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第十四話

 気持ちはわかるが、攻撃は先制させてもらおうと思った。

 そうだ、対戦する以上は俺が勝たなきゃ割に合わない。

 二回しか話さなくて、趣味が合わずにそのまま話さなくなった隣のクラスのボクシング部に所属している雪之丞君もこう言っていた。

「沖田、ボクシングはね。相手が構えた後に出る先手の先を取ることが必勝法であり、それは基本でもあり、けん制でも使われるジャブよりも重要で脅威となるんだよ。わざわざそれ聞くためにジュース奢ってくれてありがとうな。たぶんもうお前とは話さない。俺はお前もいるこの高校のボクシング部で大会に出て優勝するから忙しくなる。じゃあな」

 その言葉の通り先手必勝だ。

 さっそく近づいて、俺は必殺技を素早く入力する。

 俺の使用キャラクターが、画面で拳を振り上げて相手キャラの顎にぶつける。

 怯んだ所を弱パンチ、中キック、強パンチの三段コンボで体力を削る。

 俺の繰り出したキャラクターのコンボの最後に入力した強パンチで、相手のキャラクターとの間合いが大きく離れた。

 そして相手の使う同じキャラが、その時に即座に入力して必殺技を使う。

 画面でゼルダのキャラから必殺技のアッパーをして、俺のキャラクターの顔を殴り飛ばす。

 たいていの奴は早く反応するものの必殺技を入力できるスピードが無いから、ボタン一つで押せる通常技くらいしか出せない。

 そういう点で言うとゼルダはかなり出来るな、あの時もそうだったが俺より強い。

 だけど対戦してて感覚的に解るのだが、どうやらゼルダはまだ本気を出していない。

 本気を出していないにせよ、どのみちゼルダは先ほどの攻撃で自分のペースに持ち込もうとするだろう。

 だがここで調子に乗らせて相手のペースにする訳にはいかない。

 起き上がって、コマンドを入力する。

 テンポよく正確に入力して、弾撃ちを繰り返して相手を近づけさせないようにする。

 俺の使っているキャラクターが手から炎の弾が次々と出てくる。

「おい、こいつ技入力ちょっと早くないか?」

「ああ、言われてみればそうだな。簡単なコマンドだけど、長くやっている奴でもあれくらい早いわけでもないしな」

「あの女の人も必殺技の入力スピードと対応が早いぜ」

 いつの間にか集まっているギャラリーの声を後ろで聞いて、ちょっとやる気が出る。

 どうだ? 

 自慢じゃないが、必殺技のコマンド入力はピアノを弾くように上手いんだぞ。

 だが一流のプロゲーマー達なら、それくらい出来て当然なんだろう。

 自慢できるのはせいぜい一般人か、趣味勢の中級者くらいのゲーマー達ぐらいだろう。

 相手のキャラクターは俺のキャラと同じく手から炎の玉を出し、そのまま殴りつける必殺技をたまに使って、俺のキャラクターがずっと続けて入力している弾撃ちを防いだ。

 このたまに出す殴りつける必殺技は少し前進できる上に無敵時間もわずかにあるので、それを利用して、接近していた。

 それはある程度ウルフォをやっているプレイヤーなら普通は出来るが、何度でも連続して出来る芸当ではない。

 むしろ連続でやり続ければ続けるほど難しくなり、スピードの問題で結果として技を喰らう。

 俺は驚きながらも焦りつつ、弾撃ちのコマンドを入力して画面を見続ける。

 ゼルダの使うキャラクターは弾撃ちを止めて、さっき行った殴りつける必殺技を使い続けながら、そのフレームモーションで発生するわずかな無敵時間をタイミングよく利用して、接近しつつ俺の弾撃ちを通過していく。

 そして俺のキャラクターにじわじわと近づいている。

 俺は弾撃ちを止めなかった。

 相手が絶対に防ぎきれず、ダメージを与えられると思ったからだ。

 それらを互いに繰り返すうちに、俺達2人のキャラクターのゲージがそれぞれ溜まっていく。

 相手であるゼルダは正確なコマンド入力と必殺技をかわすタイミングを持っている。

 同じキャラクター使っているのにこれほどの差があるのか、よくここまでやれるな。

 まるで曲芸だな。

 ただひたすら弾撃ちしていても様々な方法で、例えば距離が遠距離から近距離になった場合はおそらく投げ技を俺は喰らうだろう。

 相手のキャラクターが近くに来たので、ジャンプして相手の入力した投げ技を回避する。

 やっぱり投げ技だったと読んでいて、ジャンプで回避行動して正解だった。

 その後にセルダのキャラクターもジャンプし、空中での強キックで俺のキャラにダメージを与える。

 そのままダウンして壁際に追い込まれた。

 マズいな。

 ダウン中にダッシュされて、ゼルダのキャラが近距離の範囲に入った。

 そして予想通り、後は彼女の入力された投げ技で体力をごっそり持っていかれる。

 またダウンした。

 起き上がったゼルダのキャラクターに向けて必殺技を入力し、ふっ飛ばしてて壁のある隅っこから脱出しようとする。

 だかガードされて、次に繰り出した弱パンチも強キックも冷静にガードしていく。

 そのまま素早く入力された必殺技のアッパーを喰らって、またダウンする。

 いつの間にかゼルダ有利の一方的な展開になってきている。

「ッ!!」

 思わず俺は声にならない声が出た。

 家でオンライン対戦してスコアポイントを稼いだカモみたいな連中とは次元が違う。

(あの時のオンライン対戦の時もそうだったけど、改めて再認識したよ……こいつ……マジでバケモンだ!)

 そう思ってしまった。


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