オケ、把握。異世界ね
「チキュウ? 何よソレは」
「地名。因みに此処って何処?」
「此処はクルスト南のカラメルの南端に位置する森ね。…貴方もソレ位はしっているでしょ?」
まぁ、そんな気はしてたんだけどね。
異世界。
剣と魔法のあるファンタジー世界。
俺が今居るこの大地は、地球とは違う、そんなファンタジーな世界。
大切な事なので二度言いました。
「因みに私はメリッサ・ヴェルグス。クルスト国立学園の1年生よ」
「俺は北岡健斗。健斗が名前なんだけど……後の事はさっぱり」
「さっぱり?」
「俺、記憶喪失みたいなんだよ」
ラノベ…いや、ジュブナイルかな? で、異世界迷い込み物といえば、大抵はこの手で罷り通る。
こう言って置けば、まぁ不自然な点とか、適度には見逃してもらえるだろうし。
「へぇ?」
「気付いたら森の中に独り。正直死ぬかと」
「…まぁ、いいけど」
少女…メリッサも、多少疑わしそうでは在るが、とりあえずは納得してくれたようだった。
……いや、納得したのかな? 物凄くにらまれてますが。
「…いいけど」
二度も言われました。大切な事だったんでしょうか?
といっても、俺にそれ以上何か言う事が在るわけでもなく、とりあえず黙ってまっすぐ歩くだけ。
そう、歩く。
此処はさっきの崖からさらに歩いた所。最早現在地なんて調べようも無い。
「助けてくれたのはありがたいんだけど、せめてもう少し考えてくれると嬉しかったわ」
「………御免」
折角助けたのに!! とか、そういう泣き言は言わない。ああ、言わないとも。
只ちょっと憂鬱に成るだけだ。
「…………なー」
「何よ」
ちょっと声を掛けてみる。が、何かかなりツンケンとした態度で返答されてしまう。
お、…俺はくじけませんっ!!
「メリッサって学生なんだよな?」
「ええ。クルストで魔術を学んでいます。…まぁ、魔術以外にも在る程度の事は学んでいますけど」
お嬢様…というか、貴族な感じのメリッサ。が、幸いな事にボンクラと言うわけではなさそうだ。まぁ、そんな人がこんな所に一人で来るわけも無いか。
「んじゃ、ちょっと教えてほしいんだけど」
言って、後ろを振り返る。
メリッサは怪訝そうな顔で此方を見返していた。