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6話

「はっあ…はっあ…はっあ…」


熱い………息を吸うだけでも高熱の空気が肺に入ってきて体の中から焼けるような感じがする。

周りを取り囲む炎の壁。

無数に振ってくる炎の矢。

地面に落ちるたびに火柱となって襲ってくる。


「俺を倒すんじゃなかったか!ソリン兵さんよ」


止まることのない攻撃に一人また一人と、撃たれてしまい残りはソウとイースだけとなった。


ソリン軍の軍服は黒焦げでボロボロになり、持っていた銃も弾が尽きた。

かわりに兵士が持っていた剣をもっているが、剣の刃は半分に折れていて、使い物にならない。


「その剣で、俺を殺してみろよ!ソリン軍様よ!」


グレンの挑発にイースは言い返す言葉がない。

それはそうだ。

相手は精霊付きの武器を持っていて、こちらは折れた剣しかない。


「くそっ…………!俺はここで死ぬわけにはいかない!死ぬわけにはいかないだぁ!」

「弱いやつほどよく吠える。」

「うおおおおおぉおぉぉぉ―――――!」


イースが剣を構えてグレンに突進していく。


(大丈夫!大丈夫!大丈夫!ただ落ちてくる火じゃないか!落ちてくる場所さえわかれば)


落ちてくる炎をみて、落下場所を予測し大きく避ける。

それさえ分かれば避けることなど容易い。

イースは攻撃を避けながら、確実に相手に近づく。


「へへっ。ただ逃げているだけじゃないんだよ。」


(避けるコツは掴んだ。そうすれば……)


ザッーーーーーーーー


イースがグレンの元へと来た。

イースとグレンの間には人ひとり分もない。

しかも、相手の武器は上に向いていて、隙だらけだ。


(いけるっっ!)


剣を相手の足元から上へと振り上げれば、殺すことは難しいが致命傷を負わせることができる。

勝利は確信。

イースはそう思ってた。


「なめるなよ。ゴミ屑の分際のくせに。」

「ぐぅはっ……」


イースが切りつけようとする前にグレンの左足の蹴りが入る。

腹部にグレンの蹴りが入ったイースは、そのまま後方へ転がっていった。


「イ――スッ!」


ソウはイースの元へと駆け込んだ。

イースは腹部を蹴られただけで死んではいないが、意識が全くない。


「っ馬鹿か?近づいてしまえば勝てるなんて、俺はアスト軍のエリートだ。戦闘の何も知らないガキにやられるわけないだろ?」

「イ―ス!起きて!イース、イース、イース!」

「ゴミ屑のくせにここまで俺を楽しませてくれるとは。まぁ、ちょっとは褒めてやるが所詮ただのガキ。精霊付きである俺様に勝てるわけがないだろ。」


ゾクッ――――


体中に恐怖が走る。

相手の力量を改めて感じた。

敵は明らかに戦闘慣れして、最初から倒すこともなどできなかったのだ。


(逃げないと……)


本能的に恐怖を感じた。

ソウはイースを抱え、グレンから離れようと黒こげになった木まで移動しようとする。


「させるかよ!」


頭上から炎の矢が降ってくる。

ソウはグレンの攻撃をぎりぎりでかわしていくが、気を失ったイースを抱えているため思うように進まない。

でも、今は攻撃を避けることしかできない。

ソリン軍の援軍が来ればいいのだが、果たして援軍など来るのだろうか。


「おらっ!おらっ!おらっ!もっと逃げろよ!」

「うっっ」


ソウは頭上からの攻撃に気を取られて、後ろから来た攻撃に右足を撃たれてイースと共に倒れこんだ。


「なんだ、もう終わり?つまらないなぁ、さっきの奴よりも面白いと思ったのに…」


かすっただけなのに傷口が燃えるように熱い。

しかも傷口から肉が焼けた匂いがかすかにする。


(くそっ……)


もう、イースを連れて移動することは出来ない。しかし、ソウが攻撃を避けてイースと離れてしまえば、グレンはイースを確実に狙うだろう。


「もう、戦うしか…」


ソウの手には折れた剣がある。

ないよりかはマシだが、しかし剣など今まで持ったことはないし、この剣で相手には勝てるとはとても思えない。


「もう、時間がないからな……。これで片づけるか。」

「……っ…。」


グレンの矢が真っ直ぐソウに向いている。

しかも、今までの矢とは違って炎の色の濃さ、量、すべてが違う。


「逃げられると思うなよ。これは速さも威力も今までのとはわけが違う。」


空気が重い…。

呼吸をしようとしても思うように吸うことすらできない。

体中から出てくる汗は熱さなのか恐怖なのか、それとも武者震いと言うものなのか分からない。

死にたくない……。

今、この場から逃げれば避けられるかもしれない。

でも、ソウは逃げたくはなかった。

イースを死なせたくはない。

見捨てることなど出来ない。


「守らなきゃ…」


イースを・・・。

今日会ったばかりの少年だけど、声をかけてくれたことにうれしく感じた。

本当は怖いはずなのに、勇敢に立ち向かっていく姿は眩しく見えた。

そんな少年を死なせたくないと、そう思う自分がいる。


「力がほしい…」


守る力。

人を守る力。


「死ィィィネェェェェェ―――!」


「うぁああああぁぁぁぁ――――!」

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