腰の王子さま。
横たわろうが
痛いものは痛い。
丸くなろうが
痛いものは痛いのだ。
癒そうと 治そうと
有りとあらゆる手段を試した。
温めの湯に長く浸かろうが
流行りの情報に踊らされようが
まったく通用しないのである。
唯一
酒を嗜んでいるときぐらいか
マシなのは。
燻らせる白煙
くわえた煙草の先は煌々と輝く。
弾き落とされた灰
一旦はよそにして
冷えた缶へと手をさし伸ばした。
その時 微かに聴こえた鈍い音
まさかと思い 腰に手をやる。
まだ 大丈夫だ。
窓の外に見えた星月夜
彼方から
天馬に乗った王子が見える。
そんな気がした。
遠退く意識
夢であれば良いな。
私は独り
横たわる。
嚔すら我慢して……
ぎっくり腰は唐突にくる。
遠くに置かれた通信機器までは届かない
冷たい床に突っ伏した
私をあざけ嗤う王子様。
救いの手を
どうか さしのべてくださいませ。
切なる願いを夜空に祈り
ままならぬ体勢で こときれる。
明日にもなれば
どうということはない。
無理矢理納得しようとする私のもとへ
王子様はやってきて
耳許で そうっと囁いた。
「早く医者に行きなさい」
至極当然ではあるが
それはなり得ない。
固まった私は正直苛立つのだが
いかんともしがたく……
勇気をふりしぼって立ち上がる。
脳髄まで響き渡る激痛
そのまま
一切動くことなど出来ない。
倒れかかった壁に寄り添い
一筋の涙が溢れ落ちる。
わたしはすべてを呪う。
「腰痛なんてこの世から消え去ってしまえ!!」
これは事実である。
だがフィクションでもある。
努々 忘れるべからず。
ヤツは虎視眈々と狙っているのだ。
腰だけに
マジで勘弁……。
(x_x)