その日の朝
「おはようございます。おじい様、お父様、お母様。いいお天気ね!」
2145年、5月晴天の日。18歳になった私は、今はもういない家族へ向けた朝の挨拶と一緒に自分の掌を空へかざした。3人のいる天まで私の元気が届く様に。
「よし、今日も勉強ですね、おじい様。」
胸に一冊のハードカバーを抱き、そう意気込みを呟くと同時、ふわりとライトピンクのショールが肩に掛けられた。
「おはよ、チル。」
「クロ!おはよう。」
この船型住居の唯一の同居人、クロ。
私とは異なる国の生まれの様だけど、同じ境遇で同じ年齢ともあり、8年前から今までいっしょに暮らしている。少し口が悪いけど、根はしっかりしていて、同い年なのにお兄ちゃんみたいだ。彼の褐色の肌と砂漠のような色の髪が互いを引き立たさせている。
「誕生日くらい勉強休んだらどうなんだ?」
クロの瞳が少し揺れた。
「…でもね、わたしの夢は」
「「建築家」」
「もう!」
ハハっとクロは笑って、
「毎日聞いてたら分かるって。ほら、勉強の前に飯にしようぜ。イルーザさんから貰った果物がある。」
「本当!」
久々の果物ですっかり機嫌をよくした私は、クロの背中に飛び乗るようにして喜んだ。昔は同じくらいだったクロの背中は毎年大きくなる。
「ねぇ、何色の果物か教えて!」
褐色の肌に赤みが差したクロは、重いと言いながら私を引き剥がして頭を掻きながら、
「オレンジ色!」と言って足早に階段を降りて言ってしまった。途中、早く来いよと言ったのが聞こえたので、はーいと答えた。
歩き出そうとして、水面に映る自分が見慣れないショールを掛けているのに気がついた。
(ああ、このショールは…。)
贈り物やロマンスが苦手な彼は、毎年さりげなくこうしてプレゼントしてくれる。このライトピンクのショールは私の白い肌と栗色の髪色に溶け込んで、サラサラとした手ざわりが気持ちいい。一体どこで手に入れてきたんだろう?そう思わずにはいられない。
「チールー?」
一階から私をクロが呼んでいる。
とにかくお礼をしなくちゃ!私は階段下のリビングへと駆け出した。
ここは地球の南半球側。海の上。住所はない。
私はチル・イイダ。18歳になった朝は、突き抜けるような晴天。
大学時代の卒制をリメイクして書いてみます。文章素人故、誤字脱字すみません。




