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28話

「福ちゃん、まだか?!そろそろキツイ!」

中丸は振り返りもせず叫ぶ。

「もう少し!あっ!ライター!丸ちゃんライター!」

「キャッチ!」

中丸は福井に向かってライターをポイっと投げる。

福井は落としそうなるも受け取る。

「良いよ、丸ちゃん!」

「オウ!コイツを倒したらすぐいく!もう点けててもいいぞ!」

「分かった!」

福井は交差点に停めてあった放置車両の給油口に突っ込んだ靴下に火をつけた。

「点けたよ!早く!」

「もうちょい!!」

福井が端に停められていた放置車両を交差点の真ん中に押して寄せ、給油口を開けて火を点けるまで中丸が大量のゾンビの相手をして時間稼ぎをしていた。

火をつけた直後はメラメラと燃えていたが、ガソリンに引火したのか直ぐにゴーっと燃え、種火となる靴下を給油口からペッと吐き出していた。

「丸ちゃん走って!なんだか火の勢いがスゴイ!」

振り向いた中丸は驚いた。

給油口から高らかに登る火の柱は凄まじく、車が今にも爆爆発しそうな雰囲気だった。

中丸が全速力で走り抜けた直後、凄まじい大音量と共に車が爆発した。

「ふぃ〜、間一髪。もうちょっと時間掛かると思ったけど、直ぐ爆発するんだな。」

「もー、丸ちゃんが死んじゃうかと思った。次から一緒に避難してから火を点けたようね。」

「おう、分かった。次って、またしたいの?」

「え?うん、またこんなシチュエーションが来ると思うから。」

「ゾンビが発生してから福ちゃん性格がワイルド寄りになってるね。」

「そーお?必死なだけだよ。」

二人は見つめ笑い合う。

「お前ら何やってんだ?あの音で他のも呼び寄せたかも知れんぞ!」

いつのまにか近くに来ていた荒井が若干怒気を含んだ声で話しかける。

「荒井さん、火の向こう見て。すでにスゴイ数居るから。」

中丸が顎で指し示す。

ゴーゴー燃える車の向こうには道幅いっぱいのゾンビがいた。燃える車から一定の距離を置いてワサワサ動いていた。

「ゾンビは火を怖がるのか?」

「そ、これは一時的なバリア。ところで皆んな降りてこれた?」

「あぁ、降りて来た。二人はどうする?トラックに乗って一緒にいくか?県境のキャンプ場だけど。」

中丸と福井は互いに見つめケラケラと笑い合う。

「?どうした?キャンプ場が可笑しかったか?」

「いや、そうじゃなくて、僕らも多分、同じキャンプ場に向かってました。」

福井が説明する。

「さっきまで、疲れたぁ疲れたぁって福ちゃんボヤいてて…。同乗出来るなら、マジ助かります。」

「んじゃぁ、サッサと行こう。別の方向からまた群れが来ないとも限らない。」


トラックではOL4人組と石崎が仲良く話していた。

「初めまして、アキです。こっちがリエ、サラ、マサミです。」

リーダーのアキが石崎にそれぞれを紹介する。

「初めまして、石崎リナです。荒井さんとは同じ会社です。」

「あの傍若無人は荒井って言うのね…。」

「あら?荒井さんよっぽど慌ててたのね、普段は礼儀正しいのよ。」

「あっ、すみません……。」

うっかり心の声を漏らしたリエに石崎が笑顔で静かに怒っていた。

そこへのほほんとした表情で荒井が現れた。

「どうした?なんか視線がバチバチしてるけど…。よくわからんが…。

ヨシ!皆んな揃ったな。じゃぁ、トラックに乗って出発だ。俺が運転するから、リナは助手席、他は荷台に乗ってくれ。スペース作るために荷物はある程度捨てる。どうせ日持ちしないから全部は食べきれない。」

荒井は荷台のドアを開けると室内灯を点けて、中の荷物をどんどん出す。

腹ペコOL4人組は捨てられて行く弁当やパン、オニギリ等を物欲しそうな目で見ていた。

「ん?欲しいのがあったら持っていっていいよ。荷台で食べるといい。」

荒井がそう言うと4人は一斉に下ろした荷物に群がった。

これが美味しいだの、新商品だの、カロリーがどうのと言いながらキャッキャと弁当を選んでいた。

「よっぽど腹減ってたんだな。丸ちゃん達は?」

荒井は腕組みしながらOL達を見ていたが、その輪に加わらない福井と中丸に気付き声をかける。

「俺らは昼メシ食ったからいいです。コンビニ弁当は味付け濃いし。」

「そーだね、丸ちゃんの作る料理に慣れるとコンビニ弁当が美味しく無くなっちゃう。」

そのセリフを4人組が耳にするやマサミが上目遣いで聞いて来た。

「料理出来るんですかぁ?」

「あぁ、こう見えても料理人だから。」

「どこのお店ですかぁ?」

「え?アン・プチ・ルークスだけど…。」

「えー!私、一度行って見たかったんだぁ。料理出来る男の方って素敵。」

マサミが上目遣いに瞬きをパチクリパチクリ忙しなくアピールしてきた。

「ぁあ、ありがとう。」

そう言いながら中丸は福井の後ろに隠れるように移動した。

「こいつキショい。」

中丸は小声で福井に耳打ちする。

「そんなこと言っちゃダメ。」

内心顔が引き攣る思いだったが爽やかな笑顔崩さず福井が中丸に小声で注意した。

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