さて、此処は何処なのか
「………さて、現状を確認してみよう」
見渡す限りの緑の森。
空を見れば“これでもかっ!”と言うほどの澄み渡る青空。
ピィーッ、と鳴るこれは…鳥の鳴き声だろうか。
「何処だ、此処は……」
気がつけば、俺は見知らぬ場所に立っていて。
考えて、考えて、考えが至っていない事に気づく。
自分の名前。――北岡 健斗。
高校2年生で、ついさっきまで………え?
「……………え?」
其処まで考えて、それ以上が出てこない。
深呼吸をして、もう一度頭の中を漁る。
思考の回転。回想。
…………駄目だ。
記憶に靄が掛かったみたいに、一部不鮮明になってる部分が在る。
頭を撫でても、何処にも打撲傷は見当たらない。
頭部に衝撃を受けたか何かの記憶障害…というのではなさそうだ。
「しかし……何だ此処は」
森、森、森。
四方八方を覆うのは、今日日の日本では見なくなった深い深い森。
こんな場所なら、熊の一匹くらいは普通に出てきそうだ。
「………………………」
か、考えたらちょっと恐くなってきた。
…っていうか、本気でこれは危ないんじゃないだろうな!?
「えっと、……おぉ、あった!!」
四方を見回して、すぐ傍に転がっていた鞄を探し出す。
学校への通学用の鞄で、諸事の理由から鉄板やら武器やらが仕込まれた愛器だ。
「……よしよし、ちゃんと入ってるな」
中身を確認する。
教科書は基本置き勉。中に入っているのは、筆箱と財布と携帯くらい。
「………って、携帯っ!!」
何故先ず初めにこれを触らなかったのか。俺って馬鹿なのだろうか。
二つ折りの、少し旧めの型の俺の携帯。買い換えたいが金が無く、結果永く愛用している俺の愛機。
期待を込めて携帯電話を開いて………。
「………はい、お約束でした」
圏外。なんとも憎らしい文字が液晶画面の上部に映っていた。
この分だと、よっぽど山奥にいるみたいだな。
「はぁ……」
正直な話、これは夢だと思いたい。気がついたら山奥? 何があったと言うのか。
「とりあえず…歩くか……」
憂鬱。でも、こんな場所に留まっていても仕方在るまい。
鞄の中に仕舞っていたソレをベルトの腰につけなおして、改めて四方を確認する。
「て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り……っと」
適当に方向を決めて歩き出す。
そもそも方向なんて解らんのだし。どうなろうと成る様にしか成らんだろうし。
「……とりあえず、早々に人里に」
一番大きな問題は、今現在俺の腹が音を立てているという現状。
物凄くお腹が空いていた。やべぇ。