—04— オーパーツ
「デリスさんはオーパーツに階級があるのは知ってますか?」
「んー、あんまり詳しくは知らないですの。アヤメちゃんは?」
「私もあまり・・・」
「ほほう、ではでは僭越ながらこのリノンが説明させていただきます!」
デリスとアヤメはアガートラムの中でもかなり上位の戦闘技能を有している。特にアヤメの強さはトレアサに次ぐ程とされており、決してアガートラムの中で上位とはいえないリノンはそんな二人に助けられることはあってもその逆は無かった。そんな二人の力になれることが嬉しいのか、好きなオーパーツについて語れるのが嬉しいのか、あるいはその両方かリノンはとても饒舌にオーパーツについて語り始めた。
「えーとですね、オーパーツって現代の技術でも解明できていないものがあったりその効果が危険なものもあったりするんですよね。なので、そういった事情に合わせてオーパーツは5段階の階級に振り分けられてその使用が制限されているんです」
ふむふむ、といったかんじで二人が説明に聞き入る。
「まず最も低いのは階級1ですね。”灯”や”歯車”といったものがこれに該当します。灯は街を照らす明かりとして、歯車は水を巡らせるための設備として利用されています。これらのものはその安全性が完全に確認されているため階級1に分類されています」
「へー、確かに街の至るところで見かけますわね」
「はい。ただ安全で身近なものとはいえ扱うにはディガーの資格が必要となります」
「なるほどな。よく街灯の工事などをしている人を見かけるが彼らは皆有資格者ということか」
「ええ、そういうことになります。次は階級2です。ここには”水萌”、”焔”といったものが該当します。どちらも水を作り出す、炎を出すといったもので鍛冶や工業も含めて私達の生活に欠かせないものとなっています。ただこれらのものは使い方によっては人に危害を与えてしまうものもあります」
「こっそりと他人の家に放火・・・なんてこともできますしね。そういったものが階級2になるんですのね」
「ええ、そうです。なので扱うにはディガーの資格もより上位のものが必要となります。」
「ディガーの資格は階級が上がると扱えるオーパーツが増えるんだな」
「はい、ただそれ以外にも階級が上がると調査可能な遺跡も増えていきます。次は階級3。ここからは完全に戦闘用のオーパーツとなります。圧縮した空気の矢を放つ“風弩”、広範囲に渡って大爆発を起こす“轟爆陣”がこれに当たります。この間のインファタイルとの戦争でも敵兵が多用していましたね」
「ああ、今までオーパーツを所持した集団と交戦したことは何度かあったがこの前の戦は量も質も全然上だった」
「あいつらがどこからあんなに多くのオーパーツを集めたのかわかりませんが、少なくとも集団戦闘での戦闘用のオーパーツの扱いはこちら側よりも断然上でしたね。今回はなんとか勝ちましたが・・・」
「そうですわね・・・あれを見てデリスももう少しオーパーツのこと勉強しなきゃって思ったですの」
この前のインファタイルとの戦争はそれほど厳しいものだったのか、それまでは穏やかに話していた三人の表情が一気に深刻なものになった。
「はい、だから私達ももっと対オーパーツの戦い方を研究しなきゃいけないと思うんです。そうしないともしかしたら・・・」
「だからリノンはオーパーツを見に来たという訳か」
「ええ、そうですね。まあ、ただ単にオーパーツを見たかったってのもあるんですけどね!」
リノンは表情を和らげて笑いながらそう言った。
「あら?そういえばさっきオーパーツは5段階の階級に分けられてるって言ってましたわよね?まだ上があるんですの?」
「あ、そうですね。話が脱線してしまいました・・・。では気を取り直して。残っているものは階級4と5ですね。実はその二つはそこまで差があるわけではないんです。その二つの階級に分けられる条件は機能が完全に解明されていないものになります。現在の技術で解明することができないオーパーツは非常に危険かつ大きな力を持っていることが多いんです」
「だから3よりも上という訳か」
「そうです。ただ、機能が完全に解明されていないだけで解明がされた後は階級1から3に分類されます。あまりにも力が大きすぎて国に害を与えると判断されたものは規格外と判定されて国によって厳重に管理されますが」
「へー、やっぱりまだオーパーツって謎が多いんですのね。ちなみに階級4と5の違いはなんですの?」
「えーとですね、未解明のオーパーツはディガーによって遺跡から発掘されるんですが、その状態は階級5に分類されるんですね。そこからワーブラー王国とブルメリア王国が共同で運営している研究所に持ち込まれて簡易的な調査を実施した後に解明が済んでなくても国に害を与えるものではないと判断されたものは階級4に分類されます」
「へー」
「なるほどな。ちなみにリノンは今どの階級まで扱うことができるんだ?」
「えぇと、私はディガーの資格がLv.8なので階級3までですね。9になれば階級4、10になれば階級5のオーパーツの使用も含めてあらゆることが許されるのですが・・・」
「へー、リノンちゃんすごいですの!私はそんなに高くないですの・・・」
「えー、そんなことないですよ!デリスさんはディガーじゃなくて戦闘を専門とするマーシナリーですよね?あれはまた別ですよ!私だったらLv.1ですら難しいでしょうし・・・」
「いやいや、それでも大したものだよ。アガートラムじゃリノンが一番なんだろ?トレアサが褒めてたぞ」
「そ、そうですか?えへへ、照れるなー」
憧れているアヤメやデリス、トレアサから褒められリノンは照れていた。
「直接的に戦う私やデリス達だけではどうしても集団戦は厳しいからな。リノン達のようなオーパーツを扱う部隊やシンクレアが率いている魔法部隊は欠かせない存在だ」
「アヤメさんったら、そんなに私を褒めても何にも出ないですよ!でも今度よかったらオーパーツを使った戦い方教えてあげますね!」
「そのときは私も教えて欲しいですの!あ、でもゾルちゃんオーパーツのことすごく嫌がるんですの・・・」
「確かにイゾルテは小さい時からずっとオーパーツを避けていたな」
「なんでなんでしょうね?」
三人はその後もオーパーツのことについて話しながらワーブラー、シンクレアの2つの国が共同で運営しているオーパーツ研究所へと向かった。