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CROSS ROAD  作者: 青葉 夜
16/42

思わぬ成果

そうして、その晩。

意外に早く帰ってきたダニエルさんは、しかし宿屋の一階の食堂で夕食をとっていた俺とロイを見た途端、何故か物凄い驚きの顔を浮かべて。


「け、ケントくん、この少年は…」

「ああ、昼頃保護したロイです。王都に帰りたいけれども一人では心細いというので、同行できる人間を探していて……ダニエルさん?」


言っている間にダニエルさんは血相を変えて何処かへと走り去ってしまった。

何だったんだろうか。


「…どうやら、既に手配書が回っていたみたいですね」

「手配書って…キミは犯罪者か?」

「ああ、いえ。只の貴族です」


只の貴族…なんというか、変な表現だ。

が、何となく理解できた。つまりは、ダニエルさんの仕事と言うのは、このロイを捕まえるか保護するか、そんな感じのお仕事と言うことだろうか。


「まぁ、やんごとない身分なもので」

「自分で言うのか。…ふん、まぁ、本当臭いが」


貧乏…失礼。ボロ宿屋の外に感じる、20〜30ほどの人の気配。

整然と陣を組んだそれは、盗賊などにはありえない静謐な気を放っている。


「兵士…かな? 敵意は無いみたいだけれども、…うん」

「解るんですか?」

「ああ、一時期ニュータイプもどきなんて言われた事も…いや、解んないか」


きょとんとしたロイの顔を見て言葉を切る。

むぅ、こういうネタが通じないのは少しさびしいな。流石異世界。


「まぁ、それはそうと……お、来たみたい」


一つ、気配が宿屋の中へと入ってくる。

バンッ、と音を立てて開かれた扉の先、現れたのは三人の兵士達。

真ん中の兵士がちょっと派手な兜だし、多分体長とかそんな感じの人だろうか。


その兵士さんはガチャガチャ派手な音を鳴らして、そのままテーブルの傍…というか、ロイの横に来ると一斉に跪いて。


「ロイ様っご無事でっ!!」


あらあら。

腸詰の塩煮を齧りながら、横目にそんな兵士さんたちの様子を眺めて。


「ははは……」


正面で苦笑するロイ。

様だって。やっぱり偉い身分なんだろう。

まぁ、成る様に成れば良いとは思うけれども。






「ケントくん、よくやったっ!!」


ロイが何処かへと連れて行かれ、帰ってきたダニエルさんは、そんな風に行って思い切り俺の背中を叩いた。


「ぶはっ、如何したんです、いきなり。 ロイってそんなに偉い人だったんですか?」

「偉いも何も、大公様のご子息だから、つまり彼は王族の血筋…つまり、物凄く偉い人の息子様なんだよ」


あー、なにか聞いたことが在る。

王族って言っても全員が成れる訳ではないし、だからこそ成れなかった血族を貴族にするっていう、…えー、EU地方のだっけか?


「はー、なんか、偉い奴だったんだなぁ…」

「奴って…ケントくん、不敬罪掛けられるから…」

「あ、すいません」


慌てて謝る。

まぁ、既に言ってしまっているのを咎めないこの人も変わっているのだろう、


「一応だが報奨金も出た。キミの生活の足しにしなさい」

「ありゃ、有難うございます」


言って、ダニエルさんの差し出した皮袋を受け取る。

…金貨五枚。大公の癖にロイが安いのか、それともお国がケチなのか。

どうせならもっと奮発してくれても良いのに、なんで大公を助けたのに金貨五枚か。狼退治の報酬の五分の一って…。


「それだけあれば、暫くは暮らせるだろう。良かったじゃないか、元手が出来て」


………あれ?

え、ちょ、あれぇ?

金貨五枚で暫く暮らせる金額…なのか?


「ダニエルさん、金貨って一枚でどのくらい価値が在るんですか…?」

「ん? …そうだな、金貨一枚あれば…王都の宿屋に三食込みで一月は泊まれると思うぞ」


……アルェー(・3・)? 何か俺、通貨価格(レート)を勘違いしてた哉?

…何か、急に腰に吊り下げた昼間の報酬(金貨二十五枚)が重くなったような気がして。


「んじゃ、二枚はダニエルさんに。お世話になった分、少しでも返さないといけませんしね」


言って、金貨を二枚ダニエルさんへと渡す。

途端ダニエルさんは喜んでくれたようで……。うん、ちょっと複雑。実は懐にその数倍の金額を溜めてるんだよね、俺。


「ああ、そうそう。明日からはロイ様を護送する馬車に同行させてもらうことになったよ。少し堅苦しいが、まぁ旅路が楽にはなる」

「あー、了解しました。でも、その場合俺は如何すれば…」

「馬車の二両編成で、ロイ様用の馬車と侍女用のばしゃが用意される。…まぁ、馬車に乗っても良いし、馬に乗ってもよし。多分、馬車に乗せられることになるとは思うけれどもね」


なるほど。まぁ、自分で馬に乗って尻を痛めるよりかはウン倍マシだろう。


「明日は早い。もう寝ておくと良いよ」

「はい、それじゃ、また明日」


言って、宛がわれた自室へと戻る。


「………んぅ」


窓から星を眺めて、嫌な予感に襲われる。

今すぐではないけれど、そのうち訪れる災難の予感。


「…外れないからなぁ…」


馬車での旅、そこに来るであろう災難を思って、ちょっと鬱になるのだった。



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