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CROSS ROAD  作者: 青葉 夜
24/42

wktk魔法概論

診断結果全治一ヶ月。

正直、アボーンされてしまった。


「…え、なに? 一ヶ月も寝たきりと?」

「内臓を逸れていたとは言え、傷は結構深いんです。どちらにしろ暫くは無理です」


そんな風にクリスに窘められ、仕方無しにベッドの中へと回帰して。


流石にショボンとしてしまった俺なのだが、そんな様子を見かねてだろうか。クリスが勉強をしましょうなんていいだしたのは。


「ケントさ…ケントは記憶喪失なんですよね? だったら、少しでも勉強しておいたほうが良いと思うんですが」


勿論喜んでその提案を呑んださ。





「…は? エーテル? 俺のは気だよ?」

「いえ。それは既に気の域を離脱して、既にアエテルの域に達しています」


思わずもらした俺の疑問の声に、しかしクリスはそうきっぱりと言い放って。

話題に出たのは、俺の使う気の話。

この世界にも“気”と言う概念は在るらしく、その存在はクリスも知っていた。


が、どうやら俺が使っているのは気ではない、と言うのがクリスの主張だった。



「魔術が二種類在る…と言うのは、ご存知ですか?」

「普通魔術と精霊魔術だっけ?」

「はい。そして、普通魔術…単に魔術と呼ばれているほうに多く用いられるのが、人が個人で持ちうる『小源(オド)』と呼ばれる内系魔力です」


大まかに魔力と言うのは二つあり、人や動物が持つ生命力たる『小源(オド)』と、星が持ち、大気に満ちた世界の吐息たる『大源(マナ)』があるのだとか。


「この定義から解るように、人間にはこういう力が備わっているのですが、そのオドの源泉たる根源的な力というのが、今先ほど言ったアエテルと言うものです」


「天に帰す」の意味を持つこの力。

物質や魂の素材でありそのものである力で、気…霊気や魔力の大本なのだと言う。


「霊力や魔力の扱いを極限まで極めた人間が其れを扱えるようになるといわれていて、行使者は大抵教会の大神官様とか、山に篭った仙人様とかばっかりなんですよ」

「はぁ…」


確かに、気に関してならこの上なく修行してきた心算だ。

嘗て行っていた修行も、気の鍛錬が中核であり、殺陣はそのオマケのようなものだった。

…まぁ、その所為で今回は敗北を喫したのだけれども。


「見た所、ケントの力は既にアエテルに昇華されています。まだ初期段階のようですが…それでも、鉄の盾を木の槍で貫けないのと同じくらい当然に、その防御を突破できる物は少ない筈です」


密度の薄い魔力では、密度が濃すぎるアエテルに割り入る事が出来ない…と、つまりはそういう話なんだろうと思う。

…けれども。


「実際、俺は腹を刺されて負けたぞ? 一応あのときも防御してたんだけど…」


あのときはアエテルと自覚していなかったとは言え、その防御力には何の遜色もないはず。

けれど、あの大男…大斧のヴェントは、気…アエテルの防御を突き破って俺の腹に重傷を与えてくれた。

幾らカウンター気味とはいえ、それでも力の作用下で此処までのダメージと言うと……。


「コレ、ですね」

「…ん。そう、それ」


差し出された黒いナイフ。握ってみると、ひんやりとした気配が伝わってきて。

光すら吸い込まれそうな、闇を固めたかのような漆黒。


「これは、多分アンチマジックウェポンです。黒アウリカルクムの鉱石を用いた、しかもかなりの純度の」

「アウリカルクム?」


よく解らない言葉が出てきた。

多分素材の名前なのだろうが、俺はこの世界の鉱物資源の名称なんて全く知らない。


「アウリカルクム。…一説には神がもたらしたといわれる金属で、強靭にしてしなやか。朽ちる事は無く、力の伝導率もとても高い、そのものに力を持った金属です」

「ようは希少品と言うことか。じゃぁ、このナイフも?」

「これは黒アウリカルクム。アウリカルクムの変種で、神殺しとも言われる金属です」

「神殺し?」


また物騒な名前が出てきたと思う。

クリスは一つ頷いて、手の平をスッと翳した。

途端、柔らかく輝きだす光。多分、精霊ではないほうの魔術だ。

クリスは俺の手から黒いナイフを取ると、その光をすっぱりと両断してしまった。


「ええっ?」

「…黒アウリカルクムはこの通り、魔の完全遮断に特化された金属です。神は身体を持たず…と言う伝説から神はアエテル体だという説があって、ならばアエテルを断つ黒アウリカルクムは神をも殺せるのではないか、という伝説です」

「…よくわからん」


要するに、気とか魔力の類全てを貫通する効果が在る…と言うことで良いのだろうか。


「そんな感じです」


一言で説明できるんならそっちで十分なんだけれども。

なんてことは口には出さず、ちゃんとクリスに礼を言って。


「………」




「でもさ」

「はい?」

「アエテルって、治療には使えないのかな?」


ふと思って問いかけてみる。

例えば、俺が昔から修練していた“気”。あれは新陳代謝を促進する事で、在る程度のヒーリング効果を与えることが出来た。


なら、気の発展…いや、原型であるアエテルにも、何かそういう力は…。


「あ、……出来るかもしれませんよ」

「本当か?」


物は試しに言ってみる物だ。


「私はアエテルに関しては概要くらいしか知らないのですが…。魔力と同じく、力に意志を載せて操るのがアエテルだそうです」


頑張ってください。

そういわれて、少しやる気を出して。


「んむ……」


集中のために瞼を閉じる。

気を顕す感覚で、体の、魂の奥にゆたたう形の無いそれをゆっくりと引き上げていく。

気に比べて重く、確りとした存在のある其れ。

成程これがアエテルかと納得して、それを一気に顕現させた。


「きゃっ……―――!?」


悲鳴が聞こえて、次いで驚愕の気配。

瞼を開いて、そして俺の身体を覆う其れを目視した。

それは漆黒だった。漆黒でありながら光であった。


「う、わ…」


クリスや、馬車に乗っていたほかの侍女。それに、何時ぞやの学園の生徒達が放った魔術は、確かに色のような物が見て取れた。

けれどもそれは、もっと明るい色が殆どだ。

サンプル例は少ないが、しかし………。


ここまで禍々しく感じる漆黒は無いだろう。俺。





今回登場しました厨二病アイテム『アウリカルクム』。

ググれば多分一発ですね、解ります。

方向性も何も無い自転車運転でイタ気なこの物語ですが、何卒宜しくお願いします。

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