

 最初からぶつ放しやがった。

「おいおい、あの女の人凄い入力スピードで超必殺技(アルティメット)出してなかったか?」

「そ、そうだな。すげえよ! あんな難しいコマンドを短時間でよく入力できるもんだ」

 ギャラリーの声が聞こえる。

 相手の行動が読めない。

 それは予想外のことで、俺の思考が一時的に停止しているからだ。

 超必殺技(アルティメット)をいきなり出されたことにパニックになっている。

 壁にバックステップして、相手との距離を取り冷静になる。

 やられたわけじゃない、まだ体力がある。

 それだけチャンスがあるってことだ。

 冷静に対処しよう。

 そうだこっちが不利になって逆転することだって、家でやっていたゼルダ以外の他の対戦相手でオンライン対戦してあったじゃないか。

 ダウンして立ち上がった時は下蹴りを連発してたので、レバーを斜め下に移動してしゃがんでガードする。

 立ち上がって即座に入力した突進する必殺技を使い、セルダのキャラクターを吹っ飛ばす。

「おっ、こいつ結構やるぜ。つうか俺より強いかも」

「かなりやり込んで、いやかなりキャラクターが仕上がっている。俺はウルフォ4をやって間もないが経験論からこの坊主かなりやり込んでいると思えるぜ。なんだか、そんな気がするぜ。でもよ……あの女の人のほうが言っちゃなんだが……あの坊主よりかはるかに上手いな」

「そうかな? 俺にはいい勝負に見えるんだけどなー。あれ? ゼルダって名前……どっかで聞いた気がするんだけど……大事なことのはずなのに思い出せねぇなぁ」

 ギャラリーの声が聞こえる。

 俺は対戦に集中する。


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