1話
戦い物語を書いてみました。
膨大な土地と豊かな自然を持つソリン王国それはかつて名であった。
今は、木々が燃やされ、大地が枯れはて、人が人を傷つけ血を流し、憎しみが渦巻いている。
そんな現状を忘れるかのような王国のはずれ、山々に囲まれ村などないであろうその所には
教会がポツンとたたずんでいた。
その教会には、戦争で親を亡くした子供たちが多く住んでおり、子供たちの親代わりに育ててくれる神父とともに生きていた。
「とうさん、とうさん。だっこ~」
「ずるいぞ、ソウ。おれだって」
「しかたがないよ、だってソウはぼくらのなかでいちばんしただし。」
「ははっ。じゃあソウの次かな?」
「えっ!いいの!じゃあ。おれ、ソウのつぎ!」
「つぎ、あたし」
「ぼくも~」
「一人ずつだからな。」幼い子供たちが神父にねだる、それを笑いながら神父は一人一人抱き上げくれる。
そんな日々がつづく。
このまま、平和な暮らしが続けばいい。その時は、誰もがそう思っていた。
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――――――あれから12年後
黒髪の少年は武器を持った兵士と共に長年住んでいた教会を背にして歩いていた。
教会からは、幼い子供たちが、しきりに少年の名前を呼んでいる。
行かないで。そう言っているようにも捉えられる。少年の姿が消えてもなお、耳に響く。
本当は行きたくなかった。ずっと、あの教会へ住んでいたかった。そればかり、思ってしまう。
子供たちと遊んだり、一緒に食事をしたりともに住んだ子供たちの笑顔ばかり、思い浮かべてしまう。
でも、振り返ることはできない。今、振り返ってしまったら、兵士を振り切ってあの家に戻ってしまう。
でも、目の前にいる兵士がそれを許すわけがない。ソウは顔をうつむき、唇をかみしめた。
一歩一歩、歩くたびに気持ちが沈んでいく。家族のもとへと二度と戻れない悲しさと、これから兵士として生きていく辛さ。幼いころに兵士とともに去っていく兄達の後ろ姿を見て、こんな気持ちだったのだろうかと考えてしまう。