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CROSS ROAD  作者: 青葉 夜
26/42

wktkな買い物2


新しく購入した布袋に衣類の代えを詰め込んで、然し続いてそのまま町を歩いていく。


「次は何処に行くんですか?」

「武器を、な。ナイフ一本では心許ないし、ナイフ用の鞘も用意しないと」


言って、鞄の中に仕舞っておいたナイフを取り出す。

真っ黒な刀身と、少し光の反射が違う刃先。

何故か少し、日本刀を思い出した。このナイフは、そんな感じのつくりだ。


「流石に、鞄の中じゃいざと言うとき使えないし、腰にそのまま挿すのも危ないしな」


このナイフ、振ってみてその使いやすさに先ず驚いた。

包丁使いの俺でも、このナイフなら十全に使えそう。


…が、恐いのはこのナイフが俺の武器になると同時に、最大の弱点に鳴るかもしれないということだ。

このナイフは、俺のアエテルの防壁を突破してくる。

自分の弱点を常に持ち歩く…。リスキーだ。


「それじゃぁ、先ずは武器屋ですね」


言って、クリスは鞄にナイフを仕舞った俺の手を取って、ズンズンと人混みの中を前へ前へと進んでいってしまう。


「ちょ、クリス!」

「ほらほら、早く行きましょう!!」


言いつつ、クリスはズンズンと進んでいく。

俺としては繋いだ手が何気に嬉しくて。

だからこそ、クリスの赤くなった耳を見て、尚更恥ずかしくなるのだった。






武器屋について、最初にナイフの採寸をとってもらい、皮製のナイフを作ってもらうことになった。

手付金として銅貨を10枚ほど置いて、クリスに銀貨を数枚握らせ、そのまま店内の武器の色々を見て回る。

大型の武器屋で、広々とした店内に整然と武器が並べられている。

まるでスポーツ用品店だ。


「と、言ってもねぇ…」


俺の基本的に使う武器といえば投擲武器だ。

投擲武器って、あんまり種類なさそうなんだけどなぁ…。


「お客様、本日はどのような品物をお求めで?」


と、適当に見て回っていた所、店員さんがそんな風に声を掛けてきた。

…なにか、ファンタジーくない。


「…投擲系の武器を」

「でしたた、あちらの棚になりますよ」


言われて、案内される。

適当に武器を見てたんだけどなぁ。


つれてこられた棚。

ずらっと一面に飾られているのは物凄い数のいろんな武器。


「此方など如何でしょうか」

「ダーツ…流石に威力が足りないよ」

「では此方など」

「ブーメランは癖が強すぎるよ。それに下手すると自滅しちゃうし」

「ならばコレなど」

「斧? …ああ、フランキスカだっけか。俺は速度重視なの」


物凄い勢いであれやこれやと勧めて来る店員。

そのこと如くを理由をつけて断ってしまう。

まぁ、流石に悪い気もするけれど、実際扱えないものを買っても仕方ない。


「コレなんて如何ですかっ!!」

「ピルムキターーー!!でもそれデカイし一本しか持ち運べないでしょう」

「ならこれで!!」

「チャクラムとかどんだけマニアックな武器そろえてるんだよ!! っていうか、ブーメランと同じ様な理由で不可能。…って、手裏剣も無理だぞ」


言って、手裏剣を持って来ようとしていた店員を牽制する。

棒手裏剣ならまだしも、回転させる奴は扱いが難しいのだ。

確かに刺さりはするが、命中精度の点となると………。


「コレは如何ですっ」

「いや、弓矢の矢だけ持って来られても……」

「ならばコレでっ!!」

「黒鍵キター!? なんでこんなマニアック武器が存在してるの!?」


店員が十字の柄だけの物に魔力を通した途端、その柄から刃が生えた。

反りも無く、そのくせ刀身は長く、反して柄は短い。

振るうにはバランスが最悪で、下手をすればあっと言う間に折れてしまいそうなそれ。


「おや、珍しい。この武器もご存知で?」

「珍しいって…その武器、珍しいものなのか?」


店員は驚いたような顔でそう問いかけてきた。

勧めておいて驚くとはこれ如何に。


「何? 一般的な武器じゃないのか?」

「ええ。コレはギキョウで生産された一品物でして、少しお高くなっております」


…投擲用の消耗品を一品物って…。

コレの製作者は馬鹿だ。馬鹿だが、きっと勇気在る馬鹿なのだろう。

漢気溢れる馬鹿だったのだろう……!!


「……まぁ、折角だしそれは買っておくよ」

「有難うございますっ!!」


……く、コレは趣味の買い物になってしまった。

悔しがる俺を尻目に、店員はニコニコと次の賞品を探してきて。


「それでは、次はコレなど如何でしょうか」

「投げナイフ……って、こんなモンあるなら最初に出せやっ!!」


思わず、店員の頭に軽くチョップを入れてしまったのだった。






それから、結局投擲用のナイフ(安価品)を大量に購入し、差込ベルトやらと一緒に購入して体中に装備した。

釘の棒手裏剣よりも、俺本来のスタイルとしては此方のほうが近い。


黒ナイフの鞘と合わせて、完全装備でご機嫌な俺だったのだが。


「あ、ケントさん。買えましたか?」

「ああ、ちゃんと買え…た…」


なんなんだろうかね。

クリスの手に抱えられた、質素なくせに品があって、天辺に一つ宝石の乗せられた木の杖。

張ってある値札(金貨の絵)と、背後で泣き崩れている店員(手の中には銀貨が数枚)を見るに……。

この娘、杖を叩き買いしてきたのかっ……!?


「クリス…恐ろしい娘っ!!」

「はえ?」


それでもやっぱり、首をかしげる仕草すら可愛らしいクリスなのだった。


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