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蒼き星の守護者 ~星を救う英雄と英雄を殺す少女の物語~  作者: りの
ウィル編 第二章 ~あの空にもう一度虹を架けて~
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—06— 乾いた大地の村

【前回までのあらすじ】

 イナク村から来たというコルネはシャムロックに着くなり倒れてしまうが、ラス達の看病により意識を取り戻す。そしてウィル達はコルネからイナク村が干ばつによる飢饉で危機的状況に陥っていることを聞く。食料もお金も底をつき、依頼料が払えず他のギルドから門前払いされたようだったが、ラスは放っておけずにコルネの依頼を受ける。ラスの困っている人を必ず助けるという方針に同意した一同は干ばつの原因を調べるためにヴィオラの街の南東に位置するイナク村へと向かった。

 イナク村に着いてウィル達が目にしたのは、何人もの村人達が力なく横たわっている姿だった。皆あばらが浮き出るほどやせ細り、着ている服の生地が余り力なく垂れていた。中には子供の姿もあり、空腹で気力さえもわかないのか静かにただどこかを見つめているだけだった。想像以上にひどい状況に皆言葉を失った。


「ひどい……」


「これが村の現状です……。もうお金もほとんど無く草や木の根をすり潰して混ぜて食べています。まだ死人が出ていないのがせめてもの救いですが、それもいつまで持つかわかりません……」


「これはちょっと想像以上だね……。クラウ、国も王城に食べ物蓄えてあるんでしょう?それを持ってきてもらうってことはできないの?」


「それは難しいな」


「王族や貴族なんて余る程食べ物もっているでしょ?この村の人達がこんなに困ってるのに……」


「何も国も意地悪で食べ物を分け与えていない訳じゃねぇ。そういうもんはいろいろと大変なんだよ。この国の町や村の奴らは貧しいって訳じゃねぇが自分達が生きるために必死に頑張っている。そのうちの一つに施しを与えるってことは簡単なことじゃねぇ。与えてしまうと他の町や村の人達も同様に施しが欲しいと思って殺到するかもしれない。一度そういう感情が湧き上がると抑えることもなかなか難しい」


 クラウは村をゆっくりと見渡して言葉を続けた。


「いずれにせよ慎重にことを進めないと国が不安定に成りかねない。……もどかしいことだがな」


「それじゃあこんな状況を放っておくっていうの?」


 クラウはフェルナの方を向かずに目を瞑って首を横に振る。


「それを何とかするために俺達が来たんだろ?」


「嬢ちゃん、詳しい話が聞ける人のところまで案内してくれるか?」


 俯くコルネの傍まで歩いていき、肩に手をそっと置いた。


「……はい、あちらの建物に村長がいますのでそちらで話を……」


 ウィル達はコルネの後を静かについていった。村長の家に着くまで周囲を見渡したが、視界に入ってきたのは干上がりひび割れした地面と枯れ果てたいくつもの果樹であった。


「この地方じゃこんなに乾燥することってあるんですか?」


 何も知らないウィルがクラウやフェルナに訪ねた。


「しばらく雨が降らなくて多少飲み水が不足するっていうことはたまにどこの村でもあるけど、この緑に覆われたグラス大陸じゃ珍しいことだね」


「あぁ、こんなことは今まで見たことも聞いたことはねぇ。ここに来るまでも周囲を見ていたが、この村と川の上流の方だけ異常に乾燥してやがる」


「そうですか……」


二人の言葉を聞いた後、ウィルは屈み土を掌にすくいじっと見つめた。水分を含んでいない土は微弱な風に吹かれさらさらと手のひらから落ちていった。


(この局所的な極度な乾燥はもしかすると……)


「どうしたの?」


 前を歩いていたラスが振り向き、立ち止まっているウィルに声をかける。


「ううん、なんでもないよ」


 手に残っていた土をはたいて落とすとまたラスに並んで歩き始めた。

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イマテカ倉庫の蒼き星の守護者のキャラクター紹介ページ(キャラ絵有り)です
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