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12話

所々に黒煙が立ち昇る街並みを3台のバイクは駅を目指し走っていた。

火事が起きているのに消防はおろか、警察車両もおらず、サイレンの音さえも聞こえない。

時折、遠くで断末魔の様な絶叫や、火事による爆発音が聞こえてくるが、世界は今走る3台を残して消えたのかと思われるほど静かだった。

その静寂を切り裂くハイテンションな二人の奇声。

「いぃぃぃやっほぉぉぅ!」

山本がまた1体倒す。

「先輩見てて!イクっスよ!イクっスよ?イクっスかぁ?」

原田の一撃が放たれ対象の首が落ちる。

「先輩今の見たっすか!逝ったっス!俺スゲー!」

「おぉぉ!スゲーな。でも数は俺の方が多いぜぇ。」

「自分は芸術点に命かけるっス。」

『何を世紀末にキャッキャしてんだか。』

須賀は二人の露払いの後をトコトコついて行く。

「先輩!駅前マジでヤベーっス!ウジャウジャ居るっスよ。」

「オウ。居るなぁ。俺が囮になって引っ張るから原田と須賀は銀行へ行っとけ。」

「ラジャーっス。」

「はい。」

山本はゾンビの群れに突っ込み、派手にヌンチャクを振り回し大暴れした。

最初の2分程度バイクに乗ったまま前後左右の近づいて来るゾンビをノックダウンすると駆け足程度の速さで銀行とは反対方向へ離れる。

50m程度引き離すと再び停止し、ヌンチャクを振る。

それを繰り返すとゾンビの群れの9割方は山本について行った。

「やっぱり山本先輩は漢気あるなぁ。須賀どうよ?」

「あぁ、そうだね。それよりも銀行に急ごうよ。鍵はちゃんと開けれるの?」

「あぁ?誰に言ってんだ?任しとけ。」

原田はそう言うと胸を張った。

『なんか変な序列が出来つつあるなぁ。コイツら全員歳下なんだけどなぁ。』

「そろそろ行くかぁ。ちゃんと追てこいよ?」

「あぁそうだね。」

須賀は若干ウンザリしながらも原田に追て走る。



『アイツら銀行にそろそろ着いたかぁ?』

駅前から1km程度離れたところで山本は思う。

『まぁ、今後のためにもゾンビの数は減らしておきたいからもう少し頑張るか?』

山本がそう考えた時に近くから叫び声が聞こえた。

車の音や街の音が消えた今では声がよく聞こえる。しかし、発生源の特定となるとそう簡単では無かった。

建物に反響して、およその方向しか分からなかった。

山本は声のする方向へバイクを走らせる。

「どこだどこだぁ?」

交差点に差し掛かるたびに左右を見て探すがなかなか見つからない。

再び叫び声が聞こえ、山本は焦る。

隣の辻へ移動し捜索を始めてすぐに声の主を見つけた。

若干赤みのかかった明るい髪色をした、20代前半と思われる女性がホウキをゾンビに向かって振り回し、来ないでと叫んでいた。

山本はアクセル全開で近づき、リヤブレーキをロックさせリヤタイヤを滑らせゾンビの足元をバイクのタイヤで払う。減速と攻撃を両立させた手段だ。

山本はすぐさまバイクから降りるとヌンチャクで倒れたゾンビの頭部を一撃のもとに破壊する。

「大丈夫だったか?怪我は無いか?」

山本は腰を抜かし、尻餅をついていた女性に声を掛け、手を差し出す。

山本が助けた女性はスカートを気にしながら山本の手を掴み立ち上がった。

「はい、大丈夫です。助かりました。なんか皆んなおかしくなって…、私は最初隠れてたんですけど…。うぅぅ…。」

女性は助かった事に気が緩んだのか泣き出した。

「あぁ、わかったわかった。今は泣いてる暇はねーぞ!ホラっ、乗んな。」

山本はバイクに跨るとリヤシートをポンポン叩く。

女性は涙を拭きリヤシートに跨ると山本の腰を遠慮がちに掴んだ。

「しっかり掴まってろよ。行くぞ!」

勢いよくバイクが走り始めると女性は怖くなったのか、山本の腰に完全に腕を回し、しがみついた。

「アンタ名前は?俺は山本。」

「中村です。」

「おぅ、ヨロシクな!ところで俺は嬉しいが、さっきからオッパイが背中に当たるんだけど!」

「仕方ないじゃ無い!」

「あんまり大きくないな!」

「え?なにー?」

「あー、聞こえなかったのならいい。」

「え?なにー?」

山本は今度は答えず、銀行に向かい走り始めた。



銀行の裏手で原田と須賀の二人は口論していた。

「だからぁ、俺がピッキングしてる間にゾンビの相手しろって言ってんだよ!」

「だって仕方ないじゃ無いか、怖いんだよ。」

「だからって、俺は援護無しか?ゾンビの相手しながら鍵開けなんか、いくら俺が器用でも無理があるぞ!」

「ごめん。でも、出来ないよ…。普通に人の形してるんだよ。普通にポンポン首跳ねる原田君達がおかしいよ。」

「あんだとコラ?喧嘩売ってんのかオラぁ?」

原田はそう言うと須賀の襟首を掴み鳩尾へ膝蹴りを叩き込む。

「おい、ちょうど人間のツラしてない奴が来るぞ!アレならお前相手できるんだろう?」

顔の皮膚が殆ど剥がれ落ちたゾンビが近づいているのを原田は見つけ、須賀を突き飛ばす。

「いや、無理だよ。怖すぎる。」

「アレはダメ、コレはダメって、女か?オメー使えねーなぁ。」

そう言いながら原田は手斧で顔の皮膚が無いゾンビの脳天を叩き割った。

「あぁー、もう早く先輩戻んねーかな。クソ!」

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