9話
まだまだ、キャラだします!
バンッ――――
相手が持っていた拳銃から弾丸が発射された。
なぜだろう…弾丸が回転しながらゆっくりとこちらに向かっている。
そして、顔の近くまできた弾丸はなぜか曲がってそのまま顔の横を通過して僕の視界から消えてしまった。
ドサッ―――――
違う。
僕が倒れただけだった。
あの時、急に力が一気に抜けて、今ではもう力が入らない。
目をあけるのもつらい…。
それにしても今日はたくさん色々な事が起きたな。
たくさん嫌なこともあった気がする。
でも、今はすごく疲れていて休みたい。
目が覚めたら、これが夢だったらよかったのに……
******
「ソウ!目が覚めたか?」
「イース…。」
目が覚めたら、イースの顔かいっぱいに見えた。それに周りを見渡すと、白色を均一とした清潔感がある部屋だということが分かる。
「よかった!ずっと眠っていたから心配したぞ!」
「ずっと…?」
ずっとっていうことは、僕はどのくらい寝ていたのであろうか。
それに、あの敵に受けた傷も痛くない。
「俺たち、あの後ソリン軍の部隊に助けられて今王都にいるんだ。俺、王都って初めてだし、ずっと行きたかったんだ!」
「王都……?」
イースは、ソウが寝ているベットの横に置いてある椅子に座った。
「俺も目覚めたらここにいて良く分からないけど、起きたら俺たちを助けてくれた隊の人がいて、聞いたら俺達以外皆死んだって言っていた…。」
ソウはあの夜の事を思い出す。
逃げまどい敵の攻撃に次々と倒れていく兵士たち。
そして、アスト軍のグレン…。
「ソウ?」
「ごっ…ごめん。考え事していた。」
「本当に大丈夫なのか?顔色も良くないし……」
「うん…」
イースが心配そうな顔で覗き込んだが、ソウはイースの顔は見ず、握りしめた自分の手ばかり見てしまう。
「でも、凄いよな、精霊付きって。あのグレンって言ってたっけ?あの野郎はむかつくけど、俺たちを助けてくれた隊の隊長も精霊付きだったんだぜ。」
「精霊付き?」
「王都でも有名な人みたいでさ。あの後、敵を追っ払ってくれたいなんだ。」
「あの後?」
「なんだ?おぼえてないのか?」
イースは座っていた椅子から立ち上がり目を輝かせながら、語りだした。
******
「・・・で俺はあいつに蹴り飛ばされて意識はなかったんだけど、ソウもあいつの攻撃を受けてもう少しでやられそうになった時に、隊長がやってきてアスト軍を追っ払ったというわけだ。覚えてないの?」
「う…うん…。ごめん。」
「まぁ。俺たちは倒れていたんだし、覚えていないのは当たり前か…。」
違う…。
ソウはかすかではあるがあの時のことを覚えていた。
あの時…。
グレンの矢が向けられた時、力が欲しいと願ったあの時、自分の中に流れている血を感じた。
こんなことは一度だってなかった。
体中にありとあらゆる血管に血が流れているのを感じ取ることができるなんて、しかも自分の心臓が強く鼓動しているのがわかる。
あいつに向かって振りおろせ――――――!!!
折れた武器を振り下ろした後は、正直言ってよくわからなかった。
相手が何かを言っていた気がするが、その時には体中の力が限界で立っているのがやっとだったし、その後すぐに倒れてしまい意識を失ってしまった。
「それでよ、俺たち今度はその助けてくれた隊に入ることになったんだ。」
「えっ?」
「だって、俺たちがいた隊はやられちまって、せっかく入ったっていうのにさよならっていうわけにはいかないだろ。で、そこの精鋭部隊に加えてもらったというわけだ。すごいだろっ!」
「見習いだけどな。」
「ゲッ…ゲルハルト副隊長…!!」