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CROSS ROAD  作者: 青葉 夜
40/42

勝利の代償

で、勝戦後。

俺は、何時もの宿屋で包帯漢と成って寝込んでいた。


「うー、おぁーーー………」

「なんですか? …あぁ、お水ですか」


報酬の金貨五十枚。その大半は俺の怪我の治療費へと消え去ってしまい、残った金額は宿屋へ。俺が復帰するまでの宿代と言うことに。


「…むー」

「仕方ないじゃないですか。怪我してるんですし」


アエテルのオーバードライブ。

人体の許容限界をはるかに超えたその力の行使は、やはり対等な代価を俺に求めた。

それが、現在のこの身体。

沸騰した血が肉を焼き、肉はアエテルに溢れかえって物質的に崩壊しかけて。

多少の傷であれば、アエテルの治癒力でなんとでも成ったかもしれない。

しかし、今回の傷の原因はアエテルの過剰摂取が原因だ。となれば、今此処でアエテルを使うのは火に油。自然治癒能力に期待するしかない。


「むぁー!……」

「パー!……? お金ですか? いいじゃないですか、また稼げば」

「もご、めむまむ…むぅーとま、ひららいんら…?」

「服とか…ですか? この間沢山買ってくれたじゃないですか」


…はて。

女の子と言うのは、綺麗な服を沢山欲しがる物だと思っていたのだが。

妹とか、幼なじみの言動からそう考えていたんだけれども…偏見だったかな?


…まぁ、それは良いとして。


「むむぅ…」

「なんです?」

「めめめもももむまみ…」

「包帯がどうかしましたか?」


全身を覆う包帯を指して唸る。

俺の全身は、既にある程度回復している。のに、現在の俺の格好は完全に重患のソレだ。

多分ではあるが、日常生活をする分には既に問題も無いだろう。

のに。


「むー」

「その包帯には精霊の加護が掛かってるんです。多少ですけど、自己治癒能力を高めてくれるんです」


言って、おれの「これを取ってくれ」的な訴えを拒否するクリス。

でもなぁ。身動きが取れないほどに雁字搦めにされる…っていうのは、正直。

おれはMではないし、拘束されても嬉しくはない。


「めめめむみまめめも…」

「隙間無く覆わないと意味無いんです」


でも、口まで覆われてると流石に呼吸が苦しい。

まさか、こんな所で爺に習った断気を使う事になるとは…。

ちなみに断気と言うのは、自ら気をたって気配を隠し、静かに体力の回復に努める技術の事だ。気配を察知されない為に呼吸回数や心拍数を低下させるという、現代社会においては何の必要もない技術。

まぁ、精々潜水時間が伸びる程度か。


…しかし。モムモム言っているのは正直疲れる。

幸い(?)この包帯をしていても、クリスだけは俺の言葉を聞き分けられるらしく、こうして何不自由なく寝て過ごす事ができてはいるのだけれども。


…駄目だってコレ。マジで快適すぎる。

このままじゃぁニートまっしぐら。異世界に来てまでニートとか、正直洒落にならない。


「あ、そうだ。ケントさん、子守唄歌ってあげます♪」

「…………」


なんとも心引かれるお誘…ゲフンゲフン、人を舐めているのかと少し問おうかと思って、しかしその瞳には只単純に此方の為を思う気持ちが映っていて。


音にすれば“キラキラ”といった感じか。


……………………(キラキラキラキラ)


……………。


「〜〜〜〜♪、〜〜♪」


結局歌ってもらったさ。子守唄。

なんとも素敵なファニーヴォイス(とろけるおこえ)でしたともっ!!

もうプライドとか、それを自分から捨てる事を選んだこととか、いろんな物が崩壊した気分だった。


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