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4話

精霊付き―――。精霊付きとは、さまざまな力を持った人間の事をいう。


その力とは、火、水、風、などの人外な力を操り、その力は強いものであれば一国を落とすぐらいの力もある。

ただ、その力は、皆が持っているわけでもなく、精霊に選ばれた者だけが持つと言われていた。


「退散しろ!全員、退却!」


その声で前衛にいた兵士達が、降り注ぐ火の球を避けながら後方へと駆け出す。


「放て――――――!」


暗い林から、一斉に矢が飛んできた。

炎の中で逃げまどう事が精一杯であった兵士たちは次々に矢を受け、倒れていく。


「副兵か!」

「このままだと全滅してしまう!」


応戦をしようとする者もいるが、上から降ってくる攻撃と正面から来る攻撃によって、反撃をすることが出来ず、どちらかの攻撃を受けて死ぬか、結局は逃げてしまうかのどちらかである。


「俺達も逃げよう!」


イースに言われ、ソウも急いでここから逃げようとする。

イースが先に行きソウもイースについていこうとした時、ふとあることに気付く。


(この騒ぎなのに誰一人起きてこない……)


攻撃を受ける前にイースとソウは起きていたが他の子供達は寝ていたはず。

しかし、周りが炎で燃え上がる暑さとか兵士たちの叫び声で誰かしら起きてくるはずだ。


誰一人として起きてこないなどと言うことはあり得ない……。


「危ない!」


イースがソウの手をひっぱりその場から逃げると、炎の球がテントへと直撃し、あたりが一瞬にして燃え上がった。


「あ……あぁ…」


イースが呆然としながら座り込む。

先ほどまで笑顔でいたはずなのに、今では目を見開き恐怖で全体が震えている。

ソウもただ茫然と立て尽くすしかなかった。


「やっぱり、ソリン軍はちょろいな。」


炎の中から人の声が聞こえた。

いや…あり得ない。

この燃え上がる炎の中で人が生きているなどとは…。

でも、確かにあの炎の中から人の声が聞こえた。


すると、炎の中からゆっくりと立ち上がる黒い人影を見た。


ゴォオォォ―――


黒い人影の周りの炎が激しく燃え上がる。

燃え上がった炎は大きな渦をまき、赤い火柱みたいに高く上がっていく。

そして高く広がった炎はやがて小さくなり始めるとフードをかぶった一人の少年が立っていた。


「あ~あ。やっぱり俺ってこうゆう任務って苦手だなぁ。」


炎の中に立っていた少年は、少し退屈そうに体をそらしたら、逃げまどうソリン軍に向けて矢を射る格好をする。


「降臨せよ、椋鳥の弓矢!」


彼の体から炎が上がる。

しかし、彼は燃えることはない。

燃え上がった炎は彼の手に集まり、あっという間に何もなかった彼の手には弓が現れた。


「死ね!くずども!」


******

彼の手が離れると、数え切れないほどの炎の矢が放たれた。

その矢は、逃げまどうソリン軍に当たり一瞬に火だるまとなって倒れていく。


「逃げろ!逃げろ!ゴミ屑ども」


兵士たちの叫び声が止まらない。

誰もが「死にたくない」「助けてくれと」言っているのにもかかわらず、敵の攻撃は止むことなく、一層激しく攻撃をしてくる。


「ひでぇ…。」


イースがそうつぶやく。

ソウもそう思っていた。

目の前の光景は戦いというものではない。

侵略いや虐殺と言った方がいいのか、戦意を失い逃げまどうソリン軍な兵士達はアスト軍の攻撃によって殲滅されていく。

ソウ達は動くこともできず、ただその光景を見ていることでしかできなかった。


「遅い標的を殺してもつまんねぇな。」


彼は退屈そうに言うと火の矢を放っていた弓を下に降ろした。

本当に退屈みたいで、あくびまでしてしまう。


「こんなつまらない任務。やるんじゃなかった。」


イースは、その一言に怒りが頂点に達した。


「おい!そこのやつ!」


「イース、やめろ!」


ソウがイースを止めようとするが、怒りでいっぱいのイースはソウの制止をふりきり、フードをかぶった敵へと立ち向かう。


「なに?」


「俺らの仲間をこんな風にしやがって、許さない!」


イースは持っていた銃を敵に向けて構えた。

距離も近いためイースが引き金を引けば、撃たれてしまうのに相手はくすくすと笑っている。


「な…なにが、おかしい…。」


「お前ら、なんで俺がテントの中で殺さなかったと思う?」


「は?」


イースは何を言っているのか分からなかったが、ソウは一瞬背筋が凍ったように感じた。

確かに、これほどの力を持っているのにも関わらず、なぜ二人をテントの中で殺さなかったのか。

林の中から攻撃を受けていた時にだって、ソウ達はずっと外を見ていてテントの様子など気にかけてはいなかったし、疑問を感じたときはすでに皆殺されていた。


「ただ寝ているガキを殺してもつまらないだろ。そこらにいる兵士は、しっぽをまいて逃げているだけだし、おもしろくないんだよねぇ。」


分かる?と問いただされてもイースはまだ何を言っているのか分からない顔をしていた。

「つまり、お前らは俺の暇つぶしのおもちゃってわけ。」


敵が素早く移動し、銃口から離れると弓をイースに向けて矢を放った。


バシューー


放たれた炎の矢は一直線へとイースに向かっていく。

イースは相手の素早い行動に反応できず、自分に向かってくる矢をただ見ている事しかできない。

敵がにやりと笑う。

頭の中でイースが燃え上がる姿でも想像はしているのだろう。


「イース!危ない!」


イースに当たる寸前の所でソウが後ろからイースを押し倒し、矢を回避した。

イースを狙った矢はイース達を通りすぎ、林の木に当たり周りの木々を巻き込んで燃え上げている。


「逃げよう。あいつには太刀打ちできない。」


「お…おいっ!」


ソウはイースの手を掴むと一目散に燃え上がる林の中へと逃げ込んだ。


「やっぱ、おもちゃはここまでしてくれないと面白みがないよなぁ…。」


彼がかぶっていたフードを脱ぎ捨て、かわりに白色の軍服を羽織った。


「このグレン様をせいぜい楽しませてくれよ。ゴミ屑ども」

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