イケ面(?)ナルシストと俺
「おおおおっ、それはボクの探していた『星の廻り』著:キンバー・リンバーじゃないかっ!! 中々見当たらないから一体何処に行ったのかと探していたんだよっ!!」
その青年は、突如そんな事を言って、その本を手に取った。
「あ、の?」
「嗚呼、コレこそボクが捜し求めた魔導書っ!! 我が魔導の進むべき先を示す絢爛の魔導書っ!! 嗚呼、嗚呼っ、我が魔導に精霊の導きをっ!!!!」
何か、物凄くトリップしてるヒトだ。
「あの…」
「ハーッハッハッハ!! ……ん、おや、キミは……」
漸く気付いたらしい。
「あの、その書籍は今現在俺が借り受けているものです。返していただきたいのですが」
「……ふぅん、みすぼらしい平民が、貴族で在るこの私から品物を取り上げようと、……つまり、そう言っているのかい、君は」
………あー。
リアルでイタい奴mjktkr
「あー、いや。如何言おうが、其れは現在俺が借り受けているものです。其れを横から無断拝借するという、狡い行いをするのが貴族であるというのならば」
どうぞ御存分に、と言って、思い切り睨まれている事に漸く気付いた。
「…あら?」
「貴様ぁ…下賎な平民風情が、この私を其処まで貶めて……いいだろう、覚悟は決まっていると見た。ならば、決闘と行こうか」
「はぁ!?」
決闘。この世界には決闘がOKなのか。
決闘罪とか無いの? あ、そう。無いの。
「それとも逃げるのかね、下賤」
「いや、決闘…「ケントさんが貴方みたいな御下品貴族から引く訳が無いでしょうこの無頼がっ!!」………えー…」
と、何処から現れたのか。
それまで静かに、それこそ従者のように沈黙を保っていたクリスが、しかし突如キレて、その金髪モジャ毛に向かって猛烈な罵声を浴びせかけた。
「な、ぶ、無頼だと!?」
「無頼なんて言葉も勿体無い、ナルシスト金髪モジャ毛っ!! 一人で悦に入って、何ですか、貴方。変態の方ですか? でしたら此処は図書館です。速やかに色町へと繰り出すが宜しいでしょう。まぁ、貴方に引っかかる女など精々情婦が関の山でしょうが」
う、うわぁ……。
「き、キ、、キキッキイイイイイイイーーーーー!!!!!!」
サル?
「キサ、キサキ先様貴様貴様貴様ァァアァァァ!!!! この由緒あるニルヴァーナ家が嫡子、ハイネ・ニルヴァーナを其処まで愚弄した罪、決して許さんぞおおおおおっ!!!!!」
何か、勝手にイベントが進行してませんか?
…図書館イベント? フラグ乱立ポイント?
…………mjdk……。
「勝負は剣と魔法のフリーバトル、会場は此方が用意しよう。当方が勝利した場合、その首然と野晒しにしてくれる」
「なら此方が勝利した場合、金貨50枚頂きましょうか」
「な、金貨ごじゅ…」
「まさか、勝負に勝利する自信がないと? 貴族様と言うのは口が達者であれば成れるものですか。ハッ」
金髪モジャ毛くん、クリスの毒舌の前に呆気無く沈黙してしてしまった。
…っていうか、其処まで毒舌家だったんですね、クリスさん。
「…詳細は後ほど連絡する」
言うと、モジャ毛はギロリと此方を睨んで、そのまま図書館の外へと逃げ出していった。
「お、覚えてろよっ!!」
うわー……。
今日日、あんな定型文な捨て台詞言う人、初めて見たよ…。
で、その後。
「クリス、思いっきり挑発しちゃって…」
「駄目でしたか?」
「いや、駄目って事は無いけど……」
実際、俺もあのナルシーは生理的に受け付けない…かなり腹が立っていたのは事実。
「その、ケントさんがあんまりにも見下されているのが腹に立ってしまって…」
うっ、その上目遣いは反則だ。
これも計算しての事っぽいからちょっと恐いんだよな、この子。
可愛いものには棘が在る。努々忘れる無かれ、と。
「んや、嬉しかったよ」
言ってクリスの頭をくしゃくしゃと撫でる。
嗚呼、やっぱり可愛エなぁ……。
……俺って駄目人間。
今一キャラが安定しないクリスちゃん。
メインヒロインに押し上げてしまおうと画策している以上、もうちょっと頑張らないと……。