図書館二日目の事
曰く、この世界に辿り付いた人間が発現させる異能は、魔法なのだそうだ。
それを使いこなすに程度差こそあれ、その効果は果てしない。
基本的な身体能力で言えば、地球人はこの世界の住人には遠く及ばないのだとか。
――俺は普通に斬り結べたのだが。まぁ、それは例外。
その差を埋めて、しかも上回るのが魔法だという。
俺の場合、アエテルなんていう世界を構成する全ての原液みたいなものを操れる為、その魔法の効果とてかなりの深度で操れる。
因みに、深度というのは「どれだけ世界を深く捻じ曲げられるか」と言うことらしい。イミフ過ぎる。
「何処かへお出かけですか?」
「ああ。今日も図書館へ」
「それじゃぁ、お供しますね」
そうこうして、クリスを引き連れて昨日と同じく図書館へと行く。
白い石の巨大建造物の中の、木製の巨大空間。
「今日は何を探すんですか?」
「ん。今日は少し魔術関連の本を探そうかなと思って」
俺の使うアエテル。
それに関して、俺はあまり深いことを知らない。
「なら、魔導書関連のコーナーですね」
言って、俺の手をとって引っ張っていくクリス。
…いや、さらりと手を取られたのだが、何気に恥ずかしい。
女の子と手を繋いだのなんて、この方……まぁ、覚えては居ない。
「このあたりですね」
言って案内されたのは、鼻にツンと来るかび臭い、旧い書物がずらりと並べられた一角。
適当に開いて見てみるが、旧いといってもこれはどうやら印刷物のようだ。
まぁ、量産品だからこそこんな図書館に置いているんだろうが。
「何を読みたいんですか?」
「ん? アエテルに関する本を少し」
言って、本棚をごそごそと探っていく。
日本語で執筆された書籍も何冊かあったが、しかしそれらの内容は大半意訳されていて。
まともな資料に使えそうなものと言うのも少なかった。
「ケントさん、これを」
言って、クリスに差し出されたのは一冊の分厚い本。
円に囲まれた十字架のような刻印のあしらわれたその本。
「……神学本?」
「アエテルっていうのは、昔から神学と関わりが深いんです。場所はピックアップしますし、如何でしょうか」
言って差し出されるその冊子。
受け取って、中をパラパラとめくっていく。
「……うん、これはイイかも」
大きな挿絵と、比較的わかりやすい表現で書かれたその書籍を見て。
成程確かに、コレなら俺でも理解出来そうだし、アエテルの文字も見て取れる。
「うん、それじゃ、コレで。ピックアップ、お願いするね」
「はい! ご使命遂行確かに受け賜りました!」
ニッコリと、そう元気に宣言するクリスだった。




