ウマウマ? いいえ、馬です。
タイトルは相変わらず意味不明だなぁ…。
テラ眠ス。
最低限の睡眠時間で活動を継続できるのは本当なのだが、やっぱり眠いものは眠い。
身体的な疲労は気功で在る程度回復させることが出来る。
…が、精神的な面となると話は別だ。
それこそ仙人とかだと、こういう精神的な飢えとは無縁になるんだろうが、生憎おれは其処まで修行を積んだわけではない。所詮武人の家系だ。
「……はぁ」
そして、尻が痛い。
カッポカッポと音を立てて進むのは、在中騎士のジェームズさんがつれてきた馬だ。
今朝方到着した増援の騎士。その着任を見届けて、ダニエルさんは帰都の路へとつく事に成っていたのだとか。
馬と言うのは独特の振動が在る。
慣れるまでの我慢だ、とダニエルさんは言うのだが。
「とりあえず、次の町で休憩しようか」
「マジッスか……じゃなくて、本当ですかっ!? 是非にお願いしますっ!!」
喜ぶ。と、ダニエルさんはクスッと柔らかく微笑んだ。
なんというか、親戚の叔父さんさんを思い出す笑みだ。
そうして、あと少しでその村だ、と言うところでその連中は現れた。
「……なんですか、コレ?」
「ゴブリン、という種族だね。妖精種で、低俗ながら知恵を持っている。群れで襲ってくるから注意が必要だよ」
言って、ダニエルさんは腰の鞘から鈍色の剣を引き抜いた。
……に、しても腹が立つのはこのゴブリン連中である。
あと少しで町だというのに、何故にこのタイミングで現れるのか。もう少し遠くでなら諦めもついたというのに。
「グゲゲゲゲッゲゲゲゲゲゲゲ!!!」
……笑ってやがる。
人が尻の痛い思いをして馬に乗って、ようやく町に到着できると思っていたのに。
ソレを妨害して、思い切り笑いやがった。
「しわくっちゃのチビはげの癖に、人のことを笑うだとぁ……」
多少、被害妄想過剰だというのは自覚している。
…自覚しているが、止める心算は更々無い。
むしろこの機会に、堪った鬱憤を発散すべしと勢いに拍車をかける。
「ケントくん、この場は私に任せて、君は一足先に村へ……」
「手前らぁ、覚悟は出来てるんだろうなぁっ!!!!」
吼えて、腰に下げた袋から小石を幾つも取り出す。
それをゴブリンどもに向けて全力投石。渾身の錬気を込めた一撃は、只の自然石に鋼と同等かそれ以上の攻撃力を与えて。
グゲアアアアアッ!?!?!?! ギアアエアエエエアエエエエエ!!!!!!!???? ヒギイイイイイイ!!!??
そんな悲鳴が広原に響いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、………」
ゴブリン達は転がるようにしてその場から走り去っていく。
その背中に向かって更に投石。
「手前っ、二度と来るなっ!! 次は逃さんぞっ!!」
返答のように帰ってくるゴブリンどもの悲鳴。
ソレを確認して、ようやく落ち着くことが出来た。
「………あの、ケントくん?」
「……あ、すいません。ついつい…」
何か、眠くてテンション上がってしまったような気がするが……。
とりあえず、少し休みたいのだ。
「……とりあえず、茶屋にでも入ろうか」
言って、こちらを先導してくれるダニエルさん。
正直、本当にありがたい。
因みにその後のダニエルさん、俺のほうをちらちらと見て警戒していた。
……、うん。自重しよう、俺。